第32話 九十九里ダンジョン ② 方言紳士
ーside-トシー
はい! 始まりました。『イチャラブ勝手に中継』です。実況はオレ、トシがお送りします。
《なんでトシくんがやってんの?》
実はですね、智子ちゃんからの密命なんですよ。隙あらば実況してって。んで、今やってるって訳。
《イチャラブなんかやってる? 横になってるだけだと思うけど》
ふふふ、アレを見ろ!
《あ、主とりんちゃんが抱き合って寝てる。その横で紅狼ものんびりしてる》
《何アレ。飼い犬連れた新婚夫婦のピクニック?》
《お、いいこと言うねー。ほんと、その通りだわ》
もうね、横になって少ししたらすでに抱き合ってんだもん。何なんだろうね、あの二人って。見てるとからかいたくなってくるわ。 という訳で、実況していくぜ!
《主の周りって、色んな意味で変わりモンが多いな》
まずは経緯から。みんなも知っての通り、シュウが眠くなってきたってんで、横になる事になったんだけど、別にオレは眠くなかったし、偵察に出たんよ。んで、ふと見たらりんちゃんも横になってるから、もしかしたらと思ってみたら、いきなり抱き合ってんのよ。
コイツら起きてんのかと思ってみてみたら、寝てんのよ、ちゃんと。二人とも。これはチャンスか? と思って、実況を始めたんだわ。コレが経緯。
てな訳で改めて、実況スタートです。
と言っても、あまり動きがないな。コイツら偶にあるんだよな、こういう事。もう、側から見ると結婚何年目? って言う感じ。だって、自然にやってんだもん。全っ然初々しさはないんだわー!
《落ち着け、トシくん》
《欲求不満か》
《だったらアタシが!》
謹んで遠慮致します。
あ、なんか動きがあった。ふむ、シュウがりんちゃんの胸に顔を埋めながら抱きしめて、りんちゃんはシュウの頭を抱え込むように抱きしめて・・・公衆の面前で何やってんだ、アイツらは。
《寝ててもイチャラブなんか》
《なんだろう、このキュンとする愛おしさは》
《あ、魔獣が来た。けど、紅狼を見て逃げてった》
お? また体勢が少し変わったぞ。え〜と、上半身は変わらず抱き合ってて、足を絡め・・・・無理・・。
《トシくん、どうした?》
《何が無理なの?》
オレに実況は無理ー! だって今まで彼女居た事ないんだよ俺。それがいきなりこんな。智子ちゃんヘルプー!
《そんだけイケメンだから、結構女遊びしてんのかと思った》
ほだな女性さ失礼な事、する訳ねーべや! 付ぎ合うっけごんたら、真剣に付ぎ合うわ! 女遊びあて、ほだな事やらねぇし、する気もねぇず。
《トシくん、方言全開だよ》
《イケメンの方言。なんか良い》
《あぁ♡ 方言男子、最高・・・♡》
おっと、失礼。取り乱してしまった。
《今更っすわ》
んだらば、実況の続きを。っても、あの体勢から全然動かんな。実況のしようも無いな。どうしようか。
《トシくんに質問。地元じゃそういう喋りなの? 誤解ない様に言うけど、馬鹿にしてるんじゃなくて、生の方言って初めて聞いたから》
あーなるほど、そうだよ。普段はあんな喋り。全然分からないでしょ。
《でもニュアンスは分かったな》
あ、そうだ。山形弁で実況してみようか?
《おー、面白そう、やってみて》
んだらば、実況ば再開するっす。んー? あ、りんちゃん起ぎだな。んで? 周りば見で、シュウの頭ば自分の腿さ乗せだねゃ。あー膝枕がー。りんちゃん、膝枕好ぎだずねー。初デートん時もベンチさ座って、やってだっけもんな。
《見てたの?》
見っだっけ。亜香里ちゃんだも別の所で見っだけらしいな。
《なんで、揶揄う為?》
いや、りんちゃんってどだな人なんだべって。シュウばなんかさ利用すんのんねべねって思ってよ。亜香里ちゃんだもおんなじ理由だっけみだいだね。シュウってどだな奴なんだべって。悪い奴だっけごんたら、排除するって言ってたっけな。
《みんな友達想いなんだね》
まあ、んでも話聞いだら、あっちもコッチも半分以上は、ただの好奇心だっけんだげんともな。あはは。
《あはは、じゃないよ》
《あんたらお似合いだわ》
んで、シュウの頭ば撫でてる、と。かー、羨ましいちゃあ。俺もされでみったいな。まあ、相手いねげんともな。
《そういえば、主とトシくんって高校の友達って言ってたけど、どうやって友達になったの?》
あー、覚えでねなー。おんなじクラスでよ、気付いだら一緒に遊んでだっけもんな。そう言う友達って居るべ?
