一話
なんだ、ここは?
周りを見渡すと暗い空間の中だった。
???「やっと起きたの?」
俺「誰だ!」
???「そう警戒しないでよ、私は紫。よろしくね」
俺「紫?お前が俺を助けてくれたのか?」
紫「助けた……んー、まあそうね」
俺「そうか……。俺は対価として、一体何をすればいい?」
紫「あら、切り替えが早いのね」
俺「うるせぇ、助けたってことは何かあるんだろ。早く話せよ」
紫「はあ……。あなたには幻想郷、というところに来てもらいます」
俺「幻想郷?なんだそれは」
紫「その説明はめんど……、んんっ!それは幻想郷に入ってからの話ね」
俺「それで?その、幻想郷とやらで何をすればいいんだ」
紫「あなたは『その時』が来るまで普通に過ごしていて」
俺「『その時』?って何だよ」
紫「それは私にもわからないわ。ただ、あなたが必要だってことしかわからなかったもの」
俺「ああ、そうかよ……」
紫「『その時』が来るまであなたは勝手に過ごしなさい。それじゃ、頑張ってね」
俺「へいへい」
森の地面に俺は尻から落ちた。
俺「いだっ!くそ……紫のやつ、もうちょい優しくしろよな」
俺「んで、ここどこだよ」
周りを見渡すと森の中。
遠くに少し見えたのは蔓が絡まった白い家。
俺「あそこに行ってみるか」
俺「すみませーん、誰かいますかー?」
ドアを叩きながら叫ぶ。
中からバタバタ、と音が聞こえた。
???「ほいほーい、だれだー?」
ドアを開けたのは金髪の女性。
俺「すまん、ここってどこだ?」
???「ん?んー……。あ、お前!」
俺「な、なんだ?」
ドアを開けた金髪の女性は、俺の頭の上を見つめる。
???「それ……。はあ……、紫のやつめ。めんどくさがったな……」
俺「紫?今、紫って言ったよな」
???「ん、ああ。ほれ、家ん中はいれ」
俺「お、おう?」
家の中へと足を踏み入れ、散らかった部屋の中でイスに座らされる。
???「オレは霧雨魔理沙。この家に住んでいる魔法使いだ」
俺「魔法使い?」
魔理沙「ああ。ったくよー、この役はオレにゃあわねーよ……」
俺「どういうことだよ?」
魔理沙「そうか、その位置じゃお前にゃ見えんよな。ほれ」
俺の頭の上に手を伸ばし、何かを取る。
俺「なんだよこれ!」
魔理沙は俺に見えるように目の前に掲げる。
掲げた物は紙だった。
俺「コイツを最初に見つけたものは最低限、幻想郷の説明をしてやれ。だって?」
魔理沙「面倒だなあ……。オレ、説明は苦手なんだが」
俺「紫のやつ……。頼むよ魔理沙、幻想郷について説明してくれないか?」
俺がそう言うと、魔理沙はイスから立って外に行く。
そんな魔理沙に俺はついていった。
魔理沙「オレァ、感覚派だから理論的に説明すんのは苦手だ。だから、まずは戦闘を始める」
俺「せっ、戦闘!?」
魔理沙「ほら、行くぞ!まずは小手調べだ」
俺「うおっと!あぶねぇ!なんだそれ!」
光る玉が俺に向かって来る。
当たるとやばそうだから俺は避けた。
魔理沙「ふむふむ、反射神経は悪くなさそうだな。動体視力もか?」
俺「お、おい!魔理沙!」
魔理沙「ん、ああ。大丈夫だ、殺しはせん」
俺「そういう問題じゃねぇだろ!?」
魔理沙「大丈夫大丈夫。ほら、次行くぞ」
また光る玉を俺に向かって放ってくる。
俺「うお!」
魔理沙「直感か……?よく、避けれるな」
俺「るっせ!こっちは必死なんだよ!」
魔理沙「なるほどな……、基本的な運動能力はあると。それじゃ、次は能力だな」
俺「能力、ってなんだよ!?」
魔理沙「まずは自覚させねぇとな。ほれ!」
光る玉が俺に迫る。
俺「ぬう!おお!」
魔理沙「なんかいつもと違うところないか?」
俺「い、今聞くことか!?」
魔理沙「しゃあねえだろ、これが一番手っ取り早いんだ。ほれ、はよ答えろ」
