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夜空に咲いたひと夏の恋〜私の好きな人は片思いに悩むお客様  作者: 雪月花


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13/15

13:どうかずっとそばに


 満月の月明かりが照らす、シャロフィの街の入り組んだ路地。

 私はその1つを、リオさんに手を引かれて歩いていた。


「こっちだよ」


 彼に奥にある狭い路地裏へと、どんどん導かれていく。


 さっきから様子のおかしいリオさんが、何をしに行こうとしているのか全く分からない。

 けれど、リオさんの好きな人はお姉ちゃんではないようだった。

 そのことに心底ホッとした。


 悩みが1つ晴れて心の余裕が出てきた私は、リオさんの背中を見ながら、これから何が起こるのかを予想していた。

 

 何か秘密を打ち明けてくれる感じなのかな?

 

 大丈夫。

 どんなリオさんでも受け止められる。

 げんにさっきから、可愛い可愛いと言って私を撫で回すリオさんでも大好きだ。

 

 我慢していたとか言ってたし、案外素の自分を出してなかったのかな?


 私がそんなことを考えてクスリと笑った時だった。

 リオさんが立ち止まって私を振り返る。

 そして繋いでいる手を離した。


 ちょうど月明かりを背中に浴びるリオさんが、儚げで消えてしまいそうに見えた。




「ティアラ、言うのが遅くなってごめん。ティアラが大好きだから……どうしても繋ぎ止めておきたかったんだ。ティアラは本当の姿を見せてくれたのにね」


「え? ……それって……」

 少し勘付いた私が驚いていると、リオさんが前を向いて数歩進んだ。


 するとリオさんの体が一瞬光って、彼を中心に円状に風が巻き起こる。

 ふわりと私の髪を揺らして風が通り過ぎると、辺りは何もなかったかのように静寂に包まれた。




「……リオ……さん?」

 たまらずに私が呼びかけると、彼はゆっくりと振り向いてくれた。

 目の前の彼は、もちろんリオさんでは無くって……


「…………セシル君?」

「うん。俺も『ゲート』で変身してたんだ」

 そこにはすまなそうに私を見る、クラスメイトのセシル君が立っていた。


「…………」

 混乱した私が言葉を無くして固まっていると、セシル君が手招きした。

「こっちに来てくれないか? 俺からそっちにいくと、また『ゲート』をくぐっちゃうから」


 私は言われた通りにセシル君に近づいた。

 彼専用の『ゲート』だから、私には全然見えない。

 けれどなんだか、あのいつもの虹色の膜をくぐっている時を思い出して、辺りをキョロキョロと見渡してしまう。


 ある程度近づいた所で、セシル君に腕を取られて引き寄せられた。

 そしてギュッと抱きしめられる。

 まだ理解が追いつかないけれど、抱きしめられた感覚に〝リオさんなんだ〟と感じてしまった。

「ごめん。騙してたみたいで。でもあまりにもティアラがリオに夢中だったから、()()()だと分かったら離れていくと思ったんだ」

 

 セシル君の声が耳元で聞こえた。

 私は抱きすくめられたまま大人しく聞いていた。


「嘘も沢山ついてた。ミナスニアなんかに住んでない。友達がそこに住んで働いているから同じ()()にしたんだ。だから……離れないでってお願いしなきゃいけないのは俺のほう」

 セシル君の声がわずかに震えていた。

 私はそっと彼の背中に手を回す。


「ティアラ。君を本当に愛しているから……どうかずっとそばにいて下さい」


 懇願する彼の言葉を受けて顔をあげると、セシル君が目に涙を浮かべて私を愛おしげに見ていた。

 

 リオさんはセシル君だったんだ。

 

 その事実がじんわりと私の中に染み込んでくる。

 それと同時にいろんなことが思い起こされていく。


 私はゆっくりと言葉を発した。

「リオさんが想いを寄せていた女性は……」

「……ティアラのことだよ」

 セシル君が照れ隠しなのか、顔を伏せて私に頬を擦り寄せた。


「私? 付き合っている人がいる女性だって……」

「シド先輩と付き合ってるって思ってたから。けど前期試験の打ち上げの時に違うって分かっただろ? 花火祭りの時はまだ誤解したままだったから、ティアラからの告白を保留したんだ」


「そうだったんだ」

 いろいろなことに納得しながら、私はセシル君の胸に顔を埋める。


 打ち上げの時にシドと付き合ってないってハッキリ言っといてよかった。

 そうしないと、リオさんは誤解をしたままで、私と付き合ってくれなかったかもしれないし。

 あれ?

 打ち上げの時にセシル君はリオさんで……


「…………ってえぇ!?」

 私は重大なことに気付いて彼から体を離した。

 驚きのあまり、体がプルプル震えてしまう。


「あの時……知ってて私にいろいろ聞いたよね!?」

 

 もう私の中で目の前の彼はセシル君なので、敬語が抜け落ちてしまう。


「何が?」

 セシル君がキョトンと首をかしげる。

「打ち上げの時だよ! リオさんのどこが好きとか……これからどうなりたいみたいなことを。それって本人に言っちゃったことになるよね!?」

 私は恥ずかしすぎて顔を真っ赤にさせた。


「あー、あれも可愛かったよな。もう俺のこと好き過ぎるだろって感じで、軽く身悶えるほど」

 当時を思い出してデレデレしたセシル君が「可愛い」と言って私を撫で回す。


「!! リオさんのことだもん! セシル君じゃないもん!!」

 恥ずかしすぎて、つい意地悪な言い方をしてしまった。

「照れながら怒るティアラもまじで可愛い」

 何故か感極まったセシル君に、ムギュムギュ抱きしめられた。


「〜〜〜〜!! 今日はもう1人になりたい! ちょっと考えさせくれる??」


 私は花火祭りの時に言われたリオさんのセリフを、セシル君に返した。

 

 


 

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