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妻の離縁先候補と夫の未来予想図


 今日は結婚して初めての二人揃って行う公務の日。

 私たちは王都にある孤児院へと慰問に向かった。


「いいか。仲良さそうに振る舞うんだぞ?」

「わかってるわよ」

「う、腕とか組むんだぞ?」

「だからわかってるってば」

「夫婦だからな!!」

「わかってるって言ってるでしょ!!」


 思わず馬車の中で大声をあげてしまうほどに念入りに打ち合わせをして、長い歴史のある王都孤児院へと到着した。

 レイモンドのエスコートで馬車を降りるとたくさんの子供たちが目をキラキラさせて私たちを待っていた。

 か……可愛い……!!

 下は0歳、上は18歳までの男女それぞれの子供たちがずらりと見守る中、私たちは中央の院長へと挨拶をする。


「出迎え、感謝する」

「王太子殿下、王太子妃殿下、この度はご結婚おめでとうございます。早速足をお運びいただき、感謝申し上げます」


 髪をお団子にして束ね上げた、歳は50ほどの女性院長が私たちにそう言って礼をした。


「【妻】のロザリアだ。これから視察に来ることもあるだろう。よろしく頼む」

 【妻】を強調された紹介に、私も【妻】として微笑み挨拶をする。

 仲良し夫婦アピールしろよって念を押してるつもりなのかしら。

 意外としつこいわねこの男。


「初めまして、妻のロザリアです。私、子ども大好きなの。だからここへ来ることができてとても嬉しいわ。これからよろしくお願いしますね、院長。そしてみなさんも」


 私はあらためて、出迎えてくれた子どもたちをぐるりと見渡す。

 院のシスターに抱っこされる乳幼児達。

 御伽噺ではなく本物の王子様とお姫様を前に、興味津々な年齢が上の子ども達。


 可愛いわ。

 早く交流したい。

 そうだわ!!

 ここでしっかりと交流をしておいて、離縁された際にはここでお世話になればいいのよ!!

 そうね、そうと決まったら、しっかりとパイプを作るわよ!!



 それから私たちは、院長に施設の案内をしてもらうことになった。


 中庭では幼い子ども達が芝生の上を駆け回り、それぞれ遊びに興じていた。

 すると一人の3歳程の女の子が私のところまでやってきて、じっと私を見上げた。


「おひめさま、いっしょにあそぼう?」

「こ、これ、おやめなさい」

 その小さなお誘いに、院長や護衛たちが慌てて女の子に駆け寄ろうとするのを私は手で制した。

 そして女の子の目線までしゃがみ込んで「良いわよ。何して遊ぶ?」と笑顔を向ける。

 

 当然ながら辺りは騒然。

 あのレイモンドですら目を丸くして隣でしゃがみ込む私を見下ろしている。

 そうね、孤児院の子どもと遊ぼうとする貴族や王族なんていないものね。

 でも、この子は未来の私の家族同然。

 今のうちに親しくしておきたいのよ私は。

 だから邪魔しないで。


「ん〜と、絵本を読んで欲しいの」

 そう言って差し出された絵本に、私は目を大きく見開いてそれを凝視した。


【王子様の宝物】


 私も小さい頃すごく好きだったのよね。

 幼馴染のお姫様を大切に見守り続ける王子様のお話。

 私もこんな風に大切に愛されたい、そう思いながらいつも読んでた。


「いいわよ。じゃぁあそこの影にいきましょう」

 私は女の子の手を取ると、隅っこの木の下へと座った。

 ずらずらとついてくるレイモンドと護衛達。


「皆を待たせちゃうから、一回だけね」

 そう言って女の子を膝の上に乗せると、私はその絵本を懐かしさを感じながら開いた。

 レイモンドはなぜかずっと、私が読んでいる間も私から視線を逸らすことはなかった。

 ……監視かしら?

 まさか、ここを追放後の居場所にしようとしているの、勘づかれた?

 大丈夫。

 あなたの聖女が見つかるまでは、私はお飾り王太子妃として仕事をしっかりこなすから。


 絵本を読み終えると、次は私、次は僕、と寄ってきた子ども達に「またゆっくりここにくるから、その時にね」と約束をして、院長室へと通され、院の内情について話を伺うことになった私たち。


 院長が資料を持ってくる間、部屋の中には私とレイモンド二人だけになった。

 さっきからずっとソワソワと落ち着かない様子のレイモンドに、私はため息を一つついて「何か?」と尋ねた。

 言いたいことがあるならはっきり言えばいのに。

 いつもみたいにいらない言葉付きで。


「あ……えっと……お前、子ども、好きなのか?」

 歯切れの悪い唐突な問いかけ。

 一体何が言いたいのか。

「えぇ、好きよ」

 短く答えたその言葉に、レイモンドがグッと息を呑む。

「す……好きなのか……じゃ、じゃぁ、欲しいとか……思ったりするのか?」

「そりゃ欲しいと思ったことだってあるわよ。可愛いもの」

 まぁ、そのうち孤児院に来たら叶うけどね。

 子ども達に囲まれた生活。


 私の答えを聞いてなぜかパァッと明るい表情を見せるレイモンド。


「そうか……!! 欲しいのか……そうか……」


 何この人怖い。

 レイモンドは院長が戻ってくるまでの間、しばらく自分の世界に浸って呟いていた。





本日の更新はここまで♪

皆様たくさんのブクマ登録&評価ありがとうございますぅぅぅっ!!

皆様の応援のおかげで、日間異世界恋愛ランキングに載っておりますぅぅっっ!!!


これからも犬猿結婚を、ヘタレイモンドをよろしくお願いします!!笑

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