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配信始めました 〜ダンジョン編〜  作者: ばっつ
第一章 そうだ 探索者になろう
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第21話 執行そしてemergency ②

 目的地の四階層に到着した。あとは指定の部屋で待つだけだ。俺は部屋の前で立ち止まり、心を落ち着かせようとするが、落ち着かない。それどころか心臓の鼓動が高まり、呼吸が荒くなる。息が苦しい。目を瞑り、必死に落ち着かせようよする。その時、後ろからりんちゃんが抱きついてきた。


「大丈夫。私も側に居る。だから落ち着いて。ね」


 後ろから回された手に、俺はそっと自分の手を重ねる。りんちゃんも震えていた。


「・・・・・・ありがとう。でもダメだね。格好つけても、いざとなったら、やっぱり怖いし、震えが止まらない。情けないし格好悪いね」

「・・・アキ、こっち向いて」


 俺たちは一旦離れ、お互いに向かい合った。徐ろにりんちゃんが俺の胸に顔を寄せてくる。俺もりんちゃんの背中に手を回す。抱き合ってる状態だが、恥ずかしさや照れは無い。寧ろ安心するし、心が落ち着く。


「私も同じだよ。怖いし、震えが止まらない。でも、アキが居れば、私は安心できる。例え格好悪くても、情けなくても、アキの事が好きだから、側にいてくれるだけで、私は安心できる」

「りん・・・。そうだな。好きな人を守るんだ。怖いだの震えるだの言ってられないな。ありがとう、りん。ちょっと勇気が出てきた」

「ふふ、どういたしまして。それにしても、全然ムードの無い告白になっちゃったね。やっぱり締まらないね、私達って」

「そうだね。でも、俺達らしいかな」


 俺たちは離れて、改めて部屋の中に入った。周りを見回すと、思ったより広い。円形の部屋で体感的に直径が20mくらいあるだろうか。高さも10mはありそうだ。ここが処刑場・・・。


「やっと来たな、シュウに小野寺さん。もう直ぐ東京さんの所の人が来る。覚悟はいいな。」

「ああ」


 覚悟は出来てる。りんを不安がらせてる過去をここで精算する。確実に。


「お待たせしました、山形さん、亜香里さん。コレが例の者です。薬で眠らせてありますがね、多分そろそろ起きると思いますよ。まあ僕が近くにいるんで、思う存分、気の済むまでやっちゃってください」


 現れたのは、高身長で黒髪短髪のイケメンだった。この人が宮藤さんの所の職員さんなのか? しかし、ずいぶんフランクな人だな。


「ありがとうございます、織田さん。お姉ちゃんに宜しく言っといて下さいね」

「はい、言っときますよ。しかしあの人、僕がいくらアプローチかけても、ちっともいい返事くれないんですよねー。亜香里さんからも言ってもらえません? 僕はお買い得ですよって」

「考えとく」

「姉妹揃って同じことを言う」


 妙な雑談が続いてる。情報局員って、みんなこんな感じなのだろうか?


「シュウ、お前の考えてることは分かる。その人だけだからな、こんな感じの人は」

「そ、そうなんだ」


 手足を縛られて床に転がってる坂井悠太を見る。確かにかなりのイケメンだ。しかし、事の経緯を知ってるからか、その顔が酷く歪に見える。それに、何故かはわからないが、坂井悠太の周りが歪んで見える。これは一体・・・。


「なあ、神鳥。なんかこいつの周り、歪んでないか?」

「いや? 歪んでなんかいないぞ。大丈夫か?」

「うん、まあ、大丈夫。気のせいかな」

「・・・・・・」


 歪んでる様に見えるんだが、まあいいか。なんか、織田さんが興味深そうな顔でこっち見てるぞ。こっちも何だ?


 坂井悠太が目を覚ました。目を覚ましたら、見知らぬ所だったからだろう、少し混乱していた。それも徐々に収まってくる。


「う、ここは一体? !? なんで縛られてんだ!? 解けよ!コラッ!! オイ!! テメェ聞いてんのか!」

「ハイハイ、聞いてますよ。でもねぇ、解いちゃダメなんですよ、それ。だってキミ、今から嬲り殺しにされるんだもん。解いちゃ意味ないでしょ?」

「な、何言ってんだテメェ。ふざけんじゃ、」

「ふざけてませんよ。キミはそれだけの事をやって来たんだから、当然の報いでしょ」


 織田さんは淡々としているが、坂井悠太は言葉とは裏腹に焦りや恐怖の感情が滲み出ていた。坂井悠太は周りを見渡し、りんを見つけ、


「り、りんじゃねーか。オイ! オレを助けろ! 早くしろ!!」

「なんで? 私に助ける理由はない。寧ろ死んで欲しいの」

「チッ! このクソがぁー! そうか。お前がオレを売りやがったんだな! もう男作ってるみたいだしなぁ。股開かなかったくせに、男作るのは早ぇなー! このビッチがよ!」

「こ、この。りんに向かってよくも!」


 俺の中で何かが弾けた、そして堀田さんを手で制しつつ坂井悠太に向かって歩いていく。そして、


「なんだ、ヤルってのか! 探索者みてーだけどよ、テメェまだ学生だろ。ヤレんのか? ああ! やれるもんならヤッ・・・があ“あ”あ“!!!」


 奴の足に刀を突き立てた。刀を引き抜き、今度は腿に突き刺す。


「テメェ! 何を・・・ぐああああああ!!!!」


 腕や足に刀を突き立てていく。感情も何もない。ただ刺していくだけだ。この時の俺は、怒りを通り越していた。只々この男を嬲る。それだけの感情で動いていた。

 刀を投げ捨て、素手で殴り始める。相手が泣き喚こうが、謝ろうが、何も感じない。ひたすら殴っていくだけだった。


「もぅやめてくれぇ・・・。何でそんなに無表情で人を嬲れるんだよぉ・・・」

「武内くん、なんか、怖い・・・」

「怒りを通り越して、無の境地みたいな感じなんだと思う。りんを侮辱された辺りから雰囲気が変わったから、間違い無いと思う」

「アキ! もういい! もういいから! アキが・・アキが壊れちゃう! もうやめて!」

「シュウ、もういい! トドメは俺がやるから! 坂井悠太! そろそろ死んでもらう!!」

 

 我に返って、どのくらい時間が経ったんだろう。多分、そんなに経っていないはずだけど、俺にとっては永遠に近い時間が経った様な気がする。

 

 自分の手を見る。血塗れだ。自分のじゃ無い。坂井悠太のだ。頭が真っ白になり、刀を刺しまくった記憶がある。そしてその後、滅茶苦茶殴った記憶もある。だが、何故か他人事のような。もしくは夢の出来事の様な・・。

 だが、床に転がっている首のない坂井悠太の存在が、現実の出来事だと物語っている。

 かなり心配だったんだろう、りんが側に来て、心配気に声をかけてきた。


「アキ・・・大丈夫・・?」

「・・・りん・・・!?」


 俺はその場に膝と手を着き、そして胃の中の物を全て吐き出し、そして、そのまま気を失った。

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