未来は誰にもわからない〜Sideゼル〜
8月17日書籍発売!!
よろしくお願いしますッ(^ ^)
未来というものは誰にもわからないものだ。
あれだけ喧嘩ばかりしていた私の幼馴染二人も、今や仲睦まじい国王夫妻となり、三人のお子に恵まれた。
長女である現在七歳のメザレア姫。
長男であり次期国王となられる五歳のエドモンド王子。
次男で二歳のジークリア王子。
お三人とも日々健やかに成長されている。
特にメザレア姫は、ロザリア王妃の幼い頃にそっくりの天真爛漫さで、城内を明るく照らしてくれる存在だ。
が──一つだけ、問題がある。
「ゼェェェェルゥゥゥゥ!!」
来た……。
「私の愛を受け取ってぇぇぇぇえっ!!」
ガシッ!!
「ふぁっ!?」
背後右斜め四十五度の方角から突進してくるプラチナブロンドを、私は容赦なく鷲掴みにする。
最初の頃こそ遠慮して対応していたが、毎日愛を叫びながら突進してくるイノシシ娘……失礼、お転婆な姫君に、レイモンド国王陛下が「こいつ相手に遠慮はいらん」と呆れるように告げてからは、私も遠慮なくこの扱いをさせてもらっている。
「メザレア姫。城内は走ってはなりませんと何度も言っているはずです。それと、要らぬ憶測を呼ぶような発言は慎むようにとも申し上げておりますが」
私がため息をつきながら進言すると、メザレア姫はぷくっとその白い頬をまん丸に膨らませてから私をじろっと睨んだ。
「好きを好きと言って何が悪いの? お父様は鬱陶しいほどお母様に言ってるわよ? “ロザリアが好きすぎて辛い”、“ロザリアが尊い”って」
「あれを参考にしないでください」
以前のヘタレはどこへ行ったのか、陛下は今まで心の中に溜めていたものを余さず王妃様に伝えるようになった。
不安性の彼女にはそれが良かったのだろう。
陛下の鬱陶し……いや、熱烈な愛の言葉に恥ずかしそうにしながらも、嬉しそうに頬を緩ませているのだから。
それを見ていると、彼女の辛い日々は報われたように思える。
そんな陛下の拗れに拗れた末の重い愛は、良くも悪くも間違いなく長女であるメザレア姫に受け継がれている。
三歳ごろからだろうか。
私を見れば目を輝かせて駆け寄ってくるようになった。
そして繰り返される「好き」からだんだんと「愛」という言葉に変わり、遂には「結婚」を口にするようになった。
時々身の危険を感じるほどの勢いで突進して来ようとする姫の頭を鷲掴みにする日々。
顔とお転婆なところは幼い頃の王妃そっくりなのに、この愛の重さ……複雑すぎる。
「ねぇゼル、私もうすぐ8歳よ。そろそろ婚約しても良いと思うの!!」
「ダメです。まだ早いと陛下もおっしゃっていたでしょう?」
「早くなんかないわ!! だってお母様は5歳で、お父様は7歳で婚約してるじゃない。私だけまだ婚約させないだなんて不公平よ」
「うっ……」
確かにそれを言われれば何も言い返すことができない。
王妃様が婚約された時、父が驚いていたのを覚えている。
それと同時に、「先を越された」と肩を落としていたのも。
父は同じ公爵位の生まれで幼い頃からよく遊んでいた私たちを、いずれは婚約させたいと考えていたようで、王妃様がもう少し成長されるまで待とうと考えていた矢先、王家からの婚約の話が出たのだそうだ。
「ね、お父様達だけズルいでしょう?」
これでもかという程頰を膨らませるメザレア姫に、私は一度小さく息を吐いてから、私は片膝をついてメザレア姫の手を取った。
そして諭すように、ゆっくりと言葉を紡ぐ。
「メザレア姫。陛下も、王妃様も、あなたのことをとても愛しておられます。だから、あなたが本当に恋や愛を理解して、この人であればと思える方と結婚して欲しいのだと思います」
まぁ、陛下の場合、可愛い一人娘をそう簡単に婚約させたくない、というのもあるのだろうが、おそらく婚約話を未だ考えておられないのは、これが1番の理由だろう。
自分達のようにお互いの気持ちを知らないまま婚約し、すれ違って、拗れて、傷つけあってほしくないから。
だからメザレア姫が本当に愛を理解した上で、この人が、と思える人物との婚約を望んでいるのだ。
「私もそうです。メザレア姫が大切だから、急いで婚約などさせたくはない。あなたが本当に好きだと思える方と、そして、あなたのことを本当に思ってくれる方との結婚を望んでいます」
「ゼル……」
アメジスト色の大きな瞳をさらに大きくして、私を見上げる。
「そう、そうね……」
小さくつぶやいたメザレア姫。
そして──。
「だったらすぐにでもお父様のところに行きましょう‼︎」
「──は?」
何を言ってるんだこのイノシシ娘は。
「だって、私が本当に好きだと思えるのはゼル、あなただもの。私のことを本当に思ってくれているのもね。今、私のことが大切だからって言ってたじゃない」
「それは──」
「さ、行くわよ!! 未来の旦那様!!」
逃げられないよう私の腰に下げられた剣をガシリと掴んで引きずるようにして前へと進んでいくメザレア姫に、私はバランスを崩しかけながら足を進める。
「は!? ちょ、まっ、メザレア姫──!?」
未来というものは誰にもわからないものだ。
私の未来も──。
彼女の未来も──。
E N D
お久しぶりの番外編更新です!!
果たしてゼルは歳の差恋愛することになってしまうのか!!笑
ゼルは世話焼きなので、メザレアちゃんのような跳ねっ返りは合ってると思っております(*´ω`*)
8月17日発売のこの作品。
書泉さん限定特典SS付きのものもありまして、こちらはそのSSの候補の一つだったものです。
実際はロザリアを甘やかしたいレイモンドが、○○になってひたすら世話を焼こうとする甘いお話が特典になっております。
特典SS付き、又、アクリルコースター付きのものは書泉オンライン通販でもご購入いただけます!!
店舗にてサイン本も置かせていただきますので、お近くの方ぜひともぉぉぉお!!
かなり加筆もしており、レイモンドがかっこいいシーン、ロザリアが強いシーン、又、ラウルのシーンも追加されております。
挿絵も福田深先生がコメディなシーンからかっこいいシーン、美しいシーンまでとても素敵なものを描いてくださっていますので、お楽しみに!!
それでは皆様、これからも応援いただけると嬉しいです(*´ω`*)
景華




