第10話 探索者になるには?⑦ 花言葉は「魅惑的」「優美な貴婦人」
実習館に着いて、中に入ると俺たちが最後だったようだ。入り口付近で魔石入りのアクセサリーを受け取る。ネックレスや指輪などを選べたようだが、来るのが遅かったせいか、選ぶ余地はなかった。何が残っているのか覗いてみると、ネックレスと腕輪しか無い。俺は指輪もネックレスも苦手だったから、腕輪が残ってて良かった。六人全員に行き渡り、各々装備している。
「ネックレスね。指輪よりは良いか」
「紫乃はそうなんだねー。私は指輪が良かったなー」
「アタシも指輪が良かったかな。ネックレスは首に触れてるチェーン部分が気になって集中する時に邪魔」
「俺は腕輪が良かったけど、まあ、ネックレスでもいいか。指輪は刀を握ってると気になってくるしな。腕輪はシュウにやるよ。確か指輪もネックレスも苦手だったろ」
「よく覚えてんな。まあその通りなんだが。ありがたく使わせてもらうわ」
「アキくんも腕輪なんだ。お揃いだねー。えへへ」
なんでかな?小野寺さんが俺に懐いてる。俺、説教と脳天手刀以外何もやってないんだが?まあ、そんな小野寺さんは置いといて、授業の準備をしないと先生が来てしまう。
時間が来てドアが開くと、そこには痴女、いや魔女がいた。いやいや、よく見たら先生だった。先生、魔女ルック似合いすぎです。さっきまで掛けていなかった眼鏡を掛けて、胸元を大きく開けているし、それでいて、とんがり帽子を被らず、ローブを纏い、ゆるふわウェーブの赤髪のミニスカワンピースハイヒールロングブーツ魔女だ。ファンタジー系のマンガとかにはよく出てくる格好だけど、実際に見てみると、なんか色々際どくて直視できないんですけど。
髪をアップにした清楚なスーツ姿から一転、髪を下ろした妖艶な魔女に大変身していた。もしかしたら、得意な魔法は“魅了”かも知れない。と言うか、あのキャラにそっくりだな。もしかして?等と考えてると、女子生徒が問い質していた。
「せ、先生!?何ですか、その格好。かなりエロ・・扇状的なんですけど!?」
「あ、これね。あなた達知らない?『異世界転生したら、勇者の弟子にされました』ってアニメ。それに出てくる勇者の幼馴染で魔法使いのカトレアの格好なの。私ね、原作からコミカライズ、アニメも全部見てる位ファンなの。その中でもね、このカトレアが1番好きなのよー。なんでかって言うとね・・・・」
オタクだった。話が止まらない。どれだけ好きなんだ。なるほど、と言うかやっぱりコスプレか。ボディスタイルも顔も、カトレアってキャラそのままなんですが。先生をモデルに・・じゃ無いよね。そのまま過ぎて怖いんですが。
でも、思った通りカトレアだったか。結構人気あるみたいだしな、あのアニメ。俺も何気に原作にハマってるし。
ちなみに、そのアニメのファン同士でパーティを組み、ダンジョンに潜っているらしい。リアルロールプレイですか。それはそれで楽しそうだ。
「えっと、みんな揃いましたね。それではこれより、魔法の実習を始めます。まずは受け取ったアクセサリーを身につけて下さい。着けたら、入り口でもらった番号順に並んでください」
俺の番号は29番か。隣は誰かなっと。見ると折井さんだった。更にその隣には宮藤さんが居る。神鳥達三人は俺たちの前の列の端の方、つまり俺たちと対角にあたる位置に固まっていた。心做しか、堀田さんの顔が嬉しそうに見える。そして折井さん達に目をやると、ちょっと残念そうな顔をしている。神鳥の近くが良かったんだね。うんうん、分かるよ、その気持ち。俺が近くでゴメンね。小野寺さんはというと、こっちを見てため息を吐いている。何で?
「まずは、簡単な詠唱魔法をやります。『虚空より珠と成りて、我が前に水を現わせ。ウォーター!』」
先生が呪文を唱えると、直径30cm位の水の玉が先生の目の前に現れた。なるほど。確かにイメージしやすい呪文だったな。『何も無い所から水玉になって目の前に出てこい』って意味だったんろう。確かに別の呪文でもいけるんだろうな。と思い先生に質問した。
「質問いいですか?」
「いいですよ。何ですか?」
「今の呪文は『何も無い所から水玉になって目の前に出てこい』って意味ですよね。イメージさえ出来れば、呪文の文言は本当に何でも大丈夫なんですか?」
「ええ、大丈夫ですよ『水よ。玉になって目の前に出てこい』」
呪文を変えても、同じ様な水が現れた。一時限目の時に言ってた事は本当だったんだな。百聞は一見に如かず、とはよく言ったものだ。呪文の文言は本当になんでもいい様だ。
「これからみんなにも魔法を使ってもらいます。今見た要領でやって下さい。では、始めて下さい」
みんな思い思いの呪文を唱え始め、早い人はすでに発動していた。俺も集中してイメージを固め、呪文を唱える。
「珠水顕現!」
おー、水の玉が出て来た。初魔法発動、成功。いやー、なんか感動だなぁ。隣を見ると折井さんも宮藤さんも成功している。まあ折井さんは魔法使いだから余裕だろう。
次の段階では出した水を動かす事だ。動かし方は主に二種類。自由自在に思い通りに動かす方法と、質量兵器の様に撃ち出す方法だ。両方とも水に魔力を満たして動かすというのは同じだが、思い通りに動かす時は魔力を満たしたまま動かし、撃ち出す時は満たした魔力を後方に爆発させるイメージで撃ち出すのだ。慣れないと、結構難しい。
「はい、そろそろ時間ですので、今日はここまでです。最後に、魔法というのは基本的に全属性使えますが、個人個人で得手不得手があります。例えば属性だったり、魔法の種類だったりです。自分の苦手な部分や、得意な部分をしっかり把握して魔法を使って下さい。苦手な分野を無理に使うと、発動しないならまだしも、効果や威力が安定しなかったり、最悪は暴走してしまう場合があります。なので苦手な分野の魔法を使う時は細心の注意を払って使用して下さい。それでは、みなさんお疲れ様でした」
『お疲れ様でした』
後日、火属性魔法の授業を受けたが、普通にスーツの男の先生だった。あのコスプレ魔女教師だけが変わり者なんだろうな、うん。
もうちょっと続きます。
タイトル回収まで。
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