六話
アリス「で、絶賛悩んでる所よ」
パチュリー「ちょっと詰まっちゃったのよねぇ……」
はあ……、とため息をつく二人。
アリス「なんかない? なんでもいいわ」
俺「そんなこと言われてもなぁ……」
魔理沙「弾幕で力比べとかどーだ!?」
フラン「攻撃側と避ける側に別れて戦うとか?」
レミリア「フラン……それ絶対攻撃側にしか行かないわよね」
俺「うーん……」
戦闘ルール……ってもなあ。
魔理沙「んなに悩まんでいいぞ、ウミタカ!思いついたことバーっと言えばいいだろ!」
レミリア「それあんたの悪いクセよね」
パチュリー「レミィも、なんかない?」
レミリア「そんなこと言われてもねぇ……」
パチュリー「うーん……」
アリス「今日は決まりそうにないわね」
魔理沙「じゃあ、遊ぼうぜ!な!」
レミリア「あんた遊びたいだけでしょ」
俺「あはは……」
テンションMAXな魔理沙と目があったフランが魔理沙に近づいて……。
フラン「遊ぶの?魔理沙」
魔理沙「んっ……んー……あー……えー……」
言葉に詰まる魔理沙。
そりゃそうだよなあ……さっきあんなに疲れてたし。
アリス「自業自得よ」
魔理沙「や、やめろぉ……そんなキラキラした目で見てくんなあ」
レミリア「はぁ……フラン?」
フラン「なあに?」
レミリア「フラン」
フラン「……なんだよ?」
レミリア「やっと出てきた、魔理沙で遊ぶのもそこまでにしなさいな」
フラン「チェッ。魔理沙、また遊んでくれよな」
魔理沙「また、今度な……はあ」
フラン「じゃ、部屋に帰るわ」
な、なんだ?この変わりようは……さっきと全然雰囲気が違うぞ?
パチュリー「フラン!これ新しく入った本よ!まだ読んでないでしょ?後で持っていくから読んだやつは持ってきなさいね」
フラン「はいはーい」
フランは後ろ手に手を振って図書館を出ていった。
俺「なんだ?あの変わりようは?」
レミリア「説明したほうがいいかしら?あの子、私の妹であるフランは495年間地下の部屋に居たのよ」
パチュリー「最初は能力の暴走を危険視して閉じ込めてたんだけど、あの能力じゃ直ぐに脱走しちゃうし。
そんなことを繰り返していると段々と能力の使い方に慣れてきたのか、暴走の回数は減ってきたのよ」
咲夜「それから妹様は能力の使い方をマスターしたのです。なので私達も閉じ込める理由はなくなったのですが……」
レミリア「そもそもの話、外に出る必要がないことにあの子が気づいたのよねぇ……。
私たち姉妹は吸血鬼であるから日光の下には出れないし、流水がだめだから雨の日は出れないし」
パチュリー「そこで目につけたのが私のこの図書館、あの子魔導書に興味を示してきたのよ」
アリス「で、最近はどこから見つけたのか自身の人格を増やす魔法を使ってるのよ」
魔理沙「あいつ、小さい頃は暴走を懸念して閉じ込められたからなぁ……。能力に慣れて暴走がなくなった頃にゃあもう性格というかなんというか、達観したような感じになっててよお。
その鬱憤を幼い人格に晴らさせてんじゃね?」
俺「そう、なのか」
アリス「もう!そんな暗い顔しないの!過ぎたことなんだから笑えばいいのよ!」
俺「お、おう」
アリス「もう!レミリアのせいでウミタカ暗くなっちゃったじゃないの!」
レミリア「え、私のせい?」
俺「ぶふっ……ははっ!」
なんだよ、コントかよっ!やべ、ツボった!
