第4話 探索者になるには?④
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入学してから二週間の間に、座学の他に近接戦闘の授業も受けている。ある意味、魔法学と並んで最も重要な部分だと思う。知識だけあっても戦えないんじゃ、ダンジョンに入っても死に行く様なものだしね。しっかり習って体に染み込ませないと。
更衣室に入り、支給されたツナギに着替える。そしてその上から脛当て、胸当て、籠手、ヘッドギアを装備し、安全靴を履き、最後に刃を潰した刀を手にもつ。
・・・・意外と格好良いな・・・。
免許取れたら、ダンジョン探索は忍者ルックとか侍ルックとか考えてたんだよね、本当は。『High-scene』なんか観てると実際居るんよ、忍者や侍が。豪快に斬り伏せる侍や、気配を殺しながら素早さを生かして魔獣に近づき、暗殺するかの如く魔獣を倒す忍者が。
その時は格好いいなって思ってたけど、今にして思えば、今の自分じゃ無理って判った。そして、実用性を考えたらツナギでも良いかなと。まぁ、それもこれも免許を取ってからの話な訳なんだけどね。
んじゃ行くか、と更衣室を出て校庭に向かうと、すでに何人かが居る。
「おはようございます。よろしくお願いします」
「おはようございます。こちらこそよろしくおねがいします」
お互いに挨拶をする。ダンジョンの中でもそうだけど、お互いの声かけや挨拶って結構重要なのだ。相手を認識するってのもあるけど、挨拶をしたりされたりすると、雰囲気が和らぐんだよね。だから、ルールではないけど紳士協定、所謂、暗黙の了解になってたりする。
「おはようございます」
徐々に集まってきた。よく見ると、装備に統一感が無い。ロングソードだったり槍や槌だったり、かと思ったら、弓や杖の人もいる。何でだ?不思議がってると講師の先生がやってきた。
「おはよう。えーと、1、2、3・・・34人、みんな揃ったな。えー、ここに集まってるのは実技講習が初回の人達だ。装備を見ると分かると思うが、近接職や遠距離職に関係なく集まってもらった。これには理由がある。それは攻撃を回避する訓練を受けてもらうためだ。何で遠距離職もなんだ?って思うかもしれんが、敵の数が多かったり、敵が強かったり、奇襲を受けたり等、結構遠距離職といえども攻撃を受ける事が多々ある。そんな時回避技術が有るのと無いのとじゃ、生存率がかなり違ってくる。なので、全員に回避技術を学ばせてるんだ」
なるほどねー。確かにその通りだわな。近接職が守るって言っても、完璧じゃ無いだろうしね。動画とか見ててもそういう場面は偶に有るもんな。そんな時って、大体は装備してる杖だったりバックラーだったりで受け流したり攻撃を避けてたりしてた。なるほど。必須な技術って事だな。
「ではこれより実技講習を始める。番号順に7人5列、両手を広げてもぶつからない程度に感覚を空けて、整列」
みんなと自分の番号を確認しながら並んでいく。俺の番号は6番だから1列目の端の方だな。そんなこんなでみんな並び終えた様だ。
「よし、まずは足運びだ。敵に近づく時は普通に歩いたり走ったりしてもいいが、敵に相対した時の構えは踵には体重を乗せず両足の親指の付け根辺りに体重の掛ける。そして左足を少し引き、足幅は肩幅くらい空ける。膝は軽く曲げ背筋は伸ばす。しかし、体には力を入れず、寧ろ力を抜くように心がける事。力が入りすぎると、いざって言う時動けないからな」
言われた通りの体勢になる。これって剣道の足の動きだよな。って事は動きはすり足が基本かな。
「動きは基本的にすり足で行う。すり足といっても本当に擦りながら動くんじゃなくて、する様に足を上げずに動くって事だぞ」
分かってますって、そんな事。みんな苦笑いしてるじゃ・・・・・・いや『なるほど、そうだったんだ』って顔してる人も居るな。
足の動きを講師の先生が教えていき、俺たち生徒も教わった通りに足を動かしていく。みんながある程度動かせる様になった頃、次の段階に進む。
「次は武器を使っての攻撃の捌き方を教える。基本的な動かし方は、円運動だ。武器回したりして相手の攻撃を捌いたり、突き出した武器の先端を回したり捻ったりして相手の攻撃を逸らす。この時に足運びを意識して動くとより効果的だ。まずは見本を見せるから覚えるように」
これも反復練習して身体に馴染ませていく。でもさっきの足運びもそうだけど、この授業中じゃそんなに時間をかけられないから、完全には馴染んでいない。自然に出来るようになるには、それこそ長い時間をかけて、何度も何度も繰り返し練習するしかない。所謂、修行は一生、ってやつだね。それでもこの短い時間の中で集中してやる事で、多少なりとも身に付ける事ができる。
そしてまた次の段階に進む。
「次は2人1組になって実際に武器を避ける練習をする。1番と2番、3番と4番といった具合にペアになるように」
えーと、6番だから5番の人とか。5番の人って女の人だよな。どんな人なんだろう。キツイ人じゃないといいんだけどな。女性をジロジロと見るのは失礼かなって思ってたから、チラッとしか見てないんだよね。
そんな事を思ってたら、先に向こうから声をかけてきた。
「初めまして、小野寺りんと言います。よろしくお願いします」