第13話 女子三人組の画策
side-女子四人組
夜、紫乃達が私の部屋に集まっている。夕方、学校が終わって其々の部屋に戻った後、私の部屋に集まって卒検の対策を練っていたのだ。夕食も部屋で食べている。
実は紫乃達三人は、私のお母さんの実家で寝泊まりしている。あの時元カレ、坂井悠太と喧嘩して私がここの学校に通うと言ったら、一緒に行くと言って着いて来てくれたのだ。ほんと、良い友達を持ったと思う。私には勿体無いくらいだ。
それで、泊まるところはどうしようとなった時、お母さんに確認してもらったら、四人位なら部屋もあるし大丈夫と言ってたので、私と紫乃達三人はお母さんの実家に寝泊まりさせて貰ってるのだ。
「今日はここまでにしよう。ちょっと疲れたしね。それにしてもあと四日で卒検か。なんかあっという間だったな、三週間って」
「楽しかったからねー。楽しい時って、時間が進むの早いもんねー」
「そうそう。ほんと楽しかった。このまま終わるのが勿体無いくらい」
三人ともしんみりモードになってる。でも分かるな、その感じ。私もちょっと寂しいと思ってしまう。ずっとこのままで居たいなー、と。それ位、居心地が良いのだ。夏休みが終わったら帰らなくちゃいけないのが、残念でならない。なので、また遊びに来ようと心に誓った。今度はアキくんと一緒に・・えへへへ。と、イケナイイケナイ。顔が緩んじゃった。智子達に見られて・・いた。三人とも奇妙なモノを見てる顔をしている。
「りん、顔が緩んでるよ。何を想像してたの?」
「紫ぃ乃ぉ、そんなの決まってんじゃ〜ん。武内くん、いや! ア・キ・く・んの事だよね〜」
「そうだよねぇ。愛してる人の事考えてると、ニヤけるよねぇ〜」
「ちょーっ! アンタら何言ってんの!? わ、私とアキくんはそんなんじゃ無いの! ああ、愛してるなんてそんな事・・」
「いい加減認めなって。往生際が悪いよ」
色々イジられてしまった。何でアキくんが絡むとこうなるの!? いや、狼狽えてる場合じゃ無い。明日は学校が休みなのだ。頭を切り替えていかなければ。探索者たるモノONとOFFの切り替えは必須な能力なのだ。命のやり取りをしてるんだもん、そうじゃ無いと精神的に持たない。取り敢えず、明日の事を考えよう。
「コホン。ねー、みんな明日はどうするの? どっか遊びに行かない? と言っても限られるんだけどね」
気を取り直して、みんなに聞いてみた。多分今までと一緒で、特に予定は無いはず。ん? なんか三人でコソコソ話をしている。なんか予定あったのかな。うわっ! 三人とも満面の笑顔で、いきなりこっち向いて来た! ビックリしたわー。それで? 予定はどうなのかな?
「アタシ達、明日はちょっと用事があるの。だから遊べないかな」
「え? そうなの? じゃあ仕方ないか」
予想外だった。でも用事があるなら仕方ないもんね。う〜ん明日どうしようかな。一人じゃ面白く無いしなー。あ、そうだ。
「ねーねー、私もその用事、手伝おうか? 四人でやったら早く終わるんじゃない?」
うん、ナイスアイディア。四人でやって早く終わらせて、遊びに行こう。と思ったら・・・
「三人で十分だよー。りんは遊んで来ていいよー。ア・キ・く・んと♡」
・・・(パクパク) や、やられた。さっきの三人の笑顔はこの事だったんだ。アキくんと遊びに? え? それってデー・・・あわわわ。あ、でも・・
「いやいやいや、なんでそうなるの!? 第一私アキくんの連絡先知らないもん」
「あ、平気平気ー。こんな事も有ろうかと、神鳥くんから聞いてあるから大丈夫」
「そうそう、早く電話して明日のデートの予約をしなきゃね。はい、スマホ。こんな事も有ろうかと、もう番号入れてあるから」
「アンタらはどっかの天才技術長か!」
「まぁまぁ、そんな事より、早く早く」
「て言うか、りん。アンタ高校の時も彼氏いたし、最低な奴だったけどこの間までも彼氏いたよね。その時は、普通にデートしてたじゃん。何で武内くんだけ緊張するの?」
紫乃はこのやり取りの後、私に聞いて来た。確かにその通りだ。でもよく考えると、今までは全部あっちから告白して来て、何となく付き合ってたんだと思う。今思うと、本当に好きだったのかも怪しい。坂井悠太の件はイケメンって事で舞い上がってただけと気づいた。でもでも、アキくんは・・・(照) はっ! それより。ほ、本当に掛けるの? 亜香里達はスマホを押し付けてくるし、逃げられない!?
「わ、分かったよ。掛ければいいんでしょ掛ければ。でもアキくんOKするかなー。逆に連絡先勝手に知られて怒られるんじゃないかなー」
なんか言ってて悲しくなって来た。
「大丈夫。武内くん、そんな事で怒らないと思うよー」
「うん。そこは神鳥くんに確認済み」
「りん、ちょっと考えてみて。武内くんが、アタシ達の誰でもいいけど、知らない女の子と手繋ぎデートしてるとこ」
言われて目を瞑り想像する。ヤバイ・・
「嫌・・・、アキくんの隣は私がいい・・・」(グスッ)
「でしょ? 武内くんも、イケメンって訳じゃないけど悪くないからね。早くしないと、誰かに取られちゃうよ」
想像したら涙が出て来た。アキくんの隣に女の子。しかも手繋ぎデート。そしてその後、夜景の見える景色のいい所でキ・・はわわわわ。ダメ、耐えられない。
「りんが要らないってんなら私、狙っちゃおーかなー」
「ダメーーーーっ!」
智子がなんか言って来たから、全力で阻止。うー、仕方ない、かけるか? 亜香里からスマホを受け取り、電話帳を開きアキくんの番号を探す。あった。本当に入ってた。でも・・『武内アキくん♡』・・智子の仕業か。まあいいか。なんかそんなに悪くないかも。
「うー、緊張するー。て、手が震えて上手く押せない。落ち着け、落ち着け私。こんな時は深呼吸を」
ヒッヒッフー・・ヒッヒッフー・・・。
「妊婦ちゃうわーー!!」(ボスッ!!)
緊張しすぎて、自分にツッコミながらベッドにスマホを投げつけてしまった。
「あっははははははーーー。りんと居ると飽きないわー」
「ぷっくくくく。りん、ラ、ラマーズ法って・・。なに予行演習やってんのよ。気が早すぎでしょ」
「りん、もしかして武内くんと? いつの間に中に?」(プルプル)
「そこの三人!! 笑い転げてんじゃない!!それと亜香里、私はまだ処女だよ!!」(真っ赤)
くぅ〜〜〜、は、恥ずかしすぎる。で、でもまあ、緊張が解れたのは事実だし、良しとするか。納得行かないけど。さあアキくんに電話っと。
プルル・・プルル・・プルル・・プルル・・。
アキくんが出ない。本当に番号合ってるのかな。
プルル・・プルル・・ピッ
『もしもし?』
でた! し、喋らなきゃ。
「あ、小野寺と言いますけど、武内さんの携帯で合ってますか?」
 