アリス「案外笑いの沸点浅いのね、ウミタカって」
笑いすぎて腹筋崩壊気味の俺にそう声をかけてくる。
俺「るっせ!ふっ……ふふ……」
やべ、まだ笑いが……。
パチュリー「はあ……今日はこのくらいにしましょうか。アリス、また明日話し合いましょ」
アリス「そうね……魔理沙、ウミタカ出るわよ」
レミリア「次はどこに行くつもり?」
魔理沙「決めてない!ウロウロ歩いてたらどっかつくだろ!」
咲夜「大雑把ねぇ……白玉楼にでも行ったらどう?」
レミリア「あら、咲夜がそんなこと言うなんて……珍しい提案ね?」
咲夜「ええ、まあ……最近買い物してるときにバッタリ会いまして。従者同士、話が合うのですよ」
レミリア「そうだわ、ウミタカ!あの子に鍛えてもらったらどう?」
アリス「あら、いいわね。能力に慣れることに越したことはないわ。
暴走なんてことはないだろうけれど、自分のできることは把握したほうがいいわ」
魔理沙「お、そうだな!」
俺「な、何の話だ?」
アリス「そうねぇ……着いてからのお楽しみよ!私から話は通しておくわ。上海、お願いね」
???「シャンハーイ」
俺「今のは……?」
アリス「私の人形よ、白玉楼にお使いさせたのよ。まあ、喋れないからメモを持たせてね」
レミリア「ねぇ……こっちのこと、忘れてないかしら?まあ、いいわ。早く行きなさいな」
パチュリー「コイツもちゃんと連れてきなさい。ウロチョロされて邪魔なのよ」
魔理沙「なにをするぅ!離せぇ!」
アリス「魔理沙……ほら、行くわよ。じゃあね、パチェ」
魔理沙「レミリアもまたなぁ!」
俺「で、白玉楼ってなんなんだ?アリス」
アリス「幽霊の集る館、白玉楼。館の主の名は西行寺幽々子、そして半人半霊の剣士の魂魄妖夢」
魔理沙「その妖夢ってのがさっきレミリアが言ってた鍛えてもらえばってヤツさ」
アリス「そうね……いいと思うわ。あの子なら手加減もできるだろうし、どこかの誰かさんと違って」
俺「……」
アリス「あら、どうしたの魔理沙?気まずそうな顔しちゃって?」
魔理沙「べ、別になんでもねぇよ」
アリス「そうかしら?」
俺「な、なぁアリス……もしかしてこの階段登るのか?」
アリス「そうよ?ここを登れば白玉楼、さあ行きましょ。どうせ飛べるんだし」
俺「あ。あぁ……そうだったな」
魔理沙「なんだウミタカ、自分の能力でも忘れてたのか?」
俺「いや、ハハハ」
アリス「そんなわけないじゃない、ね?ウミタカ?」
俺「あ、ああ」
魔理沙「しゃっ!いっちょ飛ぶか!」
アリス「よろしくね魔理沙」
魔理沙「アリスは自分で飛べよ!」
アリス「……はぁ、しょうがないわね」
俺「アリスも飛べるのか……?」
魔理沙「おう、そうだぜ。コイツ案外面倒くさがりだかんな」
アリス「そんなことないし〜?」
魔理沙「ハハハッ!」
俺「えー……?」
アリス「ほら、行くわよ」
俺「へいへい……フンッ!」
魔理沙「おし、翼が出てきたな」
俺「そういえば、俺のこの羽根なんの鳥なんだ?」
魔理沙「さぁ?」
アリス「と、着いたわ。ここよ」
長い階段を登りきり大きな桜の木が目に入る。横に目を滑らせると庭の先、和風とも洋風とも言えない屋敷の縁側に誰か座っていた。
こちらに気がついたのか、地に足をつけ俺たちに近づいてくる。
魔理沙「よっ!」
妖夢「いらっしゃい、魔理沙。それと……アリス?珍しいね」
アリス「そうね、私はあんまり外に出ないし」
妖夢「それで……あなたは?」
俺「俺はウミタカ、紫に呼ばれてここ幻想郷に来た。よろしくな……えっと、魂魄さん?」
妖夢「ウミタカさん……ですか。妖夢でいいですよ、敬語も抜いていいです」
俺「そ、そうか……」
妖夢「それで?三人はどうしてここに?」
アリス「ウミタカを鍛えてもらおうと思ってね」
妖夢「先程のメモですね。と言っても、どうすれば?」
魔理沙「コイツの能力は鳥の力を操る能力、自分の体を鳥にできる。今のところそれぐらいしか分からねぇ。翼を生やしたり、手を鳥の爪みたくしたり……他に何ができるか」
妖夢「なるほど……能力の確認とウミタカさんの基礎を鍛える、そういう感じですか」
魔理沙「あぁ。ま、そんな感じだ」
アリス「今からでも大丈夫かしら?」
妖夢「ええ、大丈夫です」
魔理沙「そういや、あの大食いはどこに居るんだ?」
妖夢「幽々子様は今いらっしゃいませんよ。迷いの竹林の中にある永遠亭、輝夜様に会いに行きました。それと魔理沙、幽々子様のことを大食いと言わないでください」
魔理沙「へぃへぃ」