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すれ違い夫婦の通じ合う思い

少し胃を壊しておりましてお休みさせていただいておりました;;

待っていてくださった方々、ありがとうございます。

本日、最終話までの残り6話全て投稿予定です。(活動報告には4話としていましたが、レイモンドSideを入れたら増えました(^◇^;))

最後までお付き合いいただけましたら幸いです。




「では、単刀直入に言うわ。レイモンド、離縁しましょう」

 表情を落としたまま、私が淡々と伝えると、レイモンドの時が止まった。


「え、な、何で……? やっぱり俺のことが……嫌だから……?」

「いいえ」

「だったら何で!!」

 レイモンドが声を荒げて立ち上がる。

「だって、あなたは聖女を娶りたいのでしょう?」

 なおも表情をなくしたまま発せられた言葉に、レイモンドは口をぽかんと開けて驚きの表情を浮かべる。


「っ……俺は……!!」

「最近は聖女のところに入り浸りなんでしょう? 舞踏会でもエスコートをし、二度も続けて踊っていたし。よかったじゃない、待ち望んでいた聖女が現れて。昔から、あなた言っていたものね。きっと聖女様は心清らかな乙女だ。きっと聖女様は優しくいつも穏やかな女の子だ」


 だんだんと震え始めた声に、レイモンドが息を呑む。

 だめ。

 もう少し、もう少し耐えるのよ、ロザリア。


「それは──」

「だから、離縁してあげる」


 浮かんだ涙もそのままに、にこりとレイモンドに微笑んでみせる。

 そして一粒の涙が溢れ私の頬を濡らした。

 長い片思いも、これで終わってしまうのね。


 そう少しの寂しさを感じた、刹那──、「だめだ!! 離縁なんて、俺は許さない!!」

私はレイモンドによって手首を絡めとられると、そのまま彼の腕の中へと閉じ込められた──。


 予想だにしていなかった言葉に、今度は私が驚きと戸惑いで言葉をなくし、動きを止めた。


「俺は……絶対に……」


「な、何で? だってあなた、聖女を娶りたいんでしょ? だから私はお飾りの妻で……、だからあなたは初夜を行わなくて……、だからあなたはここに帰ってこなくて……。私は、あなたが──、愛する人が他の女性と仲良くする姿を死ぬまで一生見続けていられるほど強くない!!」


 一粒こぼれたのを皮切りに、ポロポロと止めどなく続いてこぼれ出した雫。

 ダメだ。止まらない。

「っ……!! 今、なんて? 俺のこと、愛する人、って?」

 呆然と言葉を紡ぐレイモンドに、私は自分が口走った内容に気づきはっと口元を押さえた。


 言うつもりなどなかったのに、気づけば口に出していたその思い。

 それでも……もう、どうせ最後だもの。

 言ってしまえばいいわ。

 腹を括った私は大きく息を吸って口を開いた。


「えぇそうよ!! 私は小さい頃からずっとあなただけを愛していたもの!! でも、あなたは聖女のことばかり!! 私のことが嫌いなら結婚なんてしなきゃよかったのに……!! だけど……こんなに辛い思いをしても私はあなただけが好きで……だからこそもう耐えられないの!! もう私を解放して!! 私は、一人でひっそりと生きて──っ!?」


 やけくそに放たれた言葉は、出し切られることなく、レイモンドの唇に全て吸い込まれていった。


「んっ……」

 柔らかな感触が口元を覆う。

 とても強引な、初めての口付け──。

「はぁっ……」

 唇が解放され、与えられた熱でぼーっとした頭のまま目の前のレイモンドを見ると、彼はその美しい顔を真っ赤に染め上げて、私を見つめていた。


「俺だって小さい頃からお前だけが好きなんだよ!! 聖女様は、確かにすごい存在で、憧れはあったけど、それは異性への好きとかそんなじゃない。でも、何の話をしたら良いのかわからないし、女が好きそうな話題とか知らないし……。お前を前にしたら緊張して、聖女様の話しか出せなくなって……」


 小さい頃から……好き?

