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子供シェアリング

作者: 村崎羯諦

 両親への感謝の手紙。五年二組、桐島歌子。


 私には大好きなお父さんが三人と、大好きなお母さんが五人います。いわゆる子供シェアリングというやつで、全員で八人のお父さんとお母さんが、私のお世話をしてくれています。宿題で出された、両親への感謝の手紙も、他の子たちと比べてたくさん書かなくちゃいけないので、すごく大変でした。でも、教室の後ろにいる大好きなお父さんとお母さんたちのために一生懸命書きました。少しだけ照れ臭いけど、聞いてくれると嬉しいです。


 私にはお父さんとお母さんが何人もいるんだよって話をすると、かわいそうだねって言われることが多いです。大人が子供をモノみたいに扱ってるのは良くないとか、無責任だとか、そんなことを言われます。でも、私は自分のことがかわいそうだなんて思ってないし、お父さんとお母さんがたくさんいて本当によかったと心から思ってます。


 というのも、お父さんとお母さんがたくさんいてくれた方が、私にとってもたくさんメリットがあるからです。私にはお父さんとお母さんが八人もいるので、お母さんとお父さんが一人ずつしかしない子たちよりもずっと良い暮らしができています。お父さんやお母さんの所へ遊びにいくと、遊園地とかに連れて行ってくれるし、美味しいご飯を食べさせてくれます。服だって八人のお父さんとお母さんがそれぞれ買ってくれるから、クローゼットに入りきらないほどたくさん洋服を持ってます。お小遣いだって、他のお父さんとお母さんからはこれだけもらってるよっていうと、大抵それ以上のお小遣いをくれたりします。


 また、お父さんとお母さんがたくさんいることで、一種のリスク分散ができていると言えます。考えてみてください。お父さんとお母さんが一人ずつしかいないということはつまり、その二人しか頼ることができないということを意味しています。これはとても怖いことです。一人ずつしかいないお父さんとお母さんがとても優しい人で、お金を持っている人だったら問題はないけれど、性格が合わなかったり、お金持ちじゃない場合だってありえます。私のように何もできない子供としては、自分の意志で選ぶことのできない、たった二人の大人に自分の大事な人生を委ねるなんて、リスクが大きすぎると思います。


 お父さんとお母さんがたくさんいることで、すごく気を使わなくちゃいけないとかそういう大変なところはありますが、たくさんのお父さんとお母さんがいてくれることで、すごく安心感が生まれます。どれか一人のお父さんかお母さんとトラブルが発生した場合にも、他にたくさんのお父さんとお母さんがいることで、強く出ることができます。それに、たくさんのお父さんとお母さんとおしゃべりをすることで、いろんな考え方を知ることができます。大人同士でも違った意見を持っているし、たまに間違ったりするということを、私は身をもって知っています。よく他の子たちが、お父さんとお母さんの言っていることを何の根拠もなしに信じている様子を見ると、同じ子供としてとても心が痛みます。


 以上の理由から、たくさんのお父さんとお母さんがいる私は幸せ者だと思います。お父さん、お母さん、いつもありがとう。でも、これだけだと私の気持ちを伝えきれないので、一人一人のお父さんとお母さんにありがとうの気持ちを伝えたいと思います。


 高島お父さん。いつも遊園地に連れて行ってくれてありがとう。高島お父さんと一緒にアトラクションに乗って、はしゃいだりするのはとても楽しいです。お土産屋さんではいつも私が欲しいものを買ってくれるし、色んな味のポップコーンを食べさせてくれるよね。高島お父さんと一緒に撮った写真は私の部屋に飾っているんだけど、それを見るたびに、また高島お父さんと遊びに行きたいなーと思っちゃいます。来月、一緒に行く沖縄旅行もすごく楽しみにしてるね。


 大沢お母さん。いつも私に似合うお洋服を買ってくれてありがとう。大沢お母さんと一緒にお洋服屋さんを回るのはとても楽しいです。大沢お母さんはすごくおしゃれで、今はどんな服が流行っているのかを私に教えてくれるよね。私もいっぱいおしゃれして、将来は大沢お母さんみたいに可愛くてかっこいい女性になりたいです。


 島崎お母さん。いつもお小遣いをくれてありがとう。この前雑誌で紹介されてたヘアアクセサリーがどうしても欲しいって島崎お母さんに言った時、すぐにLINEでお金を振り込んでくれたよね。今日は島崎お母さんに買ってもらったヘアアクセサリーをつけてきたので、後で近くで見せてあげるね。


 霧島お父さん、霧島お母さん。いつも学校の手続きをしてくれてありがとう。私がこうして楽しい毎日を過ごせているのは、二人が私を産んでくれたからです。そのことは一瞬だって忘れたことはありません。


 山口お母さん。青木お母さん。大橋お父さん。いつも遊んでくれてありがとう。


 長くなりましたが、以上で私の作文は終わりです。でも、最後に一つだけ。さっき私は一人一人のお父さん、お母さんにありがとうって言ったけど、その順番は私に使ってくれてるお金が多い順になっています。授業前に担任の先生に聞いたのですが、この両親への手紙は、来年も同じように書くことが決まっているそうです。なので、順番が後ろの方だったお父さんとお母さんは、これから一年間、できるだけ自分の順番が上になるように頑張ってください。


 これで、本当に本当に、作文を終わります。お父さん、お母さん、いつもありがとう。大好き!

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