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夜空に咲いたひと夏の恋〜私の好きな人は片思いに悩むお客様  作者: 雪月花


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11/15

11 :好きだから気付きたくないこと


 リオさんと無事に付き合えるようになった私は、すごくすごく舞い上がっていた。

 

 大好きな街で大好きな人と過ごせる。

 なんて幸せなことなんだろう。


 私は毎日、思いを受け止めてくれたリオさんに感謝していた。

 そして彼への気持ちが高まるばかりだった。



 

 ある日のデート中、私は手を繋いで歩くリオさんにニコニコと言った。

 硬かったはずの表情も、この所緩みっぱなしだった。

「リオさん。噂のアイスクリーム屋さんにいきましょうよ」

「アイスクリーム?」

「はい。何やら氷の魔法を使って作り出された、甘いお菓子みたいですよ」

「へぇ、気になるね。行ってみようか」

「やったぁ!」


 私たちは早速、そのアイスクリーム屋さんに向かった。

 複雑な路地を抜けて、聞いていた水色のお店を探す。

 近くまで行くと、2組ほど並んでいるそのお店が現れ、すぐに見つけることが出来た。


 私たちも並んで、順番がくるとカウンターに置かれたメニューを見る。

「味がいろいろありますね……私はこのイチゴ味にしようかな? リオさんは?」

「じゃあ僕はこのチョコレートで」

「あー……そっちも美味しそうですよねぇ」

「少しあげようか?」

「本当に? 欲しいですっ」


 そんな会話をしながら注文を済ませ、私たちはお店の前でアイスクリームを待つ。


 しばらくすると、店員さんがガラスの器に入ったアイスクリームを私たちに差し出した。

「はーい。イチゴとチョコね〜」

「ありがとう。はい、ティアラの分」

 リオさんがピンク色のアイスクリームを私に渡してくれた。


 グラスに入ったそれは、冷たいからか薄っすら白い蒸気を立てていた。

 表面がちょっとボコボコしたまあるい形状のアイスクリーム。

 

 見慣れないこの冷たいお菓子は、どんな味がするんだろう?

 

「リオさん、ありがとう」

 私はニコニコと受け取った。


 そしてお店の前にある、パラソルとセットになった机と椅子に座る。

 私は添えられているスプーンで一口すくって食べてみた。


「!! すごく冷たくって甘いですね」

「本当だ。美味しいね。こっちも食べる?」

「じゃあリオさんも一口どうぞ」

 私たちはお互いのグラスを交換して食べ合った。


「あ、ティアラ、アイスがついているかも」

 リオさんにそう言われて顔を向けると、頬についたアイスを指で拭おうとしてくれた。

 その流れで頬に手を添えて、不意打ちでキスをされる。

「!!」

「あはは。ついてないよ。キスしたかっただけ」

 真っ赤になって照れた私を、リオさんが愛おしげに見つめた。


 …………


 リオさんは、付き合ってからよく私を熱っぽい目で見てくれた。




 それはまるで、もっと前から愛されていたと勘違いしてしまうほどに……




「もう。揶揄(からか)わないで下さいっ」

 怒って顔を背けて、彼の熱い視線からも目をそらす。


 この人が大好きだから、リオさんの本心に気付かないふりをする。


 だって今、私は幸せなんだもん。


 少しの不安を打ち消すように、私はいつもリオさんに溢れる気持ちを伝えていた。




「……リオさん、大好きです」

 

 ーー大好きだから分かるの。


「僕もティアラが大好きだよ」


 ーー私を優しく見つめるその目は。


「またアイスクリーム食べましょうね」


 ーー私の中に、誰を見ているの?

 

「うん。また来ようね」


 



 私たちは見つめ合って笑みをこぼした。




**===========**


 それからも私とリオさんは上手くいっていた。

 

 海に行ったり、話題の演劇を鑑賞したり。

 夜空に流れる星を見に行ったりもした。


 恋人が出来たらシャロフィの街でしてみたかったことが、たくさん一緒に出来て嬉しかった。


 そんな2人で過ごす楽しい夏は、あっという間に過ぎて、夏季休暇も残す所あとわずかに……

 



 ーーーー


 今日は久しぶりに学園都市に戻って、エルシーと会っていた。

 カフェでまったり紅茶を飲みながら、お互いの近況を報告し合う。


 エルシーの彼氏さんは何やら難しい試験に挑むそうで、これから会える頻度が落ちてしまうらしい。

 それを彼女は嘆く訳ではなく、心から応援していた。


「受かったらいい職業に就けるからね〜」

 本当はとても心配しているのに、エルシーがひょうひょうと答えた。

「エルシーの話を聞く限り、すごく頑張っているもんね。きっと大丈夫だよ」

「ありがとう…………ティアラ、柔らかい印象になったね。悔しいけどリオさんのおかげ!?」

 エルシーが何故かとても悔しそうに顔を歪めた。


「えへへ〜そうかな〜」

「あーあ。初めての恋人に浮かれきってる。あと2ヶ月は続くかしら」

 口元が緩みっぱなしの私を呆れた目で見つめながら、エルシーが冷たい紅茶を一口飲んだ。


「でも、上手くいってるようで良かったわね。リオさんはもう好きだった女性のことは吹っ切れたの?」

「…………それは聞いてないから分からないんだけど……」

「?? どうしたの? 突然落ち込んで……」

 エルシーは不穏な空気を感じて少し青ざめた。


 私はそんな彼女に向かってゆっくりと語り始める。

「……思い違いかもしれないけど……なんだか私を見る目が……その……とっても愛がこもってるの」

「!? 悩みごとと思ったらノロケ!? ティアラって彼氏が出来るとそうなるのね……」

「違うってば。こう……誰かと重ねられているような……?」

「…………」

 エルシーが目を丸めて黙り込んだ。


 代わりに私は喋り続けた。

「付き合う前から、私が好きだって言うと異常に照れてたし」

「…………」

「付き合い当初なのに、愛情たっぷりの目線をするんだよね……」

「…………」

「やたら可愛い可愛いって言ってくるし……」

「…………やっぱり甘々なトークに聞こえてきた」

 ゲンナリし始めたエルシーを半ば無視して、私は考えていることを伝えた。


「私が……似てる?」

「リオさんの好きな女性に? ……あっ!」

 私とエルシーはお互いを指差した。


「ティアラの……」

 エルシーの囁きに私は小さく頷いて口を開いた。

 エルシーも息を吸って言葉を発する。

 

 私たちのセリフが重なった。


「「お姉ちゃん!!」」


 


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