第29話 初めての配信、終了
ーside-智子ー
はい!唐突に始まりました『りんのイチャラブを勝手に中継』の時間です。実況はわたし、折井智子がお送りします。解説はお馴染みの【疲れてるからパス】〈アタシも〉はい、解説はいません。では行きましょう。
《うわっ、いきなり智子ちゃんのドアップで何かが始まったぞ!?》
《イチャラブ? あ! りんちゃんと主が抱き合ってる》
そう! アレこそがわたし達のからか・・・コホン、愛すべきバカップル! なので覗き・・・実況するのだ!
《本音が漏れんてんぞー》
うっさい! 良いんですー。わたし達はは良いんですー。
《逆ギレ智子ちゃん、可愛いー》
きゃー、可愛いなんて、智子照れちゃうー。
《本性知ってんぞ》
チッ、バレてるのね。まあ良いか。
《と言うより智子ちゃん。本名言っちゃってるよ。いいの? 変な輩が来たらどうするの?》
探索者配信なんてやってたら、いずれバレるんで良いんです。あと変な輩が来たら、オーバーキルで返り討ちにするから、覚悟してね⭐︎(キラリ)
《智子ちゃんの笑顔が怖いんだが!》
ではでは行きましょう。りんがアキくんに駆け寄って行きましたね。さっき、自分から飛んだとはいえ、派手に吹っ飛んでたからね。心配にもなるってなもんでしょ。
おっと、そのままの勢いで抱き付いた。アキくんも抱き返してる。なんか言ってるぞ。絶対勝つと信じてた、だって? かー、アンタはどこのスポ根漫画のヒロインだってーの。
《なんか智子ちゃん、面白いんだけど》
《見た目可愛いのに毒舌なんだね》
動きがないんで、今日はこの辺で。実況はわたし、折井智子がお送りしました。ではまた会う日まで。しーゆーあげ
《ちょっと質問いい?》
何かな? 答えられる範囲で答えるよ。
《いつもこんな事やってんの?》
前にも誰かに言ったけど、アキくんと出会ってからだね。昔のりんってね、なんか周りに流されてるなって感じでね、見てるこっちが心配だったんよ。でもアキくんと出会って、すごく明るくなってさ、心から嬉しいし、幸せになって欲しいんだ。ホント、色々あったからね・・・。
《友達思いなんだね》
《主がりんちゃんを泣かしたら?》
場合によってだけど、許さん!【制裁を加える!】〈アレを切り落とす!〉
《紫乃ちゃんが一番怖い!》
《でもこんな事はやるんだね》
それとこれとは話が別だよ!【〈そうそう〉】
《コイツら面白いなー》
〜 〜 〜 〜 〜
「ふー、お疲れ様。みんな無事で何よりだよ」
「アキくんもお疲れー。こっちは四人だったからね。苦労はしたけど、まあなんとかなったよ」
「アキくんの方が一人で大変だったよね」
「私は苦戦しなかったけど、二匹ってのが面倒だったかな。あとは白狼ズの援護してた」
《なんかすげーのを見た気がする》
《偶然だね。俺もだよ。聞いたことない技がどんどん出て来て、何が何やら》
《けど! 一番凄かったのはユキちゃんの人化!!》
《主! 次は人の姿のユキちゃんを希望する!!》
「それも面白いかもな。どんな戦闘スタイルがいいかな」
ボスを撃破すると入り口が開いた。やっぱり、そういうギミックだったんだな。生きるか死ぬかだなんて、恐ろしすぎる。
部屋を見渡すと、オークの死体が消えていて、ドロップ品と宝箱が二つ置いてあった。ドロップ品の内容は、中級ポーション二個、マジックリカバリー一個。そして一つ目の宝箱の中身はと言うと、
「騎士剣、ロングソードだね。これは紫乃ちゃんの装備品だな」
《紫乃ちゃん、装備してみて》
《刀身が白銀に輝いてて中央の溝に模様が彫ってある。それでいて、余計な飾りが無い。ずいぶん綺麗なロングソードだねー》
「うん。よっと、見た目と違って、意外と軽いのね。何の素材で出来てるんだろう」
出て来たのは騎士剣、所謂ロングソードだった。視聴者が言う通り、飾りっ気が殆ど無く、刀身に少し細工してある程度だ。剣そのものの美しさと機能を追求した、日本刀に通ずる美しさだ。紫乃ちゃんの凜とした雰囲気と相まって非常によく似合う。
紫乃ちゃんが盾を置き、両手でロングソードを振っていた。余程軽いのか、ヒュッ、と風切り音が聞こえてくる。しっかり刃を立てて振ってる証拠だ。少しでも刃が立ってなかったら、ブォン、となるはずだ。
今度は盾を持って片手で振っている。こちらも綺麗な風切り音だった。完全に使い熟している。
「これ凄いね。すごく手に馴染むよ。まるで手の延長みたい」
《銘を考えないとね》
「面倒だから、アタシの名前から取って、ヴィオレットソードでいいよ」
そして、二つ目の宝箱の中身は、ドレスアーマーと脛当て、胸部アーマーにガントレットの四点セットだった。女子の防具なので、当然四人の中から選ぶんだろう。
