第24話 卒検終了 卒業しました
「とりあえず、名前考えようよ。女の子だもん、可愛い名前にしなきゃね」
りんが提案して来た。実は白狼だから、ハクと考えていたのだが、雌だとは思っていなかったので、他に考えた名前も、全てナシになってしまった。また一から考えなくては。うーん・・・。
「ポチ」「却下」
「たま」「それ猫」
「ラッキー」「うーん」
「シルバー」「種族名はちょっとねぇ」
「たろう」「クゥ〜ン」「この子、女の子なんだよ?」
「「う〜ん」」
悩む。なかなか良い名前が思いつかない。世の中の親はこんな苦労をして来たのか。頭が下がるわ、ホント。
「パパとママ、なかなか名前思いちゅか無いでちゅねー」
「「智子!(折井さん!)まだパパママじゃないよ!」」
「まだ、ねー」(ニヤリ)
「「あ」」
本当にこの子はもー。まあ、そんな事より名前か。うーん。白狼からの銀狼。白銀。雪・・。
「ユキ、はどうかな」「がぅ」
「ユキ、ね。白銀からかな。うん、良いかも。この子も気に入ったみたいだし。よし! 今日からキミはユキちゃんですよー」(わしゃわしゃ)
「なんか俺、冬紀と美涼って名前を付けた理由が分かった気がする」
「偶然だね、神鳥くん。あたしも分かった気がするよ」
ユキが尻尾を振りながら目を細めている。喜んでいる様でよかった。
(可愛い名前ありがとう。ご主人様)
「りん、なんか言った?」
「何も言ってないよ。なにか聞こえたの?」
もしかして、ユキが・・・?
そういえば忘れてたけど、卒検ってどうなったんだろう? 職員が全員神鳥のところの人員に変わってるって言ってたし、これが終わったら卒検合格っては聞いてるけど、織田さんしか居ないんだが。もしかして、織田さんが試験官なのかな。そういえば、ユキとの戦いの時、全然手出ししてこなかったし。織田さんに聞いてみるか。
「織田さん、ちょっと聞きたいんですけど、卒研の試験官ってどこにいるんですか? 卒検がどうなったか知りたいんですけど。もしかして、織田さんが試験官なんですか?」
「あれ? 聞いてないのかい? この案件が終わったら合格だって」
「いや、それは聞きましたけど」
「つまりはそう言う事だよ。ダンジョンから出たら無条件で合格。まあイレギュラーもあったけど、君たちなら普通にやっても卒検は合格だったよ。証拠も居るし。ね、ユキちゃん」
「ガゥッ!(私に勝ったんだもん! 当然よね!)」
「そ、そうですか。まあそれで良いなら。じゃあみんな、ダンジョンから出るか」
俺たちは出口を目指して来た道を戻る。行きと違い、非常に楽な帰り道だった。なぜかと言うと、
「ガゥッ!!(雷だー!)」
「ウォォォォーーン!(眷属達、やっちゃえー!)」
全部ユキが張り切って倒して行った。この階層に銀狼はオーバーキル過ぎる・・・。そして眷属達は魔獣を倒した後、俺たちの前で尻尾を振りながら、撫でられ待ちをしていた。撫でるとすごく嬉しそうにする。そして、モフモフだ。女子三人は抱きついて撫でている。
「はぁ〜、癒される〜。ここは天国ですか〜」
「本当よね。なんかもう離れられない」
「それもこれも全部武内くんの所為。責任とって貰わないと」
「「「ああぁぁ〜、最高〜」」」
三人が蕩けていった。俺の所為にされても困るんだが。ユキ、眷属って譲渡できるの? 出来るんだ。そうなんだ。成長も進化もするんだ。それって普通のDウルフじゃん。三人とも喜んで貰って、早速名前をつけていた。
折井さんが雌の白狼で名前が「サレス」
堀田さんが雄の白狼で「パルディ」
宮藤さんが雄の白狼で「しろ」
折井さんと堀田さんの名前は、それぞれ『ソーサレス』
『パラディン』から取ったと分かる。しかし、宮藤さんの「しろ」。人のことを言えないが何と単純な。ちなみにこの白狼達は、契約した飼い主かユキが召喚すれば、どこに居ようと召喚陣から現れて、召喚陣から寝床に帰れるらしい。便利すぎるだろ、コイツら。
「「「ちゃんと守ってね」」」
「「「がうがう(任せてー)」」」
ユキと白狼ズの頑張りのおかげで、あっという間に出口に着いた。何だろう、久しぶりに太陽を見た気がする。実際は一時間くらいなんだが、それ位濃い時間だったんだろうな。
傷だらけでダンジョンから出て来た俺たちを見て、心配する者、不安になる者、無事に帰って来たと安堵する者、そして馬鹿にする者など、みんな様々な反応だった。事情を知らない人からは、『こんな表層で、何傷だらけになってんだか』とか『こんな表層で苦戦するなんて、この先大丈夫なんだろうか』って思われてるんだろうな。うん、そう思うのも分かる。
