魔剣士アスガルド1
「セイラ起きて!大変だよ!」
昼下がり、連日の疲労で私はまどろんでいた。そんな私をどこかで聞いた声が揺り起こした。
「一体何よ。」
目の前にはいつかの盗賊団の頭領レナの姿があった。
「何であなたが!」
「いいから!広場に、カイラスが大変だよ。」
私は着替えてレナと広場に向かった。すると広場に人の輪が出来ており、そこでカイラスと黒い全身鎧の人物が剣を交えていた。
「よ、来たかセイラ。」
レインはのんびりと声をかけてきた。その様子から深刻な状況ではないと分かる。
「一体何なの、この騒ぎは?」
私は隣のレナに尋ねる。
「何でだっけ?」
レナが首をひねる。
「俺達が昼飯食ってる時に、いきなりあいつがやって来たんだよ。」
そう言って親指で黒い鎧の人物を指す。
「オームの槍が欲しいらしく、決闘だとか騒いでさ、剣の勝負を挑んで来たんだよ。そしたらさ、カイラスの奴馬鹿正直に剣で戦いやがんの。槍でなら楽勝なのにさ。」
そう言ってレインはゲラゲラ笑う。カイラスらしいと私は思った。しかし剣でもかなりの腕前のカイラスと、ほぼ互角に戦っているのは鎧の人物もただ者ではない証だった。
「で、何であなたも居るの?」
再びレナに尋ねる。
「あの鎧の人がセイラ達を探してうろついてたから、教えてあげたの。あの宿にいますよって。」
私はごつんとレナの頭を叩く。
「だってぇ、困ってそうだったんだもん。」
泣き真似をするレナ。カイラス達の戦いはまだ続いていた。
「いい加減止めなさい!あなた達。」
私が叱りつけると二人は動きを止めた。いつの間にか人の輪が更に多くなって来たからだ。カイラスもそれに気付くと鎧の人物に声をかける。
「今日はこれくらいにしておこう。人目が多すぎる。」
「よかろう。だがあきらめた訳ではないからな。」
二人とも剣を収める。
「私の名はアスガルド。また会おう。」
そう名乗って鎧の人物は去っていった。
「何で槍で戦わんの?」
戻ってきたカイラスにレインが尋ねる。
「あいつがもう一本持っていた剣。アレは魔剣だったからな。それを使わなかったからだよ。」
カイラスがそう言って笑った。
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