03-13
PVが20,000を超えました。
百話近くで、これくらいが普通なんでしょうかね?
雇用主と謎の襲撃者と、話を聞くために身柄を確保しようとするならば簡単なのはどちらなのか。
それは考えるまでもなく雇用主であろうとマインは判断する。
なにせ襲撃者と違って手の届く範囲にいる上に、今はケガを負っているので逃走される恐れも少なく、抵抗してくる可能性もそこそこの深手を負っているようなので極めて低い。
そこまで考えてダリルの方を向いたマインが見たものは、ダリルを囲むようにしてこちらへ険しい視線を向けている使用人達の姿であった。
傭兵くずれと思われる彼らは、何故だか襲撃者ではなくマインの方を警戒し、ダリルと荷馬車とを守ろうとしているように見える。
そのあまりに露骨な態度に、周囲にいた冒険者達はどちらにつくべきなのかと、自分達の行動を決めかねておろおろし始めていた。
「この襲撃。しっかりと心当たりがあるみたいだな、ダリル?」
「余計な詮索はしないことですよ」
「それが答えと言うことでいいのか? 俺はあくまでも積み荷の中身は知らないし、排除するのは魔物か盗賊の類ということで動くからな?」
確認を取るようなマインの言葉に、ダリルが言葉を詰まらせて顔を歪める。
その反応からして知られたら拙いことを隠しているのだなと思うマインへ、ダリルが少し焦ったような声を上げた。
「あ、相手はこちらの荷物を要求しています。盗賊の類に決まっているでしょう!」
「荷物の中身を知っていれば、その主張に同意してやってもよかったんだがなぁ」
荷物の詳細について説明することができないということは、荷物に関して色々と問題が付随しているということだとマインは考えていた。
その問題のある荷物に対して、所有権がどこにあるのかという疑問が生じる。
もしダリルに所有権があるのならば、ダリルはマインに対して荷物の詳細は明かせないが、中身は自分達の物で間違いないという証明をしなければならなかった。
それをせずにただ詳細に関しては聞くなと拒絶した時点で、ダリルの所有権はかなり怪しいものだとマインは考えていたのである。
ダリルの荷物を力ずく等で持って行こうとするのであれば、それは盗賊の行いではあるのだが、実は荷物に正当な所有権を持っていたりする者が相手だったりした場合、相手は盗賊の類などではなく、むしろダリルの方が盗賊扱いされても文句が言えなくなるのだ。
その辺りのことを理解しているのだろうかと思いつつ、マインはダリルから事情を聞くことを断念し、その目標を姿を見せていない襲撃者へと変更した。
姿を見せていないとはいっても、マインの目はしっかりと襲撃者であるエルフの射手の姿を捉えている。
それはマイン達からかなり離れた所に生えている木立の枝の上にあり、弓に矢をつがえた状態でじっとマイン達の様子を伺っていた。
軽く目を凝らせば、その周囲にもエルフの姿を見ることができたのだが、ここでマインは少し迷う。
エルフとは長寿で知られている種族で、見た目が整っており、少々前までは不老なのではないかと思われていた程に、一定の年齢から外見の変化が起きなくなる。
寿命を迎える百年前くらいから徐々に老化の特徴である髪の色が抜けてきたり、肌に皺が寄ったりし始めるのだが、そこに至るまではずっと若々しい外見のままでいるのだ。
つまり何がマインを迷わせているのかと言えば、見えるエルフ達は男女を問わず、全員が若々しく整った顔立ちをしているので、どれがリーダー格のエルフなのか見分けがつかなかったのである。
これが人族であるならば、集団の中で一番年上っぽい容姿の者であるとか、何かしらのそれっぽい雰囲気を漂わせている者やら、見て分かりそうなものなのだが、エルフに関してはそういった物がまるでないのでさっぱり分からない。
「見た目詐欺だよな」
「エルフもマスターには言われたくないと思っているに違いないかと」
アイに冷静な突っ込みを入れられて、そうかもしれないなとマインは思う。
何せマインは見た目こそ二十代の男性でしかないのだが、中身はエルフを超える数百歳なのだ。
しかも、エルフであればすっかり老化してしまっている年齢だというのに、マインにはその兆しすら見えていない。
そしてそれだけの年月を経てきているというのに、漂わせている雰囲気は一般人のそれと大差がないのだ。
見た目詐欺とはお前のことだと言われてしまえば、マインには反論する言葉がない。
「まぁそれより、とりあえずエルフの話を聞いてくるか」
リドルにはその場から動かないように指示し、アイに後のことを頼み、冒険者や使用人達に余計なことはするなよと軽く睨みつけておいてから、マインは射手達が潜んでいる方向へと歩き出した。
これに驚いたのは隠れ潜んでいるエルフ達である。
自分達としては巧みに隠れ、矢を射た方向すら分からないようにしていたはずだというのに、一人の魔術師らしき格好をした男が自分達の方を向いて真っすぐに歩み寄ってくるというのだ。
来るな、とは言えない。
言えばその方向に射手が潜んでいるのだということを相手に教えるようなものだからだ。
警告のために矢を射かけるというのも、マインへは既に二回も矢を射かけており、一回は手で掴み止められ、もう一回は見えない壁のような、おそらくは防御魔術と思われる何かに防がれてしまっている。
魔術による防御を突破する方法がないわけではなかったが、そこまでやってしまえばそれはもう、警告の域を出た本格的な攻撃になってしまう。
戦いとなれば森はエルフの得意とする場所ではあるのだが、相手はそれなりに訓練なり経験なりを積んできたと思われる者達のように見え、味方に全く被害を出さずに目的を達成できるとは思えない。
どうしたものかと困っている間にもマインは接近を続け、エルフ達が行動を決めかねている間にもうすぐそこという距離まで近づいてきてしまっていた。
「待て」
そこからさらに近づこうとしたマインを一人のエルフ男性が止めた。
弓を構えたまま、身を隠していた木立から飛び降りたそのエルフは弓に矢をつがえ、狙いはぴたりとマインにつけたまま続ける。
「それ以上、こちらへ近づくな」
「話を聞かせてもらえるなら、従おう」
マインはそう応じると、敵意がないことを示すために両腕を大きく広げ、目の前に降り立ったエルフ男性の答えを待つのであった。
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