初等科2年と留学生
ーー 学園生活
黄の休みが明け、僕は初等科2年生として学園に通い出した。
新しく後輩になる新一年生が寮に入ってきたので、先日歓迎会が行われた。
その中で新一年生が一番驚いたことは、王都の街よりケンドール公爵領の街の方が綺麗で活気がある。そしてこの寮の生活は自分家よりも数段快適だという意見が多かったことだ。
料理について尋ねると、先輩たちが
「この寮の食事は王都で1・2位を争うほど美味い、寝具とお風呂に関しては最高だ」
と評価してくれていることが嬉しかった。
今年も学園では4つの行事を中心に学園生活が進んでゆくが、僕はお母様を見習ってもう少し社交を頑張ってみようと思う。
何故かって?当然僕は新しい領地を経営する必要があるため、優秀な家臣を必要としているからだ。
この世界は男だけで動いているわけではない、女性の活躍も大きな影響力を持っているのだから当然だろう。
そういえば新しい友達がよその国から来るそうだ。
珍しいことだが2国からの留学生ということで、僕のクラスにも編入すると聞いている。
どんな生徒で、どんな情報を持っているのか今から楽しみだ。
ーー 留学生がやって来た。
学園が始まって10日目。
「皆さん。本日からこのクラスに編入して来たお友達を、紹介します。隣国のトラザール王国の3人とグスタング王国の2人です。早くお友達になってくださいね。それでは自己紹介を。」
担任に教師に促されて、
「みなさん初めまして、私はトラザール王国から参りましたクリスタル=トラザール。そして彼女がセシル=カンクローネ、彼がスバル=ウイリアムと申します。今、セガール王国は周辺国の中で話題の国です。私たちもこの学園で新しい知識と流行を自分のものにしようと思っております。よろしくお願いしますね。」
と国名と同じ性を持つ少女が代表して挨拶を行った、この国が話題になっている?そんな疑問を考えていたら
「みなさん初めまして。私はグスタング王国から参りました。
第四王女のダイアナ=グスタングです、こちらは共に参りました。」
「私はルビー=アイオワです。」
「クリスタル王女共々友達として迎え入れてください。」
と挨拶を行った。
その後は僕らも1人ずつ、自己紹介をして新しいクラスメイトを迎え入れたのだった。
ーー 領地対抗戦1
今年も領地対抗戦の季節がやって来ました。
昨年は黄の大躍進で一位でしたが、今年は昨年活躍しすぎた僕は除外と言われたので、作戦を練り直さなければなりません。
今年は留学生も多く編入していることから特別枠ができるかもという噂もあります。
みんなの頑張りに期待です。
先ずは寮において、新寮長のケント先輩が今回の対抗戦の選手を決めていった。
高等科
・1年~コーディー 魔剣の研究
中等科
・3年~トリトン 剣士
・1年~ウルティー 魔法
初等科
・3年~メスティーナ 四則計算
・3年~スティーブン 国語
で総合の大会は、
初等科2年のマッケンジー
に決まった。
選手が決まればそれぞれで訓練や研究を行うが、みんなが僕にオブザーバーをやれという。
そこで日にちを決めて練習相手兼指導となった。
ーー 学園生活2
そう言えば留学生の5人が最初に興味を持ったのが、僕を始め6人が8歳にして爵位を持っていることだ。
この国でも珍しいことだが、同じく外国でも珍しいようだ。
「ダンジョンを踏破!・・ドラゴン討伐・ですか。」
クリスタル王女が驚きながらも興味を持ったようだ。
そう言えばダンジョンはあれからどうなったんだろう。
ダイアナ王女の興味はもっぱら料理にようだ。
ケンドール公爵領の料理屋が王都に2号店を出したのだが、大盛況で連日満員。
なかなか食事に予約ができないとこぼしていたので、
「良かったら、僕の屋敷に来ませんか?元々うちから広めた料理なので、同じものが食べれますよ。」
と言うと
「是非にお願い致しますわ。ルビーもよろしくて。」
と応じたので、3日後の午後に約束を行った。
◇
3日後。
馬車で迎えに行き一緒に我が家へと向かうと。
「エストニア様、この馬車の乗り心地は素晴らしいですわ。」
と感心していた。
ルビー嬢は無口な女性のようだ。
「どうぞ。ダイアナ様、ルビー様我が家です。」
と案内すると、屋敷を見回しながら
「未だ夏の残りがあると言うのに、馬車も屋敷内も過ごしやすいですわね?」
と呟きながらホールへ。
ウエルカムドリンクということで、冷たい果実のジュースとバタークッキーを出すと。
「バターの香りがいいですね、あらこのジュース美味しいですわ。」
と喜んでくれた。
準備ができたので、食堂に移動する。
「これがケンドール公爵領のお料理なのですね。」
と興奮気味のダイアナ王女。
「今日は基本的な料理のコースを準備いたしました。デザートは王都でも好評なものを用意しましたので、楽しんでいただけると幸いです。」
と料理の紹介をしながら食事を進める。
「・・これが・・ケーキなのですね。」
消え入りそうな独り言が聞こえた。
ルビー嬢の声だ、デザートがことのほかお気に入りのようだ。
2人のお付きの侍女等にも別室で同じ料理を提供していたが、それを知ったクリスタル王女はとても驚いていた。
よその王国では同じ料理を食べないのでしょうか?
