第28話 ボス戦終了
新作 と言うか、番外編を始めました
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です。よろしくお願いします。
オークは攻勢を徐々に強めていく。ヤバイ、今は何とかなってるが、このままじゃジリ貧だ。何とか隙を見つけないと。
ガアアアァァァ!
クッ! 叫びやがった。ウォークライのつもりか!
反撃もせずに避けてばかりの俺に業を煮やしたのか、自身の体を覆う様に魔力を展開し始めた。強化魔法で一気に決めるつもりか!
「させるか! 相剋! 火剋金! 火属性魔力展開! 打ち消せ!!」
オークの周りの金属製の魔力に相剋効果を持つ火属性の魔力を展開し、オークの魔法を打ち消した。
ガッ!?
《なになに? 何が起きたの? 魔力展開って何?》
《なんかオークもびっくりしてるぞ。打ち消すって、もしかして魔法を打ち消したの? 出来るの? そんな事》
ミオ:《そんな事出来る人なんて、今まで聞いた事ない》
《怖いんですけどー。俺、魔法職なんで、そんなんされたら、ただの人なんですけどー》
《これ、ライブだから信じるけど、動画だったら絶対信じんわ。規格外すぎる》
何とか打ち消せたか。あれ以上身体強化されたらマズイ。隙を見て弱体化させないと。まずは自身に強化の重ねがけだ
「比和! 火魔力展開! 強化!」
オークが右手を振りかぶり殴りかかって来た。オークの攻撃を体を捻って躱し、しっかりと力強く踏み込み、背中で体当たりを喰らわせた。この衝撃でオークが吹き飛び、地面を転がる。良し! 練習して来た技が決まった! 今だ!
「隙が出来た! 相乗! 火乗金! 火魔力収縮! 行け!」
《こいつ、またなんかやってるぞ。魔力収縮って何や!》
《なんかオークの動きが悪くなってるぞ。もしかして、デバフか?》
魔力を収縮させて、オークを相剋効果の属性の強魔力で覆い尽くし、能力を下げる。つまり、デバフだ。動きも筋力も何もかもを弱体化させる、俺の切り札的存在だ。だが、今の俺では相手の動きが止まった時にしか使用出来ない。使うタイミングが難しい技なのだ。
今のうちに短刀に属性を持たせる。奴の属性は金だ。なので相剋の火属性を付与する。デバフが決まってるから、相乗効果も乗る筈だ。
オークが焦ってる。このデバフは今の俺では長く続けられない。なので、今しかチャンスが無い。俺はここでけりを付けるべく、一気にオークとの距離を詰めて行く。オークが気付きこちらに拳を横に振るう。それを屈んで躱し、
「トドメだぁーーー!!」
短刀をオークの胸に突き刺し、そのまま下に斬り裂いた。
ウグアアアアァァァ!!!
オークが血を吹き出し、その場に倒れた。良し、漸く倒したぞ。死ぬかと思ったー。
周りを見ると、みんなも終わった様だ。みんな、無事で何より。
ーside-りんー
「りん!! ユキちゃん!! よそ見をしない!! アキくんなら大丈夫! 自分で後ろに飛んでたから、見た目ほどの怪我じゃ無い!!」
「そうだよ! 目の前の敵に集中して!」
「アキ・・くっ。了解」
アキの叫び声が聞こえた! 見たらアキが殴り飛ばされて、地面を転がっている!! アキがやられてる!? イヤー! アキが・・アキが! でも亜香里と智子に怒鳴られ、我に返る。そうだ。アキは銀狼でもあるユキちゃんにも勝ったんだ。オーク如きにやられる筈が無い! そう自分に言い聞かせ、目の前のオークに集中する。
火属性のオーク。弱点は水で金は効果半減、場合によっては無効。木は活力、場合によっては回復か。だったら水か土で攻撃だ。
「牽制行くよ! 水魔法アクアボール! 行け!」
智子が魔法を打ち出す。その隙に亜香里が走り出し、私が中距離から攻撃する。紫乃は、盾を構えてオークに向かっていく。いつもの連携だ。
私が槍で攻撃をし、怯んだ隙に亜香里が斬り付け、紫乃がトドメ、もしくはシールドバッシュを決め、智子が魔法でトドメ。いつもの流れだ。しかし、今回はうまく流れない。いつものオークより強いのだ。
「智子! いつものオークと違う! 多分、上位種か変異種!」
「了解! だったら、より強い魔法、アクアランス!」
《この子ってほんと、魔法の才能がすごいね》
グラアァァ!
