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たどり着いた犯人〜Sideレイモンド〜


 ロザリアが実家に帰った──らしい。


 俺、何も聞いてないんだが!?

 慌てて公爵家に行こうとしたら、ゼルとランガルに「あんたはバカか」と止められた。

 明日は帰ってくるから、その前に終わらせるぞ、と。

 

 だから、留守番を言い渡されたらしいゼルには朝からラングレス宰相宅に潜入してもらっている。もちろん内密に。

 そしてその間の宰相の相手を、俺は父上と母上に頼み込んだ。

 父上はずっと母上を巻き込まないようにしていたが、もう知らん。

 全てを聞いた母上は、もちろんツノを生やしてぎろりと父上を睨みつけていたが、ロザリアのためにも、と協力してくれた。

 

 宰相にはもうずっと前から疑惑がかかっている。

 だから、父上と母上には厳重に護衛をつけた上で細心の注意を払ってもらう。

 何もないならそれに越したことはないが、念には念を入れて騎士団長にも事情を説明し、何かあった時すぐに動けるよう指示をした。


 そしてランガルにはもう一人の疑わしい人物であるドーリー侯爵の屋敷へと行ってもらっている。

 ランガルにはほぼ毎日のようにドーリー侯爵宅へわざわざ侯爵が不在時を見計らって訪ねさせていて少しずつ調査を進めていたが、残る調査場所は後1箇所。

 今日で全て終わるだろう。


 さて……どちらで何が出てくるか……。


 俺はアリサ殿の部屋の隣で報告を待ちながら、他の誰かが訪ねてこないか監視をしつつ、他の自分の仕事も進めていく。

 この生活も2週間とちょっと。

 ここらで終わらせねば……。


「……殿下。晩年って感じっすよ、その顔」

「!! ランガル!!」

 突然入ってきたランガルに驚いて思わず勢いよく立ち上がると、その拍子に椅子が倒れ大きな音が部屋に響く。


「あーあー、何やってんすか。殿下、ただいまっす。ドーリー、白でしたよ。強いて言うなら、対殿下用の釣書がたくさん用意してあったくらいっすかね」

「……うわぁ……」

 その情報は聞きたくはなかった。

「ランガル、ご苦労だった。ドーリーが白、ということは……」

「黒はこちらでしたね、殿下」

 また別の声がして視線を向けると、扉に手をかけてゼルが立っていた。


「失礼します」とランガルと大違いで律儀に断ってから部屋に入るゼル。

「ゼル!! もう終わったのか!?」

「えぇ。客として出向いて、待っている間に理由をつけて散策する正攻法ではなく、反正攻法で無断侵入させていただきましたし、あらかじめ屋敷の見取り図を入手し、怪しげな場所に目星はつけていましたので」


 今朝作戦を言い渡したのになんでこんなに用意周到なんだこいつ。

 さすがゼルというか、なんというか……。


「で、何か出たか?」

「えぇ。何重にも厳重に魔術で施錠された部屋の中に、召喚陣がございました。まったく……何人の命を使って作ったのか……」


 本来この世界の危機に現れるという聖女。

 こちら側から強制召喚することもできる。

 ただそれは、多くの命を贄にしなければならないゆえに、禁術として、方法の書かれた書物は宝物庫で封印していたというのに……。


「それともう一つ」

「もう一つ?」

「えぇ。遅延性の毒の研究もされていたようで、毒入りの瓶が数本と、研究日誌のようなものも発見されました。……王妃様や国王陛下のことも書かれていましたので、十分な証拠になるかと……」

「!!」


 父上と母上の!?

 受け取ったものをパラパラとめくって中身を確認する。

「っ……これは……!!」

 証拠の残らない毒……。

 それにこの文章……。

 間違いない。

 母上や父上の件も、宰相だ……!!

 俺はそれをランガルに預けると、ゼルに向かって口を開いた。


「……ゼル。騎士団長は動けるな?」

「はい」

「よし──。ではゼルと騎士団長で第1隊を率いて宰相宅で陣を潰せ!! オレとランガル、それに第2隊は、すぐに宰相を拘束するぞ!!」

「「はっ!!」」




 ──ランガルを連れて、俺は父上と母上が宰相を引き止めている城の中庭にあるガゼボへと向かう。

 早足で、でも気づかれぬように。


 騎士団の第2隊には、中庭の出入り口を、中に気づかれず封鎖するよう指示を出した。

 これで終わる。

 ロザリアのそばにいられる。

 そう思うと、早る心が抑えられない。


「そういや、神官長が、夕刻には【例のやつ】完成するって言ってましたよ」

「何!? お前……なんでそんな大事なことを今……」

「いや〜、なんか忙しそうにしてたし、俺も最後の家探しですっかり忘れてたし……」


 適当か!!

 はぁ……まぁいい。

 【例のやつ】──神官たちが極秘に描いてくれていた聖女様を元の世界にもどすための陣。

 召喚にはたくさんの人間の命を捧げねばならないが、還す方にそれは必要ないというのは助かった。


 だが、神官たちの聖なる力を何日も使っての作業だ。

 彼らには後でしっかりと休息を与えねばなな。



 ──この門をくぐればガゼボだ。

 先に門の前で待っていた騎士達に目くばせをすると、俺はランガルと騎士達を引き連れ、談笑中の3人の元へと歩みを進めた──。




次回決着!!


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