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ロザリアと離縁とか無理〜Sideレイモンド〜

ヘタレ、フルボッコにされる、の巻。笑



「アホなんすか?」

「開口一番それかランガル。俺は仮にも王太子だぞ、仮にも。」

「すいません。つい漏れました」


 少しも悪びれることなく言う目の前の護衛騎士をひと睨みしてから、「はぁ……」とため息をついて、俺は執務机に突っ伏す。

 ラインハルトとの話の後、つい小説の中身を演じ切ってしまった俺は、ロザリアに愛の言葉を吐いていた。

 ──のはいいんだが、役を演じるようにセリフを喋っていたために、ロザリアへの愛の言葉ではなく、物語のヒロイン【ルクレツィア】への愛の言葉になってしまった。


 最悪だ。

 ロザリアに愛していると言えたのはいいが、その後『小説の』とはいえ別の女の名前を呼ぶなんて。

 あれからロザリアが話をしてくれない。

 こっちが謝っても何を言っても聞いているのかいないのか、俺を見ることなく黙々と食事をとってまた自分の執務室へと帰って行ってしまった。


 これはまずいと思った俺は、自分の執務室で書類整理そっちのけで、護衛騎士であるランガルに話を聞いてもらっていたと言うわけだが……。

 聞き終わったランガルからは無情にも「アホ」呼ばわりされた。


「流石に『愛してる』の後に他の女の名前呼ぶとか、愛想尽かされましたって、絶対」

「うっ……!!」

「ていうかセリフじゃなくて自分の言葉で愛してるが言えないとか、男としてどうなんすか?」

「うぐっ……!!」

「そういえば最近王太子妃殿下って、殿下がアレな発言してても突っかかったり喧嘩腰になることないっすよね。前は犬猿の仲ってのがぴったりなくらい、お互いに言い合ってたのに」


 そう言えばそうだ。

 初夜の時に少し不機嫌そうに言い返してきたくらいで、後は特段何か言ってくる訳でもなく、会話が流れていく。


「仲が進展した、ってことか?」

 だとしたら嬉しい。

 が、次のランガルの言葉で俺は地獄に叩き落とされた。


「いや、言っても無駄だと見切りを付けられたって方が有力な気がするっす」

「ぐあぁっ!!」


 こいつ、俺に何か恨みでもあるのか!?

 絶対俺のこと嫌いだろう!?

 ゼル帰ってきてくれ!!

 やっぱり俺は、無愛想だけどこんな言葉の刃でグサグサ刺してこないお前の方がいい!!


「殿下、普通でいいんじゃないんすか?」

「普通?」

「殿下は王太子妃殿下が好きで好きで仕方ないけど、意識すればするほど聖女様と比べて(けな)すような真似しちゃったり、聖女様のうんちくしか話せなくなったり、嫌われるようなことばっかりしちゃうでしょ?」

「きら……ッ!! ま、まぁそうだが……」


 全く思っていないのにロザリアを貶すようになってしまうのは、確かに嫌われても仕方がないのかもしれない、とは思う。

 て言うか絶対嫌われるよな、あんな態度続けてたら……。

 あぁ、なんかどんどん鬱になってきたぞ。


「なら、普通にしてたらいいんすよ。好きな人のこと意識するのは普通のことです。俺だって好きな女のことは意識して目も合わせられない時期だってありました」

 想像つかんぞ。

 こいつ女と見れば声掛けまくるタイプだろ。


「とりあえず、意識を別の方向にずらすんす!!」

「意識を別の方向にずらす?」

 さっぱりわからん。

「わかるように言え」

「だぁーかぁーら!! 王太子妃殿下を意識するよりもまず、聖女様の話を極力しないっていう方に意識を向けるんす!!」

「聖女様の?」

「そう!!」

「だ、だが、ロザリアの可愛らしい表情や言葉を聞くとつい出てしまうんだ」

 最悪の形の照れ隠しが。


「殿下」

 ずいっと俺の方に顔を寄せてじっとりと睨みつける護衛騎士。

「な、なんだ」

「王太子妃殿下に離縁を突きつけられたいんすか?」

 ロザリアに……離縁……だと……!?

「いやだ!!」

 無理。

 絶対無理。

 ロザリアじゃないと無理。

 ロザリア以外の女とかいらん。


「なら、聖女様を禁ずることに意識を持っていくことっす!! そうすれば、自然に話ができるし、距離だって縮まるはずっすから!!」


 距離が?

 ロザリアとの距離が縮まる、のか?


「……わかった。努力してみる」

 ロザリアを?普通に夫婦をやっていけるなら。

 ロザリアが俺をこれ以上嫌わないでいてくれるようになるなら。

 変わってみせる。

 必ず!!


「んじゃ、とりあえず恋愛小説の読書は続けましょうね」

「何でだ!?」

 あれが今回の諸悪の根源だぞ!?

 俺に他の女の名前を呼ばさせた書物だぞ!?


「殿下は圧倒的に女心の機微(きび)(うと)いので、恋愛小説で勉強しましょう」

「うぐっ……」

 そう言われては返す言葉もない。


「それに……」

「それに?」

 まだ何かあるのか?

 もう俺の心はボロボロだぞ。


「恋愛小説を借りにきたって言う、王太子妃殿下のところに行く理由ができるじゃないっすか」

「!!」

 仕事中のロザリアのところへ行く……理由!!

 そうだ。

 それを会話の糸口にすることだって……。


「ランガル、お前、天才か」


「殿下頑張ってくださいよ!! 俺、応援してるっす!!」

「あぁ!!」


 変わった俺を、これからの態度で示す!!


 待ってろよ、ロザリア!!



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