魔法が効いてる。このままいけるか! ん? なんか変だぞ。オークの体が赤く燃えてる様に見える。 !! 動きが変わった! 強化魔法か! 動きが素早く、力も上がってる。紫乃も防戦一方だ。反撃の糸口が掴めない! 紫乃が盾で防御するも、力負けして吹き飛んだ。
「うぁっ!」
「紫乃!!」
《紫乃ちゃんが吹っ飛んだ!! オークが強化魔法をかけたのか! 大丈夫か!》
《アレはマズイぞ! 踏ん張った状態からだから、主の様に衝撃を逃せてない!》
「クソッ! アキくんだったら魔法をキャンセルして強化なんてさせなかったのに! わたしのせいで!」
「クッ・・。智子! 指揮官は後で悔やんで! 取り敢えず、アタシの盾に水の付与を掛けて! 時間を稼ぐから、この状況を好転させる事を考えて!」
「! 了解!!」
智子が紫乃の盾に魔法を掛けた。これで防御はある程度は安心だろう。私達も攻撃を仕掛ける! でも、中々ダメージが入らない。細かい切り傷が付く位だ。一体どうすれば。
「智子! デバフは!」
「動きを止めて貰わないと無理!」
「だったら、りんとあたしを強化して! 取り敢えず攻撃する!」
「了解!」
秘策がある訳でもない。ただ攻撃を繰り返して、ダメージを蓄積させるだけだ。
流石に細かい切り傷とは言え、塵も積もれば、と言うやつだ。オークの顔が徐々に歪んでいく。痛みと言うより、怒りなのだろう。攻撃は強くなってるが、動きが単調になってきた。もしかして、反撃の糸口か。
「みんな! このまま攻撃をして、オークの怒りを誘って!」
「「「了解!!」」」
《智子ちゃん、なんか閃いたのか》
智子から指示が来た。何かを思いついたんだろう。指示に従い、怒りを誘う様に攻撃を繰り返す。オークに細かい傷が増えていった。オークの顔が怒りに満ちていく。
ウガアアァァァ!!!
怒りが頂点に達した様だ。冷静な判断は出来ないだろう。
「みんな退いて! アースウォール! 囲め! 水顕現! そして、アースシーリング!」
オークの周りに壁が出現し、オークが戸惑っていると、一気に中を水で満たしていき、土で天井を作って密封した。中でオークが暴れてるんだろう、内側から壁を殴ってるのが音と衝撃で分かる。
《溺死ってか! 可愛い顔して何つーえげつない攻撃だ》
《水の無いダンジョン内で溺死って何? 恐ろしいんですけどー》
智子が鬼の様な形相になってる。壁を壊そうとするオークと壁を維持しようとする智子の根比べだ。オークが殴り壁にヒビが入っても、一瞬で智子が修復する。それも繰り返しだ。
次第に、壁を叩く音が弱まって行き、遂には聞こえなくなった。
「はあ、はあ・・・。よし、壁を解除するよ。みんな油断しないでね」
壁を解除すると、中から動かなくなったオークが出て来た。武器を構えたままオークに近づき、様子を窺う。ピクリとも動かない。更に窺う。オークの体が薄くなって消えていく。やっと倒した。
「やっと倒したー。疲れたー。動きたく無いー」
《智子ちゃん、お疲れ様。よく頑張ったよ》
《そうだよね。土と水の複合魔法なんて維持集中が半端ないもんね》
こっちは終わった。アキは! 大丈夫なの? 援護に向かわないと! 見るとアキも終わった所だった。良かった。無事だった。
「アキ!!!!」
私は急いでアキに駆け寄っていった。よく見ると体も装備もボロボロだ。刀なんかは折れている。満身創痍だ。私はそのままアキに抱き付いた。アキも抱き返してくれた。
「グス・・良かった・・無事で・・ちゃんと生きてる」
「心配かけてごめんな、りん。こっちもなんとか倒したよ」
「うん、絶対勝つって信じてたよ」
そのまま暫く抱き合っていた。配信中なのも忘れて。




