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怖がりな、神な妻

作者: 石川 瑠佳
掲載日:2024/01/14

 僕の妻は、神だ。僕は、人間だけど。妻の力で、年は取らない。妻は、結婚して二年後、部屋に引きこもるようになってしまった。

 僕は、びっくりした。神が、引きこもるなんて、この世界、大丈夫か?なんて、思うけど。それなりに、発展しているから、驚きだ。

 では、神なんて、この世界に必要ないのではと、僕は、複雑な思いにとらわれるのだが。引きこもっていても、何か、出しているのかもしれない。

 僕は、昭和後半に、神な妻と結婚をした。


 友だちに、ちょっと無理やりこさせられた、クラブになっている若者たちのたまり場。ダンスホール。楕円の部屋が器のような縦のカーブで階段がついた客席になっている。スポーツでも、使うのかな?そこの、あまり使われない階段に座っていたのが、妻だ。

 その時、妻は、具合が悪そうにしていた。

「世を知ろうと思ったのじゃ」と、その時の妻が言った。

「思ったのじゃ?やけに、古風な言い方ですね。親御さんの、影響ですか?」

「ワレに、親はおらぬ。なぜなら、ワレは生まれた時から、この姿。

 神、じゃからな。鶏が先か。卵が先かの、鶏なのじゃから」

 まあ、変な人だと思ったよね。普通なら、そのまま、『そうですか』って逃げるんだけど、その彼女に抱きつかれた。

「お主は、ワレにとって大地か?ワレは、お主に会うために、生まれたのかのぅ?」

 普通なら、完全に、変な女だよね。逃げるよ。

 けど、僕は「そうだよ。僕は、君の手を引き、住めるようにしよう」なんて、受け入れて。一年後に、結婚までしてしまった。


 でも、それから二年後、急に、部屋に引きこもって。そして、年号が令和になった今でも、引きこもっている。

 元々、怖がりだった妻だけど、二年までは、ビクついてでも出ていたのに。それも、ないし。



「ねぇ、出てきなよ」僕は、今日も扉の前で、語りかける。

 妻は、「うっ。そっ、そんなのは、むっ、無理っ、むっ、無理。無理ーっ。うっうーっ。

 フハーッ。んっ、うぅっ。ハアハアハアッ」

「大丈夫だよ」と、僕が言う。

 妻は、苦しみながら「うっあーーっ。ハアハアッ。駄目」

「なら、理由言ってよ」と、いつものように聞く。神だから、少しきつめでも、大丈夫だろうと思っている。

「○◑◦♝♕♠♙◁▥◥♀♖◻◦」と妻。

 ああっ、分からない。理解出来ない。

 そして、仕方がないから、僕が年を取らないのを神の力で、誰も、気にしない会社へ行き、そこそこ頑張って、仕事をする。


 でも、僕は、分かっていた。人間の理解力じゃ、神の苦しい声を聞き取るのは、すぐには無理だということを。

 そろそろだ。

 ついになんだ。

 時は、来た!!

 きっと、今日は理解出来る。


「○◑◦♝♕♠♙◁▥◥♀♖◻◦」

 ああ、無理か…。


 今日は…。

「っコラしてっ、◁◯♙◉▪なのじゃ」

 んっ、ちょっとだけ聞き取れている。まだ、分からないけど。もう、少し…。


「◐●◾▷▫なのでな。◇◉◽☆□►なのじゃ」

 あれっ、昨日より分からなくなった。でも、もう分かる感じがするんだ。僕は、妻に呼びかける。「花代(はなよ)。もっと、ゆっくり…」花代は、妻の名だ。

「▧▶◇▶□◦で、コーラなのじゃゲッピーんじゃ」

 駄目だ。難しい。よく分からない。

「もっ、もういっがい。…ンフンッ。もう、一回」

「愛していると⚀◌♗◦▷じゃ」

「えっ…?」

『愛していると…』どういう意味だ。

 もう、僕は、よく分からないが不安になって、声を出すのも難しくなって。心の中で、念じた。〈ど、どういう意味なの?〉

「早く、笑わせてくれ…」

んっ、やっと聞こえた?『笑わせてくれ』だって?どういうこと?

〈分からないよ~!!!〉と、僕は、心の声を響かせた。

「真剣に、聞け」と、妻。

「うん」

「○○○○○○なのじゃ」

 僕「えーっ???」

「この世が嫌いじゃ。愛していると、言ってくれ」あーっ、やっと分かった。でも、なんか、あと少し、意味が分からないな。

「この、世界が信じられない。君だけは、信じているから。それを、分かりやすく。愛していると言ってほしい」

 やっと、分かった。だけど…。

「花代。世の中、もっと、知った方がいい…。世の中、意外と悪くないよ」

 花代が扉を開けた。

「フンッ」と、ソッポを向く。何十年振りかで出てきて、良くない態度だ。まあ、だけど、出す顔がないのかもしれない。

「もっと、愛していると、言ってくれ。ワレは、苦しかったのじゃ」

「えっ、言ってたでしょ?」

「まあ、お主が成長してくれて嬉しい。ワレは、お主の言うことが、あんまり、分からなくなっていたのじゃ」

「ええっ!?」そりゃあ、愛する人の言うことが分からなければ、引きこもるかもしれない。

「この世は、ワレの尻尾のようなもの。この世を愛する心がなければ、ワレとお主の心は切り離されたも同然じゃ。ワレは、お主の心の世界を見ておったのじゃ」

 怖がりなのは、僕だった。神である妻に、すがっていたのだ。


「たくさん、愛してくれ」と、妻は言った。

 僕は、「うっ、うん…」と頷くしか、出来なかった。


 けど、僕は、決めた。


 今度は、僕は、花代と一緒に、ダンスホールの中央で、踊ってみせようって。



            終

愛するには、時間が必要ってことなのかな?

でも、キツ過ぎるのはどうかと思うけど、アタックは絶対、必要だよね。

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― 新着の感想 ―
[一言] 私のヨメは沢泉○ゆです。 ・ ・ ・ ・ ……あれ? もう、起きる時間? すみません、今まで寝ていました。 なので、何か寝言を言っていたとしても、それは夢の中の イベントでのセリフです。私の…
2024/01/16 23:21 退会済み
管理
[良い点] 妻は、僕の世界を見ていたんですね。 そこに愛がなかったから、引きこもってしまったんだ。 そりゃ、引きこもるよな。 愛がない世界になんて、いたくないもの。 でも、出てこられて良かったです。 …
2024/01/14 23:32 退会済み
管理
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