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第一話 取引なんです。

( )内は珠生の心の声です。

< >内は珠生が使う念を使ったような声が入ります。

斎藤の声はあえて「 」にしてあります。

(ほんまめんどいことになったわ。こんなめんどいことやっぱ引き受けんかったらよかった。)


電車の中、相沢珠生あいざわたまきは、そのめんどくさいことの元凶である隣の男を横目でにがにがしげにみつめた。


「いやぁ~、相沢が見舞いにきてくれてホント助かったよ。あのままだったら俺、パ二くってどうにかなってたよ。」


「・・・・・・」


「・・・なんかしゃべってくれると嬉しいなぁ、みたいな?」


<なんで疑問形やねん。あんたは、はよ自分の体に帰れるように、大事なもん黙って考えとき!!>



思い返せば、今朝の担任の話がこのめんどくさいことの引き金だった。








「今日は朝から悲しいお知らせを皆さんにしなければなりません。」


二年三組の担任である長田(一応女)が、カバに似た顔に悲壮な表情を浮かべ話し出した。


「斎藤君が昨日の夜、交通事故にあって意識不明の重体だそうです。」


ざわついていた教室が一瞬静かになったと思ったら、いたる所から女特有のヒステリックな金切り声の悲鳴が聞こえてきた。


「静かに!!そこでみなさんに、先生から提案です。斎藤君の面会謝絶が解除されたら、クラスの皆でお見舞に行きましょう。詳しくは、おって連絡します。以上!」


長田が去ると、ざわめきが残る教室からはすすり泣く声が聞こえだした。


「かずまさぁ~ヒック・・・、来週の日曜デートしてくれるってやくそくしたのにぃ~ううぅ~。」

「一優ならきっとすぐ良くなるよ。絶対良くなるよ。」


主に、派手なギャル系グループな女子が泣いていたが、他の女の子たちも呆然としている。

なんせ、学校一の男前で人気者の斎藤一優が、事故って植物人間状態なのだ。

男も泣きはしないが、かなりのショックをうけている。


(しゃべったこともないやつの見舞とかなんで行かなあかんねん。希望制でええやろ。行きたいやつだけ行ってこいや。病院とか絶対いややし。こういう皆なでなかよしこよしの偽善は勘弁してくれや。)


その中で、一人冷たいことを考えてる女がいた。一優とはタイプが違い、大人しめなグループ(オタク多し)に入っていた珠生は、ほとんどしゃべったことがなかった一優には、あまり関心がなかったのである。


(まぁ、めちゃめちゃえぇ容姿しとるけど、うちにとっては観賞用みたいなもんやしな。)


だがそれは珠生の考えであって、特にミーハーな友達は決してそうではなかった。


「たまちゃん!!!ど、どどどどどどどーしよう!!!斎藤君が事故とかまじでうwrhjdgfhvふじこlp;ry)!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」


「まぁ、よっちゃん、まずおちつきぃーや。(こいつこないだまで「私の婿は二次元の人だから、三次元の男とかどうでもいい」って言っとったやん)」


「なんでたまちゃんはそんな冷静でいられるの!?あの斎藤君だよ!?・・・早く目が覚めてほしいよね!面会も早くいきたいよね!。ねっ、たまちゃん。」


「いや・・・うん・・ハイ。どうせみんな行かなあかんしね。」


(なに!?この圧力!?)





事故から一か月ほどで斎藤に面会できるようになったが、全員が病室に入ることは無理なので、見舞いに行く五、六人のグループをつくり、日替わりで行くことになった。今日は珠生たちのグループがお見舞に行く日なので、放課後の予定をあけて、学校の帰りに友人たちと病院にむかった。


「斎藤一優様」と書かれた個室にはいると、斎藤の母親が出迎えてくれた。


「よく来てくださいました。一優も、お友達が来てくれて喜んでいるとおもいます。」

「いえ、私たちにできることはこれくらいしかないんで・・・。」

グループを代表してよっちゃんがあいさつをしていたが、珠生は別のことで必死になっていた。


(しまったあああぁぁぁーーーー!!!目おうてしもうたあああぁぁぁ!!!大丈夫、落ち着け自分。落ち着け自分。うちはなーんも見えません。うちはなーんも見てません。)


珠生の目には、明るい茶髪で、男の色気ムンムンな寝ている斎藤の他に、もう一人の斎藤にそっくりな男が枕もとにたっているのが見えていたのだ。


「・・・・・・おい、お前相沢?だったよな。俺が見えるのか??」


声優になったら?と薦めたくなるような、低めの腰砕け美声で男が話しかける。その声も珠生以外には聞こえていないようだ。


「・・・・・・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・・・・・・」


必死になって花瓶を凝視する珠生。

その珠生を凝視する斎藤君のそっくりさん。


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ハァ・・・。」


結果、根負けしたのは珠生だった。


仕方なしに目線を合わせてやると、斎藤君もどきはそのイケてるお顔に笑顔を浮かべて話しはじめた。


「やっぱりお前俺が見えるんだな!!なぁ、相沢。俺、気がついたらここにいて、目の前に俺がいんの。これってどういうことかわかるか???」


<・・・・・・わかるよ。だってうち、見えるひとやもん。>


「てか、あれ?お前、口開いてないのにどうやってしゃべってんの?」


<うぅ~ん・・・うちも原理はようわからんねんけど、念?とかみたいなもんかな。意志の力っちゅうかなんというか。あんたもほとんど思念体に近い状態やし、体無いから声は出てへんやろ。あんたの声も似たような感じでだしてんねんで。>


