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ゼルへの告白

昨日、異世界転移日間異世界恋愛ランキング20位まで上がりました!!

ありがとうございますぅぅぅっ!!!!

これからも応援よろしくお願いします!!


「ねぇゼル。私、新婚旅行行きたくない」


 朝の執務室で、机に顔を突っ伏すという王太子妃らしからぬ体勢で私が唸る。


 朝はレイモンドが起きる前に起きて、逃げるようにして着替えて出てきた私。

 朝食も執務室でさっき一人でいただいたし、只今絶賛避けまくり中だ。

 だって今顔を合わせたら私、また喧嘩腰になっちゃいそうだもの。


「……場所、ですか?」

 私が言っていることを理解したようにゼルが呟く。

 さすが小さい頃から一緒にいる幼馴染。

 察しが良いわ。


「よりにもよって聖女伝説の地なんて……」

「ですが、国民の関心が王太子夫妻の新婚旅行先や、お世継ぎに向いているというのは事実です。国民の声に耳を傾けるのは大切だと思います」


 そう。

 国民の声に耳を傾けるのは大切。

 それは至極真っ当な意見よ。

 でもね……。


「白い結婚の私に、そんなお世継ぎなんてできるはずないのに……」

 不貞腐れたようにぽつりとつぶやいた言葉に、ゼルがこれでもかというほどに目を見開いて「は?」と愕然と声を漏らした。


 あ、言っちゃった。

 でも良いわ、ゼルだもの。

 彼以上に口が固くて誠実な人はいないし。


「実はね……」

 私はゼルに、初夜での出来事を話した。


 私とは初夜をする気はないと言われたこと。

 だけど王太子妃として、パートナーとして、ともに国を良くしていくと話をしていること。

 そしてその上で、昨夜のレイモンドとの話も全て話した。


 話していくにつれて、ただでさえむっすりと眉間に皺を寄せているゼルの眉間にさらに深く皺が刻まれていった。

 何だろう。

 ものすごい殺気を感じるわ。


「あんのクソヘタレ……」

 ボソッと低くつぶやいたゼル。

 今クソヘタレって言った!?

 き、気のせいよね?

 あのいつも穏やかで優しいゼルがそんなこと言うはずないわよね!?


「コホンッ!! ……まぁでも、レイモンドの言うこともわかるのよね。私、可愛げがないもの」

 王太子妃然りとした態度をするようにと5歳の頃から教育を受けてきた私は、甘えることもできない、愛想を振り撒くのだって苦手、ものすごく女性として可愛げのない人間になってしまったもの。


「ゼル、私ね、聖女が現れるまでの繋ぎでも、精一杯胸を張って彼の隣にいたいとは思うの」

 私が机に顔を預けたままゼルにそう言うと、彼は持っていた書類をその机の上に置いてから首を傾げる。


「聖女が? ですがそんなものは……」

「起こり得るのよ。……ゼル、私ね、前世の記憶があるの」

「前世の──記憶?」


 驚いたように声にするゼルに、私は身体を起き上がらせてコクリと頷く。


「えぇ。前世で私は、この世界のことを物語で読んだの。レイモンドはその物語のヒーローで、ヒロインは……この世界に突然召喚される聖女。私……ロザリアはそんな二人の間に入ったお邪魔な悪役令嬢。もともと聖女を崇拝していたレイモンドは、私と結婚する前、突然この世界に召喚された聖女に心を移し、私は身に覚えのない罪を着せられて婚約を破棄され、追放されるはずだった……」


 そう、【はず】だった。

 それならまだ、すぐには無理でも、こういう物語だから仕方がないと諦めがついたのに。


「はずだった、とは?」


「なぜか聖女が現れないまま、流されるがままに結婚してしまったの。……まぁ、結婚した結果があの無機質な結婚式と初夜なんだけど……」


 結婚までさせて期待を持たせるなんて、なんて意地悪な神様なのかしら。


「でしたら、聖女も現れないままなのでは? あなたは気兼ねなく、王太子殿下と──レイモンドとともにあればいい。幸せになれば──」

「現れるわ」


 ゼルの言葉を遮って、私は確信したように声を落とす。


「いつかその日が来てしまう。私は──それまでの繋ぎでしかないのよ──」


 諦め悟ったようなその声が、執務室に静かに響いた。


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