「これはりんかなー。後方のわたしじゃ意味ないし」
「うん、そうだね。ナイフ使いで斥候のあたしよりも、槍使いのりんがいいと思う」
「アタシはこれ貰ったしね」
「私も、りんお姉ちゃんが似合うと思うよ」
満場一致で決まっていた。早速りんが装備している。今日のりんの格好は、ショートパンツにニーハイソックス、それに脛当てだ。上は長袖のアンダーに胸当て、ネックガード、肩当て、ガントレットだ。これを、ドレスアーマー四点セットに着替えて、その場でクルッと回っていた。
《りんちゃんカッコいい! ファンタジーの女戦士みたい》
《惚れてまうやろー》
「ふふ、私はアキのだから、惚れちゃダメだよー」
《これがバカップルと言うやつか。だが俺は推す!!》
《このバカップル、いっそ清々しいな》
さて、そろそろ帰る準備をやるか。流石に帰りはイレギュラーは起きないだろ。と言う事で、みんなに声をかけた。
「よし、そろそろ休憩終わって帰るか」
「そうだね」
俺たちは帰り支度をして、ボス部屋を出た。
紫乃ちゃんが、帰りは任せて、と言って来た。多分ヴィオレットソードの試し斬りをしたいんだろう。なんせ、素材からして謎なのだ。そのため、実際使ってみる、と言う結論に至った。
結果は大当たりだった。盾を俺が預かり、紫乃ちゃんはヴィオレットソードを両手で持って魔獣に突っ込んで行き、一刀両断していった。
「これすっごく良い! すっごく軽くて取り回しも楽だし、すっごい斬れる! なんか楽しくなってきたー。あっははははは」
《紫乃ちゃんが壊れた! 魔獣さん逃げてー》
なんかホントに壊れてるっぽいな。アレ、呪いの剣じゃないよな? 鑑定してもらった方が良いんじゃないかな? 紫乃ちゃんが出てくる魔獣を悉くぶった斬って行くので、俺たちは何もせずに一階層まで戻って来た。もう直ぐ出入り口だ。
「えー、途中、死にそうなイレギュラーがありましたけど、なんとか無事に戻ってこれました!」(パチパチパチ)
《おつかれー。結構見応えあったよ》
《だよなー。変異種のボスが五匹とか恐ろしすぎる。でもそれより! ユキちゃんだ! 可愛かったし、それでいて強い》
《それなー。銀狼の時も綺麗だけど、人化したらあの妹的な可愛さ! お兄ちゃんって呼ばれたい》
《分かる!》
《魔獣ってどうやって使役するの?》
「えっとね、これは私の場合だけどね、お互いの合意があれば契約できるはずだよ。だから、ある程度の知能がある魔獣だったら大丈夫だと思う。因みに、知能のある魔獣は、いきなり襲わなくて、相手の出方を伺ってるから、それである程度は分かるかな。でも実力差が有り過ぎると無理だから、気を付けてね。あとは瀕死に追い込んで契約させるの。でもこれも頭の良い魔獣にしか通用しないからね」
《しれっと、とんでもない情報が出て来たぞ》
《魔獣の事は魔獣に聞けって事だな》
《でも、こんな所でそんなこと言ったら、ヤバい輩どころか組織に狙われるんじゃ》
ミオ:《ユキちゃんは私達が守る!》
トシ:《うんうん》
《アンタら何もんだよ》
ミオ:《正義の味方よ!》
あながち間違っちゃいないな、美桜さん。確かに表面上は正義の組織だもんな。裏は知らんが。でも、情報局が守ってくれるならユキも安心だ。ここまで高い知能を持って、しかも人間になれる魔獣なんて聞いたことないし、考えてみるとヤバいもんな。でも、これがきっかけで魔獣との共存なんて事になったら、それはそれで面白そうだな。
さて、あんまり話してると収拾が付かなくなるので、そろそろ締めないとな。
「それじゃエンディングです。今日は三人かな? 見てくれてありがとうございました。メインは動画投稿なので、ライブは偶にしかしませんが、良かったらこれからも宜しくお願いします。ではまた、次の動画で会いましょう」
《面白かったよー。智子ちゃんが》
《あとユキちゃん可愛かったよ》
《俺は女子四人組が良かったなー。みんな可愛いし》
「俺の評価が一個もないな・・・」
《主は規格外のフツメンだから、評価のしようがない》
「そ、そうですか」
「アキが一番カッコよかったよ」
《ここでもバカップル発揮か。あ、チャンネル登録したからね》
「では、また今度ー」
ここで配信を終了した。ふー緊張したわー。見てくれた人が少なかったから、この程度の緊張だったけど、多かったらもっと緊張してたかも。でもまあ、こんなもんかな。今後もこんな感じでのんびり・・・だったかな? まあ良いや、のんびり行きますかね。
新作 と言うか、番外編を始めました
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です。よろしくお願いします。