「まじでっ!!!俺すげぇ!!ところで、なんでこんなことになってんだ??」


<さっきも言うたやろ。見える人です。>


「はぁ???どういうこと。」


<どういうこともなにも、あんたは事故って意識戻ってへんのや。んで、あんたは体から抜け出してもうた斎藤君の生き霊みたいなもんや。幽体離脱やな。頑張って体に戻らなこのまま眠り続けるか、悪い霊に取り込まれて消滅するかのどっちかやで。あっ!!うち、もう帰るわ。ほなバイバーイ。>


「へっ??」


「お母さん、失礼しました。」


「いえいえ、今日はほんとにありがとう。気をつけて帰ってね。」


そう言い残してさっさと帰ろうと背を向ける珠生に、斎藤はすがりつく。


「ちょ、待てよ!!!助けてくれよ!!」


<嫌やし!!キム〇クのまねすんなや!幽霊もどきの頼みごといちいち聞いてられへんわ。あんたみたいなん、その辺にうようよおんのに、助けてられるか!!自分で頑張りぃや!!>


「お前ひどいな!!モノマネとかしてねぇし!クラスメイトを助けてやってもいいだろ?」


<い・や・や>


病院の廊下を歩き続ける珠生にまとわりつく斎藤。


「なぁ、頼むよ相沢。お前しかいないんだよ。なっ?てか、ここ怖いし。なんかグロい人とかヤバそうな人とかの割合がめちゃめちゃ高ぇーんだよ。」


<病院なんやから当たり前やろ。気つけや。ヤバそうなんは、あんたより力上やからな。>


「・・・・・・・」


無表情で言い放つ珠生に、諦めのつかない斎藤は、しばらく無言で考え事をする。

そのあと、人が悪そうにニヤリと笑うと声も高々に宣言した。


「相沢が、俺を体に戻す協力しますって言うまで、付きまとってやる。朝も昼も夜もずーっとな。それこそ風呂もトイレもな!!」


<なんやて!・・・・・・うちがあんたをお祓いすることかてできんねんで。>


対抗して、口元をにやりと歪めながら珠生が言う。周りの友達が「きもっ!一人でなにわらってるのよ?」と言おうが関係ない。面倒事に巻き込まれるか、れないかの瀬戸際なのだ。


「・・・・・・相沢はそんなことできるような奴じゃねーよ。流石にクラスの同級生でしかも、体はまだ生きてるやつに、お前はそんなことできねぇよ。・・・そうだろ、相沢。」


<うっ!!・・・泣き落としがむりならお色気作戦に変更ってか!他の子たちが落ちてもうちは落ちひんからな!!!>


斎藤のいうことは図星だったし実際はちょっと落ちかけていたが、なんとかもちなおすとまた無視を決め込むことにする。


「・・・・・・相沢、俺がいることでお前も得する事があるぞ。もうちょっとで中間だよな?そんときにお前に答案教えることも可能だよな。これでどうだ?お前はテストで良い点とって、俺は体に戻る、というどっちもお得なWINWINな関係だ。」


勉強嫌いの珠生にとっては、なんとも心惹かれる取引である。


<・・・・・・・体に戻ったら、松竹庵しょうちくあんのいちご大福おごるのもオプションでつけて。>


「それぐらいなら全然オッケーだ。よし、取引成立ってことだな。これからよろしくな、相沢!ところでお前って関西弁だったんだな。ハハハハハ。」






(っで、冒頭に戻るっと。てか、テストも自分で頑張ればなんとかなるかもしれんし、いちご大福も親に頼んで買うてもらえばよかった!!こいつ元の体に戻す方が大変やん!!)


珠生は電車で帰宅しながら(斎藤もついてきた。なんでも「病院まじ怖ぇー」らしい)後悔していた。今さらなかったことになんて、自分の中で許しがたい。(カンニングは気にしない)

一人悶々と考え込んでいると、興味津津といったように斎藤が話しかけてきた。


「もう、普通に喋ってもよくないか?普通に声出す方がしゃべりやすしっていってたじゃん。あと、お前って生まれたときから変なもんみえてたのか?」


<電車内で一人で喋ってるやついたら怖いやろ。あんたは周りの人には見えへんねんから。それから、見えたり聞こえたり感じたりするようになったのは十歳の時からや。>


「あぁ、忘れてた。でもなんで急に・・・」


<忘れんなや!!はぁ、もうええわ。あんた意外とええ性格しとんのぅ。・・・・・・・そういや、あれは夏のことやったわ・・・・・・>


へっぽこ文書に時間をさいてくださり、有難うございました。

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