ネクロノミコン
私の名前はセイラ、賞金稼ぎである。前回の依頼で仲間の戦士カイラスがオームの槍という、モンスターを食らう度に強くなる伝説の武器を手に入れた。
今回はその威力を試す為、難易度の高い依頼に挑戦することになった。早速朝食を食べてクエスト屋のオーウェンの所へ向かう。
「難易度の高い依頼?」
驚くオーウェンに私は伝説の槍を手に入れた事を説明した。
「ほぉ、オームの槍ねぇ。」
そう言って黒髪の戦士カイラスの手にする槍をまじまじと見た。
「で、あるのかないのかはっきりしろよ!」
しびれを切らしたのは長髪の自称天才魔術師のレインだった。
「ああ、勿論いいのがあるぜ。」
失礼なレインの言葉に慣れっこのオーウェンは一枚の羊皮紙を取り出した。早速私達は内容を確認する。ワイバーン退治だった。
ワイバーンと言えば、あの最強のドラゴンに次ぐ耐久力と攻撃力を持つ上位モンスターだ。相当手強い相手といえる。
「それで、幾らなの?」
私は勿論挑戦するつもりだった。
「二万だ。」
オーウェンが指を二本立てる。
「報酬は?」
すかさずレインが聞くとオーウェンがニヤリと笑う。
「五万だ。」
「五万!」
カイラスが驚きの声をあげる。三人共に納得して依頼を受けることになった。
私は今回鞭の他に弓矢を持つことにした。滅びた都までは距離がある為、街で馬を借りた。
滅びた都までは馬で5日かかった。都にたどり着いたのは、お昼を過ぎた頃だった。
都に入った途端ハーピーたちが襲いかかってきた。私は弓矢でハーピーたちを射落とす、更にスケルトンやゾンビなどが襲って来る。
「どういう事なの?」
私がレインに尋ねる。
「この都、魔力の地場が狂ってやがる。」
その声に苛立ちがこもる、どうやら魔法がうまく使えないようだった。
一方のカイラスはオームの槍を縦横無尽に振り回し、大活躍だった。だが何かに引き付けられるようにモンスターが集まって来る。
「チッ、しょうがねぇか。」
レインがカイラスに合図を送る。
「ま、まさか。」
私はイヤな予感を感じる。
「セイラ!この貧乏人!」
カイラスが叱り付けるようにそう叫んだ。
「び、び。貧乏はイヤアアアアァァァツ!」
私の中で何かが弾けた。私であって私でない何者かが身体を突き動かした。
「アアアアァァァッ!」
雄叫びをあげる私は、愛用のエリザベスの鞭をめちゃくちゃに振り回す。やがて周囲に動くものがいなくなった時、自分の意思で身体を動かせるようになった。
「ちょっとカイラス!レイン!自分達だけ逃げ出すってどういう事よ。」
戻って来た二人に抗議する。
「まぁまぁ、無事で何より。」
カイラスが笑顔でごまかす。そんな私達の上空に暗い大きな影がよぎる。
「チッ!おいでなすったか。」
魔法がうまく使えないレインが忌々しげに呟く。ワイバーンである。
襲いかかってきたワイバーンに、私はエリザベスの鞭で牽制し。カイラスはオームの槍で攻撃していく。レインの魔法の援護が今回期待できない。
私は鞭と弓矢を使い分けカイラスの攻撃の手助けをするが、ワイバーンの耐久力は凄まじく、激しい攻撃を繰り出してくる。
「まずいな。」
レインはワイバーンの攻撃を避けながらカイラスに耳打ちする。カイラスは頷くと私の隣に並んだ。
「セイラ、すまん。頼んだぞ。」
そう言って私の手にオームの槍を握らせた。
「この、超貧乏人!!」
「ちょ、超貧乏オオオオォォォォオ!」
また私の中で何者かが身体を突き動かした。私がオームの槍を振るうと激しい輝きを放った。
繰り出してきた腕を切り落とし、更に反動をつけワイバーンの上に飛び、そのまま首を切り落とした。
動かなくなったワイバーンと私、カイラスが優しく肩を貸してくれる。
「こいつが魔力の地場を狂わせてやがる。」
レインが台座に置かれた一冊の魔導書を手にしてそう言った。
「おそらくネクロノミコンだ。」
死者の書とも様々な魔術が記載されているとも言われているとレインが教えてくれた。
動けない私をカイラスが後ろに乗せてくれ、滅びた都を後にした。
街に戻った私達はオーウェンから報酬を受け取り、自由行動を取ることになった。
カイラスはオームの槍を鍛冶屋に持って行くと言ってたし、レインはネクロノミコンに夢中だった。私はというとベットでしばらく寝込むことになった。
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頂きますとますます頑張って書いて行けます
宜しくお願い致します。