だが、ユキと白狼ズが出て来た瞬間、みんなが固まった。それはそうだろう。白狼と言えば探索者初心者が楽に勝てる相手では無い。それが三匹。そして、ユキに至っては銀狼(見た目は白狼)だ。ハッキリ言って高レベル探索者でも無い限り、相手にならない。
それらを引き連れてダンジョンから出て来たのだ。固まるのも仕方ない。でも、納得出来ない者も居る様で、
「卒検に白狼なんかを連れて行ったら楽勝だろ! 違反じゃ無いのか! 試験官、どうなんだ!」
「この生徒達は、行く時は魔獣なんて連れていませんでしたよ。それにこの魔獣達はダンジョンの中で襲って来たのです。それを撃退して、眷属契約したんです。その事は僕が保証しますよ」
「貴方は・・ああ、なるほど。分かりました。この方の言う事だったら、信用できます。なので違反では無いです」
「な、そんなの有りなのかよ・・」
「まあ、魔獣と契約できるのも探索者の能力ですからねぇ。寧ろ魔獣を引き連れられるなら、積極的にそうした方が良いと、僕は思いますがね」
試験官全員が情報局員なので、俺たちが何をやってきたか知っている。でも流石に魔獣を連れてくるとは思ってなかったので、その部分を織田さんが説明してくれた形だ。
結果、卒検に合格した。
〜 〜 〜 〜 〜
「卒業おめでとうございます。こちらが卒業証明書になります。期日内に最寄りの免許センターで試験を受けてください。合格すれば、本免許が交付されます」
「有難うございます」
卒業した。思えば色々あったなぁ。まさかこの三週間の間に、彼女が出来て、社会の裏側を知って、魔獣のペットが出来て・・・内容濃すぎだろ。よく考えると普通じゃ無いよな、これって。まあ、その分忘れられない思い出がいっぱい出来たんだけど。次は免許センターでの本試験だ。頑張らないとな。
ー情報局東京支局ー
「ただいま戻りました」
「おかえり、お疲れ様だったわね。早速で悪いけど、報告書見せてくれる?」
「はい、こちらです。あ、コーヒー貰いますね」
「どうぞご自由に。ふむ・・・六人パーティね。亜香里と、う〜ん、やっぱり超イケメンよねぇ、俊希くんって。まあ、それは置いといて、指示もできて全属性が使える魔法使いと、タンク役の騎士、薙刀の段持ちの槍使い、そして刀使いの子ね。ふぅ〜ん、みんな見どころのある子達ばかりね、でも刀使いの子は極々平凡ね。亜香里達と一緒じゃ大変だったでしょうね、この武内くんって子」
「美桜さん・・いや部長にはそう見えますか。あー、ここのコーヒーはやっぱり美味いですね」
「なんか含んだ言い方ね。何? この武内くんって子に何かあるの?」
「まあ、読み進めれば分かりますよ」
「どれどれ・・・・・・・・この報告書、織田くんが作ったラノベ?」
「そんな訳無いでしょ。全て事実ですよ」
「対象の周りが歪んで『見える』・・魔法の発動位置とタイミングが『見える』・・タイミングが分かるから、雷も避けられるし、召喚の位置や出る瞬間も分かる・・極め付けは、超格上の銀狼の変異種との隷属契約・・。この子ってなに? 魔力を感じるんじゃなくて魔力が見えるって言うの? え? マジで? 化け物? ハッキリ言って、魔法使いの天敵じゃないの! あ、もしかして覚醒者?」
「まあ、多分そうですね。でも本人は普通の大学生でしたよ。なんか配信やりたいなんて言ってましたね」
「ウチでスカウト出来る?」
「無理ですね。多分、山形さんが目を付けてると思いますよ」
「あっちが地元じゃ仕方ないか。でも、亜香里と友達ならこことも縁が出来たってことね。流石、私の可愛い妹!良くやったわ!」
「亜香里さんの友達の彼氏ってだけですけどね」
「ところで話は変わるけど・・・ユキちゃんてそんなに可愛いの?」
「それはもう! 頭も良いし、毛並みは良いし! 美桜さんも一目で惚れますよ!」
「なにしれっと名前で呼んでんのよ。それに随分テンションが上がったわね」
「ダメでしたか? それと、僕犬派なんですよね」
「まあ、良いけどね。あ〜あ、私もユキちゃん見てみたいなぁ」
「亜香里さんがユキちゃんの眷属の白狼を一匹貰ってましたから、そっちなら見れますよ。そっちもそっちで可愛いですよ」
「なるほど! あー、早く帰ってこないかな。凄く楽しみ〜」
「じゃあ、それまで僕の家の柴犬を愛でません? いつでも大歓迎ですよ」
「う〜ん。考えておくわ」
「またですか。道のりは長いなぁ」
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