俺「んなこと言われても……あぶねっ!」
魔理沙「ほれ、早くしねぇと怪我するぞ?」
俺「殺しはしないんじゃないのかよ!」
魔理沙「殺しはしないさ、怪我負うだけで死にはしないだろ?」
俺「ああ、くそっ!いつもと違うっていったって!おわっ!」
光る玉を避ける俺を見て魔理沙は手を止めた。
魔理沙「…………、はあ!?」
俺「な、なんだよ……?」
魔理沙「おまっ……まじか」
俺「だから何だよ!?」
魔理沙「気づいてねぇのか……。下見ろ、下」
呆れたような顔をして言う。
俺「ん……、え!?は?なんで浮いてんの!?」
魔理沙「ふむ。これだけじゃ、まだわからんなぁ。そら、まだまだ行くぞー」
俺「え?あ、ちょっ!」
魔理沙「ほれ、早くその翼に慣れねぇとあぶねぇぞ?」
俺「つ、翼?」
魔理沙「止まってっと当たるぞ?」
俺「うぉっと!」
魔理沙「攻撃もしてこいよ」
俺「んなことっ、言ったって!攻撃の仕方がわかんねっての!」
魔理沙「直感に従え」
俺「それだけかよ!?」
魔理沙「ほれ」
俺「あぁ、くそっ!直感たって!」
何をどうすりゃいいんだよ!
ああもう!めんどくせぇ!
魔理沙「ほれほれ」
煽るように動く魔理沙に俺はムカッとした。
俺「こなくそっ!やり返しだ!」
魔理沙「おお!そうこなくちゃな!」
武器ないし、素手でやるしか!
俺「おるぁ!」
魔理沙「うぇ?まじで?」
魔理沙に向かって俺は手を伸ばす。
すると、手が変化して爪が伸びた。
え!?魔理沙の顔に当たる!
そう思っていたら急に手が止まった。
???「はい!そこまで!」
その声は後ろから聞こえる。
と、同時に。
魔理沙「わりぃわりぃ、助かったぜ。アリス」
???「魔理沙!なにしてるのよ!?」
魔理沙「ん?見てのとおりだろ?」
???「見てのとおりって……、はあ……。アンタに聞いた私が馬鹿だったわ」
俺「お、おい!俺、今どうなってんの!?体動かねぇんだけど!?」
???「あら、ごめんなさいね。ちょっと強くしすぎたかしら……?」
動かなかった体が動くようになった。
俺「な、なんだってんだ……?」
魔理沙「なあ、アリス!いつから見てたんだ?」
???「見てるも何も……。弾幕ごっこの音が森に響き渡ってたから、気になって来たのよ」
魔理沙「それで?」
???「そしたら、魔理沙がなんか危なそうじゃない。止めるに決まってるわよ。あんな呆けた顔して……」
魔理沙「ははっ!すまんな!ちと、熱が入っちって……」
???「全く……、気をつけなさいよ?あなたのそういうところ、好きだけど直しなさいね」
魔理沙「こればかりは性格だかんなぁ。まあ、気が向いたときにでもな!」
???「もう……。あなたも大丈夫?怪我してない?」
俺に近づき、怪我をしてないか確かめてくる。
俺「お、おう。大丈夫だぞ?」
???「えと……、そうね。名前、私の名前はアリス。アリス・マーガトロイドよ、よろしくね」
俺「あ、ああ。よろしく、アリス。俺の名前はウミタカだ」
アリス「そう、ウミタカっていうのね」
魔理沙「お前、ウミタカって言うんだな!」
アリス「…………、ねぇあなた。もしかして、この子の名前知らなかったとか言わないわよね?」
魔理沙「知らなかったぜ!」
アリス「はあ……」
俺「そういや、魔理沙には名乗ってなかったような……」
アリス「もういいわ……。それで、あなたたちはどうして弾幕ごっこしてたの?」
俺「弾幕……ごっこ?」
なんだそれ?
魔理沙「ああ、アリス。弾幕打ってたのはオレだけだぜ?」
アリス「…………。それで、なんで勝負してたのよ?」
魔理沙「コイツ、外から来たやつ。んで、紫に幻想郷のこと教えろって言われた。そんで、勝負」
アリス「答えになってないわよ……」
アリスは片手で頭を抑えた。