食事が終わり、デザートとを頂きながらお茶を飲んでいると。
パーティーからお帰りのお母様が戻られた。
お客様のダイアナ王女とルビー嬢を紹介しながら、お母様を紹介すると。
「まあ。エストニア様のお母様でお間違い無いのですか?お姉様のお間違いでは。何時迄も若々しいお母様で羨ましい限りですわね。何か秘訣でもおありなのでしょうか?」
というダイアナ王女の言葉にお母様が
「簡単な事よ、エストの作る若返りの秘薬を飲んで、エストの作る美容液入りの化粧水を塗ればという事よ。」
と答えたが、あまり信じていないようだ。
その後ダイアナ王女とルビー嬢は宿泊中の寮まで送り届けた。
ーー 留学生ダイアナ、ルビー side
グスタング王国から留学して来た2人には目的があった。
一つは食料事情が悪化しつつあるグスタング王国内の食糧生産を、今評判のセガール王国の農業の手法を知りたい。
もう一つは、伝説の薬エリクサーが存在するという不確かな噂を聞き、それに近い薬があるのだろうと思い。
その理由は母である王妃が重い病に侵されており、もう長くはなかろうと医者に言われていたからであった。
「ダイアナ様エストニア様と同じクラスになれたのは、とても運が良かったですね。セガール王国でもケンドール公爵領は食糧生産率が高く、美しい街並みとお聞きしています。何か秘密があるのでしょう。」
と学園ではほとんど喋らないルビーがこちらで掴んだ情報を報告して来た。
「そうね、それに色々と噂の多い方のようね。信じられない事だけどドラゴンスレイヤーとお聞きしています。」
とダイアナも饒舌に話に乗る。
そしてある日寮に帰ると2人で手を取って喜んでいた。
「こうもうまく話が纏まるとは思いませんでしたわね。」
とルビーが言えば
「本当、エストニア様のお屋敷に招かれてお食事会なんて、少しでも縁を結んで彼の地の秘密を探りましょう。」
と2人で色々と作戦を話していた。
しかしいざエストニアの屋敷に向かおうと馬車に乗った時から驚きの連続。
『何と乗り心地が良く広い馬車でしょう。』そう思いながら質問をすると、これらはエストニア様が幼い頃に改善開発されたものだと。
『そんな話信じられるわけがないわ。5歳やそこらでこんな事ができたら昔話の賢者様でもなければ無理でしょ。』
そう思っていました。
屋敷について感じたのが、まだ気候は残暑が残る季節であるにもかかわらず、馬車も屋敷の中も過ごしやすいのです。
そして「ウエルカムドリンク」と言われる飲み物と軽食の美味しさ。
これらもエストニア様がレシピを考えられたとか。
食事の準備ができたようで、食堂に招かれた私たちを見たこともない美食が待っていました。
これもエストニア様が考えられたレシピと言われたが、この国では子息のことを持ち上げるためにこういうのだろうかと思っていたら。
エストニア様のお母様であるケンドール公爵夫人が現れました。
しかしその容貌は若く美しすぎるのです。
思わず「お姉様のお間違いでは」と言ってしまうほどに。
すると公爵夫人が言うには、エストニア様の作られた「若返りの秘薬のおかげ」と真顔で言われたのです。
本当にエストニア様が作られたしたら・・私のお母様の病気も・・。
そしてお暇をしたのですが、その際公爵夫人が私に手紙を差し出されました。
寮に帰りそのお手紙を読んで私は鳥肌が立つ思いでした。
そこにはまだ親しいものしか知らない、私のお母様の病状とグスタング王国の窮状が描かれていたのです。しかも対策付きで。
「我が息子エストニアに頼みなさい。駆け引きなく故ことのままに、そうすればエストニアは応えるでしょう。」
と書かれていたのです。
私たちはお土産のショートケーキというお菓子を頂きながら、考えてしまいました。
◇
次の日。
学園のテラスにて。
「エストニア様、お忙しい中お呼びたてしてしまい申し訳ありません。先ずは昨日のお食事会のお礼を申し上げます、大変美味しゅうございました。」
と断ってから
「実は折言ってお頼みしたいことがあります。まだよくも知らない私の頼みだとはわかっておりますが。時間がそれを許さないため、率直にお頼み致します。」
真剣な雰囲気にエストニアは、姿勢を正して
「お話伺いましょう。僕力で解決できることでしたら、協力は嫌ではありませんから。」
との答えに後押しされるように私は
「実は私がこの国に留学生として来たことには、二つほど目的がありました。一つはこの国の農業技術の修得です。もう一つが時間が限られており困難が予想される問題、私のお母様の病気なのです。既に我が国の名医と言われる者でも後少しの時間しか残されていないと言われているのです。」
とグスタング王国の重要な秘密を打ち明けた、私の話を黙って聞いていたエストニア様は、
「分かりました。直ぐにグスタング王国に向かいましょう。薬もあるし僕もグスタング王国を見てみたいと思うますので。」
と言われると
「あそだ!国王やお父様に連絡をしておかなければ。」
と言って席を立つとどこかにいかれました。
取り残された私とルビーは、顔を見合わせて
「上手くいったのでしょうか?」
と呟いたのです。