大賢者ローエン
「今日はちーっとお願いがあるんだけどよ、俺に付き合ってくんねぇか?」
朝食を食べ終えた時、自称天才魔術師のレインがそう言った。
「どうも研究がうまくいかねぇんで、お師さんにアドバイスもらいに行きてぇんだけど。」
「へぇ、天才さまにアドバイスできるなんて相当優れた人なのね。」
からかうように私は言った。
「優れた人物つーか。バケモンだな。ありゃ。」
「そうか、その人物ならあの魔導書を何とかできるんだな?」
私達は何度か、魔導書の力でひどい目にあっている。カイラスの言葉にレインが頷くと私達はその人物がいるという東の祠に向かった。
「こんな所に住んでるの?」
「変わり者なんでな。」
レインは頷くと大声を上げる。
「お師さん!俺だ!」
すると祠全体が光を放ち、一ヶ所穴が開いた。
「お師さん得意の結界術だ。」
そう言うとレインは中に入っていった。
「聞こえておるわ、馬鹿もんが!」
中に入るといきなり罵声をかけられる。レインは気にした様子もなくヘラヘラしている。
中は外から見たよりもずいぶん広く感じる。私の疑問に気付いたのか、レインが教えてくれる。
「魔法で中は別空間になっているのさ。」
「おぉ、これは可愛いいお嬢ちゃんじゃのう。」
そう言ってその老人はローエンと名乗った。
「チッ、相変わらず女には甘いな。」
研究室のような祠の中にソファーとテーブルが置いてあり。レインはソファーに深く腰掛けた。
「して、今日は何しに来よった馬鹿もんが。」
「これなんだけどさ。」
そう言ってレインは魔導書を見せる。
「フン、ネクロノミコンの写本か。」
「写本?」
「馬鹿もんが!本物なら気軽に持ち運べるわけなかろう。」
写本と聞いてレインが肩を落とした。
「まぁ、貴様にしてはなかなか良くやったの。」
ローエンはそう言って、写本に何か術をほどこす。
「なるほど。その術式が足りなかったのか。」
「これで魔力の地場は安定するはずじゃ。」
ローエンがレインに写本を返す。
「そして貴様。それはオームの槍じゃな?」
カイラスの槍を指差す。
「その槍はまだ完全に封印が解けておらん。ワシに貸してみぃ。」
そう言って槍にも何か魔法をかける。するとオームの槍の穂先が輝きを増す。
「さて。」
ローエンはレインに手を差し出した。
「チッ、幾らだよ?」
「十万じゃ。」
「十万!」
私とカイラスが驚きの声を上げる。しぶしぶレインがお金を支払う。
「そしてお嬢ちゃん。」
今度は私を見る。
「そのドレス、魔法で強化しておるの?」
「ええ。」
「ワシが更に強化してあげよう。」
そう言ってまた魔法を唱える。
「軽くなった?」
「ちゃんと強化もしておるぞ。」
「で、幾ら?」
「お嬢ちゃんには特別サービスじゃ。」
ローエンがウインクしてみせる。
「このジジイは。」
レインが呆れたように呟いた。
こうして私達は攻撃力と防御力をかなりアップさせて祠を後にした。
街に戻った私達は酒場でパワーアップを祝して夜更けまで盛り上がった。
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