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物語のあるべき姿に〜Sideアリサ〜


 朝からいつもの通りに学校に行って、帰ってからおやつを食べながら本を読んでいたはずだった。


 突然眩しい光に包まれたと思ったら、私は知らない場所にいた。


 最初はどこだか分からなくて戸惑っていたら、すっごくかっこいい男の人が声をかけてくれたの!!

 その人を見て驚いたわ。

 だって、私が読んでいた本のヒーロー、レイモンド様なんだもの!!

 私と同姓同名のヒロインが聖女として召喚されて、超美形の王太子レイモンド様と恋をするラブストーリー。

 挿絵のヒロインもどことなく私に似てて、お気に入りだったのよね。


 ──異世界転移。

 まさかヒロインと同姓同名である私が、この世界に異世界転移をするなんて。

 もしかしてあの本、こうなることを予知していた魔法の本だったのかしら!?

 可愛いドレス、綺麗な宝石、美味しい食事。

 これからここが、私のお城になるのね!!

 

 喜んだのも束の間、なんとレイモンド様は、あの悪役令嬢ロザリアと結婚しちゃってたのよ!!

 嘘でしょう!?

 確か本では、婚約中に転移して、悪役令嬢とは婚約破棄するのに……!!


 私はどうにか本の通りに物語を動かそうと、レイモンド様に「心細いからずっと一緒にいてほしい」とお願いした。

 でもレイモンド様ったら「心細い気持ちはわかる。なるべく早く元の世界に戻れるよう、努力しよう」って、全く私の気持ちや言葉の意味すらもわかってない様子だし。


 「心細いから朝は一緒に食べて欲しい」と言うお願いも、「この世界のことを教えてほしいから部屋に来てほしい」というお願いも叶えてくれた。

 だけど「不安だから夜も一緒にいて」と言うお願いは、絶対に叶えてくれない。


「俺にはロザリアがいるから、それはできない」って。

 そればかり。

 こんなに可愛い女の子が目を潤ませてお願いしているって言うのによ!?

 ありえない。


 なんなのこの人……枯れてるの?


 「舞踏会でエスコートして欲しい」っていうお願いも「もう一回踊ってほしい」ってお願いも叶えてくれたから、そんなことはないわよね?

 それでも踊っている最中、レイモンド様は一度だって私の目を見てはいなかった。

 ずっとロザリアの方を見ていたのを、私は気づいてしまった。


 なんで?

 おかしくない?

 物語の修正ができてるのかできてないのか、全くわからない。


 初代聖女のお墓参りをするとかっていうのも一緒にはきてくれたし、お茶会だって一緒に参加してくれた。

 だけど、そのお茶会は最悪だったわ。


「ロザリアは俺の唯一の妻だ。そのロザリアの敬称だけ“さん”付けなのは不敬に当たるし、ご婦人方の苦言だってその通り。ダンスを二度続けて踊るのは本来妻や婚約者とのみだ。ロザリアはお堅いんじゃない。立派な王太子妃であり、俺の【唯一】であり、大切な妻だ」


 怒っていた。

 あのいつも優しいレイモンド様が、低い声で私たちを睨みつけて。


 もうなんなのよこの世界!!

 全然物語通りにならないじゃないの!!


 でも、どうやらロザリアは今日から実家に帰ってるみたいだし、これはチャンスよ。


 絶対にレイモンド様を手に入れて見せるんだから!!


 レイモンド様と結婚するのは私よ。

 多少強引にでも、物語をあるべきものに戻さなきゃ!!



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