五話
広いエントランスホールで赤いレッドカーペットを歩く。上を見ると高い天井にぶら下がるシャンデリア。
俺「おお……!」
アリス「ウミタカ、行くわよー」
魔理沙「アリス、どこ向かってんだぁ?」
アリス「図書館だけど?パチュリーに会いに来たんだから」
俺「図書館?」
魔理沙「オレのお気に入りの場所だ!」
アリス「魔理沙……お気に入りって……」
魔理沙「ハハハッ!」
俺「えぇ……?」
魔理沙「ところで咲夜はまだ来ないのか?」
アリス「もうすぐ来るでしょ」
???「少々遅れました、申し訳ございません」
突然現れたメイド服を着る銀髪の女性。
アリス「いいのいいの、別に急な用事とかじゃないし」
魔理沙「そうだぜ!な、ウミタカ!」
俺「えっ?俺?」
???「申し遅れました、私は十六夜咲夜と申します。この屋敷の主、レミリア・スカーレット様に仕えるメイドでございます」
俺「お、おう」
???「貴方はウミタカ様でございますね。どうぞ、レミリア様がお待ちです」
魔理沙「いってらー」
???「ちなみに魔理沙は妹様のお相手になっていただきます」
魔理沙「ゲッ!マジかよ」
相手?ってなんだ?
咲夜「こちらです、どうぞ」
エントランスに居たはずなのに、いつの間にか目の前には扉があった。
俺「え、は?え?」
咲夜「お入りください」
俺「え、と。じゃあ、お邪魔します」
どうしてここに?
考える隙もなく、そんな疑問を抑え込んで中へと入る。
???「いらっしゃい、ウミタカ」
俺「あ、えと……。どうも……?」
???「ほら、席にでも座りなさい」
咲夜「どうぞ」
俺「あ、ありがとうございます」
椅子を引いて俺をそこに座らせる。
???「私はレミリア・スカーレット、この屋敷の主よ」
俺「は、はあ……」
レミリア「咲夜、下がりなさい」
咲夜「かしこまりました、それでは失礼致します」
レミリア「ええ」
俺「あの……」
レミリア「分かっているわ、あなたを呼んだ理由よね?」
俺「あ、はい」
なんだ……幻想郷の奴らはみんな察しがいいのか?
レミリア「説明が難しいのよねぇ、能力に関するものだから特に」
俺「能力?」
レミリア「私の能力は運命を操る程度の能力」
俺「運命……?」
レミリア「ええ、そうよ。運命。ここにあなたが来たのも運命」
俺「な、なんだと!?」
レミリア「というより、私が紫に頼んであなたをこの幻想郷に呼んだのよ」
俺「なっ……!どういうことだよ!?」
レミリア「どうせ見てるんでしょう?出てきなさいよ」
直後、空間が歪んで中から紫が出てきた。
???「は〜い」
俺「あ、紫!」
紫「やっほ〜、ウミタカくん」
ん?え?
レミリア「はあ……」
紫「なによ〜?」
なんか……。
俺「ホ、ホントに紫か?雰囲気が違うんだが……」
レミリア「コイツ、見栄っ張りだもの」
紫「うるさいわねぇ?貴女だって見え張りじゃないの」
レミリア「……」
ぷいっ、と顔を背けるレミリア。
俺「な、え?」
頭が追いつかない……。一体どういうことなんだ。
紫「ほら、レミリア。説明してあげなさいよ。というか私も詳しく知らないんだから教えなさいよ」
俺「あ、えと……」
レミリア「はあ……最初からそのつもりよ」
紫「あら、そう?」
息を吸って、口を開いたレミリアの言葉は突拍子もないことだった。
レミリア「……この幻想郷が消える」
俺「は?」
どういうことだ?