《うん、いるいる》
シュウさは結構迷惑かげだのよ。自分で言うど嫌味くさいげんとも、俺モデるのよ。んで、俺さ声かげらんねがらってよ、シュウさ声かげんのよ、みんな。んでシュウもシュウでや、全然嫌な顔すねで対応するんだわ。申しわげないずな、ほんてよ。俺、中身もいい奴あて言われでっけんと、シュウの方がよっぽどいい奴なのよ。んだがら、アイヅが幸せになんのは、心から嬉しいのよ。りんちゃん様様だなや。
《りんちゃんに感謝なんだね》
《でも、実況はやるんだね》
それどコレどは、話が別!
《ホント、主の周りって変わり者しか居ないな。がんばれ!主》
なんか動きがあるぞ。あ、りんちゃん、まだ周りばキョロキョロしったぞ。この流れは、もしかして・・・やっぱしキスだー。んでも、頬っぺたさ行がねで・・あー、口さがー。口付けだわー。りんちゃんも、やるんねがぃ。あー、俺も彼女欲すいちゃー。
《私がなるーー♡》
んだがら、謹んで遠慮するず。
《あの女子三人組は?》
あー、んだね、みんな可愛いし、性格も良いんだげんとね、んだがらこそあの三人がら一人選ぶのって、難しいのよな。可能なら三人ともって思うげんと、って何言ってんだ、俺は。
《正直なご意見、ありがとう》
《でも、わかるなー。あの三人って、三人で一人って感じだもんな》
コレはよ、こごだげの話だがらな。誰さも言うなよ。
ミオ:《トシくんになら、亜香里をあげてもいいわよ》
げ!! ミオさん!? 亜香里ちゃんには内緒でお願いっす。
《ライブ配信で言われてもなー。もう遅いっしょー》
あ・・・。
《ここのチャンネルは、やらかししか居ないのか》
《でも、トシくんって全然嫌味がないから、好感度高いよね》
《確かに》
褒めでも、何にも出ねがらね。あ、シュウも起ぎだ。方言戻すね。
《うん。楽しかったよ。またやってね》
では、時間が来ましたんで、中継を終了します。実況はオレ、トシでした。ではまたー。
くぁー・・よく寝たなぁ。どの位寝てたのかな。寝過ぎてないかな。んで、今回も膝枕ですか。いつもすみません、りん。
目が覚めると、りんが俺の頭を撫でていた。申し訳ないと思いつつ、起き上がる。
「なんかいつも膝枕させてるみたいで、ごめんな」
「好きでやってるんだもん、全然いいよ」
「神鳥は、まだ戻ってきてないのか。お前も護衛ありがとうな」
「ガウ」
そばに居る紅狼を撫でながら声をかけると、嬉しそうに鳴き返してきた。俺はそろそろ攻略に戻ろうと思い立ち上がり、周りの様子をうかがう。すると向こうからユキが戻ってくるところだった。
「ただいまー」
「おかえり、ユキ。楽しかったか?」
「うん! すごく楽しかった。また連れてってね」
すごくいい笑顔に満ちていた。偶にはこういうのも良いな。また連れてこようと心に誓った。
装備をし直していると、神取が戻ってきた。こっちもこっちで、なんか良い笑顔になってる。なんかあったのかな?
「神・・トシ、なんかあったのか? なんか、すごい笑顔なんだけど」
「いや? 別に何もないぞ。まあ視聴者さんと話をしてた位かな」
《そうそう、俺らと話ししてただけだよ、主》
《楽しかったよ。トシくんの山形弁全開会話、ギャップ萌えが半端なかった。トシくんまたやってね》
「だったら別に良いか。よし、攻略に戻ろう」
「「「おう(うん)」」」
ゆっくり休憩も出来て、ユキも思う存分楽しんだ。さあ攻略再開だ。
新作 と言うか、番外編を始めました
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です。よろしくお願いします。




