03-04
さて物事というものは、困った困ったと頭を悩ませているだけでは解決しないものであり、解決させるためにひあどうしたらいいのかを考える必要がある。
行動目標は王都まで行くということであり、そこに至るまでの問題点は資金がないことと、領地間の移動許可が現状では取れそうにないということだ。
冒険者となったリドル達には領地間を移動する場合に領主の許可を特には必要とはしていないのだが、街道を見張っている関所自体が封鎖されてしまっているのでは、まともな道を通って移動することは無理だろうとマインは考える。
これに対処する方法は二つあり、一つh目は関所を強行突破してしまう方法だ。
もちろんこれは不法行為であり、バレれば官憲辺りがそのメンツにかけて、犯人を捕まえようとするだろうことは疑いようがない。
もう一つは関所ではない所から抜けるといった方法だ。
関所がカバーしているのは主要な街道で、その街道を大きく外れてしまえば、関所の目は届かない。
周回している警備兵はいるだろうが、領地と領地の間の境界線は非常に長く、全てを常にカバーできているわけではないのだ。
出し抜く隙はあるはずだとマインは思っている。
ただこの方法は道のない所を強行軍して行くわけで、その危険度は跳ね上がってしまう。
マインとしては、リドルが今のところ本調子ではない以上はできるだけ危険な所へは近づきたくはなく、二つ目の方法を取るのであれば、領都トゥゼットに留まってリドルの回復を待ちたいところであった。
しかし領都の状況からしてまともな治療や休息をリドルに受けさせるのは難しく、回復には長い時間を要しそうである。
何せ、宿すら取れずに冒険者ギルドの待合室で寝ているような状態なのだ。
通常の回復など望めようはずもない。
つまりは急いで王都へ行きたいと思いはするものの、その道中を超えるための要素を用意することができない、というわけだ。
「せめて一度、俺が王都に行ったことがあれば、まだなんとかなったんだがなぁ」
「おや? マスターはエイアンに行かれたことがないのですか?」
意外そうにアイに言われてマインはこくりと頷いた。
「一度も行ったことがないというわけじゃないとは思うんだが、何も覚えてない」
インダストロール王国の王都エイアン。
長いマインの人生の中で、一度も足を踏み入れていないとは考えにくい場所である。
何故なら不意にいなくなったり、放浪する癖のあるマインならば、各地の領都はともかくとしてそれなりの規模がある各国の王都くらいは物見遊山などで訪れているはずだからだ。
新興国などであれば行っていない可能性の方が高くなるが、インダストロール王国はアイの知る限りではまぁまぁの歴史を持つ国であった。
しかし、マインの印象には何も残っていないらしい。
何らk尚魔術で距離や時間を誤魔化そうとしても、対象となる場所の情報がなければ魔術を行使することができないのだ。
「座標情報がないから<テレポート>が使えない。<フライ>は術者しか飛ばせないから<マス・フライ>で全員飛ばそうとすると……俺が干上がらないか?」
「マスター、手段がもう無茶です」
<フライ>の魔術は第五位階だが、これを複数の対象に一度にかける<マス・フライ>の魔術は第六位階だ。
当然、消費される魔力の量は激増する上に、魔術自体が人の限界とされる第七位階の一歩手前の代物である。
ちなみに<テレポート>も第七位階の魔術だが、これには視界の届く範囲という制約があり、座標を指定して長距離を飛ぶのは<リコール>と言って第八位階の魔術であった。
魔術に関してマインが間違うなんて珍しいことだと思うアイへ、マインがむっとした顔で告げる。
「<テレポート>の魔術も工夫すれば座標指定で飛べるんだぞ?」
「表情で人の心を読まないでください」
「<クレヤボヤンス>の魔術と併用すればな……」
「さらっと並列行使の話をしないでもらえますか!?」
並列行使とは、全く違う複数の魔術を同時に行使する技術である。
言葉にするならそれだけのことなのだが、実際に実行する難易度は非常に高く、低位の魔術ですら中位から高位の魔術並みの難易度に変えてしまう。
当たり前だが、人の限界位階と言われている第七位階の魔術に並列行使を使うなどというのは、正気の沙汰ではない。
「誰かに聞かれたらどうするんですか?」
「誰も信じないと思うが」
「なるほど」
全く何も知らない者であれば、何かすごそうなことを言っているとは思うかもしれないが、何がすごいのかはまるで分からないだろう。
多少なりとも知識を持っている者であるならば、マインが言っていることがとんでもないことだということは理解できるのかもしれないが、あまりにとんでもない話であり過ぎるので。どうせ身の程知らずのイキった魔術師がホラ話でも吹いているのだろうと思ったことだろう。
いずれにしても本当にマインが<テレポート>の魔術と<クレヤボヤンス>の魔術とを並列行使できるとは思わないはずだとマインは思っていた。
「まぁ比較的どうでもいい話だな。仮に俺の素性が誰かにバレたところで何か問題があるわけでもないし、問題があったとしても黙らせる方法ならいくつかある」
懐柔するなり脅迫するなり、言葉でダメなら実力行使という手段でもいい。
手段とは選ぶからこそ面倒なのであって、選ばなくてもいいのであれば、大した手間にもならないのだとマインは思う。
「ではその選ばない状態で王都までの道を踏破する方法を」
「<ドミネーション>の魔術を使ってだな……」
「はい却下。その先は聞きたくないです」
<ドミネーション>の魔術は第五位階精神系のもので、抵抗に失敗した生き物を術者の支配下に置く魔術である。
その支配力は術者の実力によって変動するが、マインくらいになると対象の生死に関わるような命令も無理に実行させてしまえるようになる、中々に外道な魔術だ。
「マスター? 本気で王都に行きたいのでしたらもう少し真面目な方法を考えて頂けませんでしょうか?」
「それなりに本気なんだが」
「今のが本気なら、なお悪いです!」
王都に行くためだけに、魔術で操り人形を沢山作られたのではたまったものではない。
ここはしっかりと本気で止めておかなければ、どんな被害者が出るものか分かったものではないとアイがさらなる制止の言葉を口にしようとした時であった。
「失礼。王都がどうとか小耳にはさんだのですが、お話よろしいですかな?」
そう言いつつ急に話に割り込んできたのは、一目見るだけで相当金をかけているのだろうなと分かる仕立ての服を着た、一人の老人であった。
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