 私、だけを?

 頬を赤くしたまま苦しげに顔を歪めたまま、レイモンドが続ける。


「……昔、聖女が好きなら聖女と結婚したらどうかって言われた時、俺、否定しなかったろ? あれもその、売り言葉に買い言葉で……ずっと、後悔してた。でも何の弁解もできないまま、そのままズルズルとここまできてしまった……」


 後悔を?

 あのレイモンドが?

 思い出されるのは、私にひどいことを言った後の彼の傷ついたような顔。

 自分の言動にダメージを受けていたの?

 い、いやいや、でも……。


「じゃぁ、何で初夜をしないって……」

「俺だってしたいわ!! ……でも、自業自得だけど、お前は俺のこと嫌ってるみたいだったし……。無理矢理なんてしたくないし……」


 大声でとんでもない発言が飛び出たと思ったら、それからどんどん声が小さくなっていく。


「で、でも……あなた、アリサを側妃にするんでしょ?」

「するか!! 俺の妃はお前一人だ!! ……でも、そう思わせてしまったのは、俺のせいでもあるよな。アリサ殿を強制召喚した犯人を突き止め、彼女を元の世界へ還そうとしていたとはいえ、お前に何も告げることなく進め、誤解を招くようなことをしてたくさん傷つけた……。本当に、申し訳なかった……!!」


 強制召喚?

 元の世界へ?

「じゃ、じゃぁ側妃は……」

「だから、いらないんだよ。俺は、お前しかいらないんだから」

 私の張り詰めていたものがふわりと緩んでいく。


「そこらへんの説明の前に──ロザリア」


 レイモンドが私の手を引き、さっきまで自分が座っていたベッドへとエスコートする。


「ずっと悲しい思いさせてごめん」

 言いながらレイモンドは私の足元に膝をつき、じっと真剣な表情で私の涙で濡れた瞳を見上げた。


「あらためて言わせてくれ。俺は、ロザリアのことを、ロザリアのことだけを愛している。小さい時から変わらず。生涯、お前だけを愛すると誓う。だから、ロザリア……。俺と──結婚してください」


 耳まで真っ赤にした彼から紡がれたのは、紛れもないプロポーズの言葉。

 ずっと願って、夢にまで見たプロポーズ。

 望んでも絶対にありえないものだと諦めていた彼の言葉が、私の胸にスッと広がって浸透していく。


 そして私の瞳から、再び熱い涙がこぼれ落ちた。


「っ……はい……っ!! 喜んで……!! 私も、レイモンドのこと……、愛してるわ」 

 ポロポロ涙をこぼしながら、それでも私は瞳を細めて微笑む。

 その返事に安堵の表情を浮かべ、レイモンドはまた私をギュッと抱きしめ、そのままベッドに沈んだ。


「あーもう、今日は仕事とかいいや……」

 幸せを噛み締めるように私をぎゅっと抱きしめたままレイモンドがため息と共にこぼした。


「聖女のこと?」

「ん? あぁ。アリサ殿は昨夜元の世界に還したから、その報告書の作成と、宰相の処分の件、あと諸々の後処理に今追われてる」

 言いながら抱きすくめた私の頭にぐりぐりと自分の頬を擦り付けるレイモンド。


 ん?

 アリサ殿は昨夜元の世界に還した?

 宰相の処分?


「レイモンド?」

「ん?」

 とろけそうなほどに優しい笑みを浮かべて私の顔を覗き込むレイモンドに絆されちゃけない。

 思い合っていることは分かったけれど、それとこれとは話が別だわ。


「詳しく、一から話、聞かせてくれるわね?」


 私はレイモンドの腕から抜け出すと、彼の顔の両サイドに手を付き、逃げ場を奪うと、にっこりと微笑んだ。


「え、ちょ、ロザリアさん?」

「き、か、せ、な、さ、い、ね?」



ずっと書きたかったイケメンロザリアの壁ドンならぬベッドドン!!

ずっと……ずっとやりたかったんです……!!


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