四話
というわけで何故か魔理沙の家に住むことに……。
俺「なあ……」
アリス「どうしたの?ウミタカ」
俺「いや、魔理沙がさあ……」
そう言って俺は魔理沙を見る。
魔理沙「……」
アリス「拗ねてるのよ」
俺「は?」
アリス「可愛いわね、魔理沙は」
魔理沙「んだよ……」
いじけたような声を出して、机に突っ伏していた顔をあげる。
俺「ええー……?」
魔理沙「しゃあねぇなあ!」
急に椅子から立ち上がった魔理沙。
俺「お……おう?」
魔理沙「行くぞ!ウミタカ!アリスも!」
アリス「私も?」
俺「どこ行くんだよ?」
魔理沙「まずは香霖堂だ!」
アリス「あぁ……幻想郷をまわるのね。だから私を呼んだのね」
魔理沙「アリスが言ったからな!呼べってな!」
アリス「はいはい。ありがとね、魔理沙」
魔理沙の家を出て歩き始める。
俺「で、香霖堂ってなんなんだ?」
アリス「言わなかった?香霖堂は幻想郷唯一の道具屋だって」
俺「いや……聞いたけどさ。何が売ってるんだよ?」
魔理沙「外の世界のモンが売ってたりするぜ!」
ん?
俺「外の世界?」
アリス「そう、外の世界。ここ、幻想郷ではあなたの住んでいた世界を外の世界って言ってるの」
俺「そうなのか」
魔理沙「たまに魔導書とかもあるからお買い得だぜ!」
アリス「はあ……あなた、基本盗ってるじゃないの」
魔理沙「盗ってないし!少し借りるだけだ!オレが死ぬまでな!」
俺「いや、それ盗んでるじゃん」
そんなこんな話をしていると、香霖堂に着いた。ドアベルを鳴らしながら二人は中へと入っていく。
魔理沙「森近!居るかー!?」
俺「もりちか?」
アリス「森近霖之助、ここの店主の名前よ」
魔理沙「よし!居ないな!」
???「居るわボケッ!」
魔理沙「いで!なにすんだよ、森近」
???「ん?アリスも居るのか」
アリス「居るわよ〜。久しぶり、かしら?」
???「そうかもな、あんまり会わねえし。で?今日は何しに来たんだ、魔理沙」
魔理沙「ん、ああ。コイツの案内だよ」
???「コイツ?」
俺「どうも……?」
とりあえず俺は頭を下げて挨拶もした。
???「うぉっと!すまない、気づかなかった。僕は森近霖之助、よろしく」
俺「お、おう。俺はウミタカだ、よろしく」
白髪頭で金色の目をした男はズレたメガネを戻して握手を求める。
森近霖之助「んで、迷い込んだのか?それとも呼んだのか?」
アリス「紫が呼んだのよ、何故かは知らないけど」
森近霖之助「そうか。……っておい!魔理沙、何してんだよ!」
魔理沙「ギクッ!い、いや〜?」
森近霖之助「バレバレだ!後ろに隠したやつ出せ!」
魔理沙「……ちぇっ。ほらよ」
森近霖之助「はあ……ったく。で、ウミタカの案内だけか?ここに来たのは」
魔理沙「そうだぜ?」
森近霖之助「じゃ、次はどこに行くんだ?」
少し間が空いて。
魔理沙「……考えてなかったわ」
森近霖之助「おい」
魔理沙「とりあえず、ここに来たかったからよ」
そこでアリスが言ってきた。
アリス「それじゃ、紅魔館に行きましょう」
魔理沙「紅魔館?なんでだよ?」
アリス「パチュリーに会いたいのよ」
森近霖之助「いいんじゃないか?行ってこいよ、魔理沙」
魔理沙「へいへい、わかりましたよー」
俺(何も喋れねぇぇぇ……)
香霖堂から出て道を歩く。
俺「で、紅魔館ってなんだ?」
魔理沙「吸血鬼がいる館」
アリス「ちょっと魔理沙。そんだけじゃわかんないでしょうが」
俺「吸血鬼……?」
ドラキュラとかそういうやつか?