レミリア「っていう運命が見えたのよ」
俺「それが、どうしたんだよ……?」
紫「……なるほどね」
直後、察したように声を上げる紫。
レミリア「ええ、私は幻想郷が消えてほしくない。だからあなたを呼んだのよ」
紫「ウミタカ、貴方が唯一この幻想郷を救えるのね」
俺「お前らだけで理解してんじゃねえよ!ちゃんと説明してくれっ!」
レミリア「私の能力で、幻想郷が滅ぶ運命が見えた。あなたを呼ばなければ幻想郷は滅ぶ運命だった」
紫「だから私を使ってウミタカを呼んだのよね。ウミタカを呼べば幻想郷が滅ぶ運命は無くなる、そうよね?レミリア」
レミリア「そう思っていたんだけれど……」
紫「あら?まだなにかあるのかしら」
レミリア「厄介なことにまだ幻想郷は滅びそうよ、運命がそう言っている」
紫「あら残念ね」
レミリア「運命で見えたのはあなたを呼べば幻想郷が救えるってこと、それだけだった」
俺「なんで……俺なんだ!?」
レミリア「そんなこと知らないわよ」
紫「まあ、ウミタカには幻想郷を救ってもらわなきゃってことね」
俺「どうして俺が……」
紫「忘れたのかしら?対価を払わなければ、いけないのでしょう?」
俺「ぐっ……はあ、分かったよ。幻想郷を救えばいいんだろ?何をすればいいかわからないけど、幻想郷を救うってのは約束するよ」
レミリア「そう、その言葉が聞けたのならいいわ。堅苦しいのは終わりよ。咲夜!」
咲夜「はい、こちらに」
レミリア「お腹すいた!おやつは!?」
咲夜「失礼ですがお嬢様、まだおやつの時間ではありませんよ」
レミリア「えー!?お腹すいたぁ!」
俺「は、え?」
シリアスな場面が一気に崩れる……。性格変わりすぎだろ……。
しかも、いつの間にか紫は消えていた。
魔理沙「そりゃ!うらぁ!」
???「あー!たのしい!」
魔理沙「そーかよ!こっちは避けるのに必死だがなッ!」
俺「なんだ、あれ」
俺が眺める先で、魔理沙が金髪で宝石?の羽が生えた少女と戦っていた。
???「魔理沙ッ!たのしいッ!愉しいよッ!」
いや……戦うというより少女の攻撃、弾幕を魔理沙が避けているだけだった。
レミリア「フラーン!お客様よー!」
魔理沙「あ、ウミタカ!」
俺「魔理沙、大丈夫か?」
魔理沙「はぁ……はぁ……」
咲夜「水です、どうぞ」
レミリア「フラン、遊びは終わりよ」
???「えー!もっと遊びたいよお姉様ー!」
咲夜「妹様、疲れている魔理沙と遊んでも楽しくないのでは?」
魔理沙「はぁ……はぁ……そうだぜ、フラン」
咲夜「ほら、この通り。息がきれてますし」
???「んー……分かったよぉ」
魔理沙「はぁ……やっと、地獄から抜け出せる……はぁ……はぁ……」
レミリア「お疲れね、魔理沙」
俺「何をしてたんだ?」
???「遊んでたの!愉しいよ!」
咲夜「妹様……」
???「ねぇ、お兄さんの名前は?私はフランって言うの!」
俺「ああ、俺の名前はウミタカだ」
レミリア「フランは私の妹よ、仲良くしてあげてね」
魔理沙「仲良くって……えぇ……?」
フラン「ウミタカは遊んでくれる?」
レミリア「ほーらフラン、遊びは終わりって言ったでしょ?」
魔理沙「そう……だぞぉ……」
フラン「むぅ……はーい」
レミリア「さて、と。行きますか」
魔理沙「どこにだよ?」
レミリア「もちろん、図書室よ」
俺「図書室?」
魔理沙「ああ、この屋敷には図書室があるんだぜ?でっけぇやつがな。多分そこにアリスもいるぞ」
レミリア「咲夜」
フラン「さーくやー」
咲夜「畏まりました……着きました」
視界が一瞬で変わり、少しビクつきながら周りを見てみると本棚が目に入った。
レミリア「ありがとう、咲夜」
フラン「ありがとねー!さくやー!」
咲夜「いえ」
何だ今の……瞬間移動か?
フラン「パチュリー!」
???「どーした?」
レミリア「ウミタカを案内中」
アリス「レミィ、フランはどう?」
フラン「元気いっぱいだよ!」
咲夜「はい、さっきまで魔理沙と遊んでいました」
アリス「そう……」
レミリア「で? パチュリーたちは何をやってたのよ」
アリス「新しい戦闘ルールを作ってたのよ」
フラン「戦闘ルール?」
アリス「ええ、今は弾幕ごっこで戦ってるじゃない?」
魔理沙「うむ、そうだな」
俺「弾幕ごっこ?」
アリス「そういえば、詳しく説明してなかったわね。
弾幕ごっこっていうのは遊び、決闘の一種ね。ここ、幻想郷では殺し合いは禁止なの。
けれど、それでは妖怪たちの力が弱まってしまう。それに、妖怪たちと人間じゃあ力の差がありすぎる」
???「そこで考えられたのが弾幕ごっこ。弾幕ごっこはスペルカードという契約書で技を出し、美しさと自身の思念を図る遊びのような決闘のようなもの」
アリスに続くようにそう言ったのは紫髪の女性。
俺「アンタは?」
???「私はパチュリー・ノーレッジ、この館の主人の友人よ。この屋敷に住まわせてもらってるわ」
月の飾りがついた帽子を被り、横から垂れた髪の毛はリボンで結ばれていた。