アリス「レミリア・スカーレット、館の当主であり吸血鬼。その妹のフラン・スカーレット、495年地下に閉じ込められた吸血鬼。その姉妹が住む館よ」
俺「姉妹なのか?それに、閉じ込められたって」
魔理沙「あれは閉じ込められてたっていうより引きこもってたような……」
俺「どっちだよ……」
アリス「ふふ、どっちでしょうね?それはあの姉妹にしかわからないわ」
魔理沙「そうだな!」
アリス「で、私が会いたいって言ったのはパチュリー。パチュリー・ノーレッジ。私と魔理沙と一緒で魔法使いよ」
魔法使い……。
俺「同じ魔法使いなのか」
アリス「魔法使いって言っても系統が違うからね。私の魔法は人形を操るぐらい」
魔理沙「オレのは魔法だ!色々できるしポーションとか魔法薬も調合できるぜ!」
アリス「パチュリーは基本引きこもってるわ。魔理沙が『東洋の西洋魔術師』ならパチュリーは『西洋の東洋魔術師』ってとこかしらね。詳しいことは本人から聞いて頂戴」
ふむふむ、なるほどな。
俺「ああ、わかった」
見渡す限り湖、その周りを俺たちは歩いていた。
アリス「もうすぐ着くわよ」
魔理沙「にしても……大きい湖だよなあ」
俺「この湖……なんなんだ?」
魔理沙「霧の湖」
アリス「魔理沙、ちゃんと……」
魔理沙「へいへい。この湖は霧の湖っつってな、昼間にはよく霧が出るんだ。たまにカッパが流れてくるぜ」
俺「カッパ?」
魔理沙「おう!機械好きなカッパがな!」
???「かっぱっぱー」
俺「……なんか流れてきたぞ」
噂をすれば影かよ。
アリス「カッパね」
魔理沙「カッパだな」
予想通り、カッパなんだな……。
んしょ、と湖から上がる少女を俺は眺めていた。
アリス「彼女は河城にとり、ちょっと人見知りするカッパだけど仲良くしてね」
にとり「誰が人見知りだっ!」
俺「よ、よお?」
にとり「に、ニンゲンっ!?」
バッと飛び退く少女。
魔理沙「……オレの後ろに隠れんなよ」
アリス「人見知りじゃないの」
にとり「るっさい!んんっ!ボクは河城にとり!お前さんは?」
俺「あ、ああ……。俺はウミタカって言うんだ、よろしくな」
にとりは青い服を着ていて、大きなリュックを背負っていた。
水の中で一体どうやって持ってるんだってくらい大きいリュックだな……。
魔理沙「おい、にとり。自己紹介するならオレの後ろから出ろよ」
アリス「ふふふっ」
俺「えぇ……」
にとり「うぅ……」
青い髪の毛をツーサイドアップ?後ろ髪や横髪を垂らしたままでツインテールにしたような感じ、にしていた。
そんな青髪が魔理沙の後ろで揺れる。
魔理沙「今日はチルノはいなさそうだな」
ふと、魔理沙がそう呟いた。
にとり「チルノくんと大妖精は違うところで遊んでるよ」
魔理沙「そうなのか」
俺「なあ……」
アリス「この霧の湖の近くにね、チルノの家があるのよ。大妖精もたまにこの付近で遊んでるから」
俺の疑問を察したのか、アリスは律儀にそう言ってくれた。
俺「なるほど……」
魔理沙「家っつーかかまくらみたいなもんだよなー」
にとり「ボクはもうお暇するよ!じゃあね!」
ドボンッ、と湖に飛び込んで沈んでいく。
俺「あれ、大丈夫なのか……?」
アリス「カッパだから大丈夫よ」
俺「そ、そうか(カッパだから……?)」
アリス「そろそろ門に着くわね」
魔理沙「霧濃くなってきたなあ」
???「グゥゥゥゥ……」
門の前に立ち止まって、魔理沙とアリスに話しかける。
俺「なあ……寝てんだけど」
魔理沙「いつものことだな」
アリス「ええ、いつものことね」
???「ZZZ……んがっ!あ、魔理沙さんとアリスさん。おはようございます」
魔理沙「おはよう」
アリス「門番が寝てどうすんのよ」
魔理沙「ソーダゾー」
どう聞いても棒読みな魔理沙の声が少し気になってしまう。
???「えぇぇ?こんな屋敷誰も来ませんって〜」
俺「なあ……」
アリス「はいはい、彼女は美鈴。この屋敷の門番よ」
俺「おぉ……」
……ん?いや、この屋敷の門番なのに屋敷貶してどうすんだよ……。
???「ドーモ!美鈴です!」
俺「よ、よろしくな?俺はウミタカだ」
美鈴「ウミタカさん、よろしくです!それでは、門を開けますね〜」