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 マイン達の一党が持つ強みの一つに荷物の少なさ、というものがある。

 何せ外から見ると、まともに荷物を持っているのはリドルくらいなもので、マインとアイはほとんど手ぶらに等しい格好をしているのだ。

 その割に持ち運んでいる荷物の量は尋常ではないのだが、これはマインとアイが<インベントリ>という機能を持つ魔術付与品を持っているからである。

 リドルが背負うバックパックにもいくらかその魔術が付与されているのだが、マイン達のものと比べるとかなり劣る代物で、見た目よりは多くの物が入るといった程度のものでしかない。

 これらのことが何を意味するのかと言えば、マイン達の一党は非常にフットワークが軽いのである。


「依頼を受けたその足で、そのまま迷宮に来れちゃうんだ」


 冒険者ギルドで迷宮調査の依頼を受けたマイン達は、そのまま街を出てすぐ迷宮に足を踏み入れていた。

 普通はそうなる前に薬やら雑貨やらの補充が必要で、作戦の打ち合わせなり何なりを行ってから迷宮に入るものなのだが、マイン達の場合は元々持ち運んでいる量が多いので頻繁な補充が必要ではなく、一党に人数も三人しかいないので、リドルが前衛を務めるという以外はマインもアイも前衛なのか後衛なのかよくわからないふわっとした感じでの陣形を組んでおり、それがそのまま継続されてしまっている。


「今回の調査だが、まずは一気に十五層まで下りよう」


 三人がyおこ並びに並んで歩くという、前も後ろもまるでない陣形で移動しながらマインが言う。


「それで十五層から地上へと戻りながら、依頼された調査を行う。最初から調査しつつ下りていくのは時間がかかりそうだしな」


 調査にどこのくらいの時間を割くのかにもよるが、最初から調査しつつ下へと潜っていったのでは浅い階層の調査に時間がかかる。

 その点、申請を必要としていない十五層まで一気に下りて、戻り足で調査を行えば帰り道の警戒と付近の調査とが同時に進行できるので、なんとなくのお得感があった。


「それ、十五層まで下りる労力を無視してるよね?」


「ただ下りるだけだぞ?」


 リドルの指摘にマインが不思議そうに言う。

 冒険者ギルドが領都の迷宮について地下五十層までを確認しているということは、そこに至るまでの地図が存在しているということだ。

 完全にその階層の全てを網羅しているというわけではないのだろうが、それでも五十層まで下りるための道程はしっかりと確認されているはずである。


「十五層までの道順は覚えた。道中、なるべく戦闘を避けて下の階層へ下りることを最優先とする」


 どうにか視界が確保できる程度の光に満たされた通路を、マイン達は小走りに駆け抜けて行く。

 たまに迷宮内の魔物がマイン達に気が付いたりもするのだが、彼らが何か行動を起こそうとした時にはもう、マイン達はそこを駆け抜けてしまっている。

 追いかけようとしてもマイン達の移動速度は速く、あっという間に見失ってしまう。


「魔物が反応する前に駆け抜けてしまえば戦闘にはなかなかならない」


「帰り道が怖いね」


「帰りは全部撃滅していくが、地上に行くにつれて弱くなっていくわけだから、段々楽になるはずだぞ?」


 迷宮は階層が深くなればなるほど、出現する魔物が強力になっていく。

 それは迷宮の核であるダンジョンハートを守るため、それに近づけば近づくほどに魔物が強くなっていくというのが定説なのだが、本当のところを知っているのは迷宮自身だけだ。


「マスター、この道順ですと下へ続く道の最短の経路を移動しているようですが、それでよろしいのですか?」


 アイの手が一閃すると、そこから二本のナイフが飛び出す。

 わずかな光を反射してきらめく刃は、マイン達の進行方向にいる何かに突き刺さり、短い悲鳴を上げさせた。


「行きも最短で行くが、帰りも最短で帰るよ」


「それ、調査になりますか?」


 アイの疑問はもっともなものであるはずだったが、マインはうろたえることなくその問いに答えた。


「少なくとも、未帰還者達の調査の一部にはなるはずだ」


 迷宮内で何らかのトラブルが発生し、それ以上前へ進むことができなくなった場合。

 どのような行動をとるのが最適解なのかと考えれば、マインはそこから撤退することだろうと考える。

 とても当たり前の考えのはずなのだが、まだいけるとかまだ頑張れると前へ進もうとし、結果として命を落とす冒険者というものは後を絶たない。

 そういった輩に関しては一度考えないものとして、撤退という選択をした場合に人はhどのような行動をとるのかと言えば、脱出口への最短経路を通り抜けようとするはずである。

 余程、そうできない何かがある場合は別だが、一刻も早く安全な場所にたどりつきたいと考えれば、最短経路を通りたいと考えるのが自然だろう。

 そして上手いこと地上へ戻ることができればいいのだが、そうならなかった場合は未帰還者となってしまうのだ。


「つまり、未帰還者の痕跡はこの最短経路沿いに残されている可能性が、そこそこ高いということなんだな」


「そこそこ、なんだ」


 思っていたよりかなり可能性としては低そうなマインの言い方に、リドルは苦笑する。


「そりゃな。人間、追い詰められた状況で常に最適解の手が打てるかと言われれば、それは否としか答えられないわけだし」


 もうダメかもしれないと思うような状況で、冷静に現在の位置を把握し、そこから脱出経路までの道順を導き出し、声と気配を忍ばせて地上への脱出を試みることができる者が冒険者の中にどれだけいると言うのか。

 少なくともリドルは、自分にそれを要求された場合にそれに応えられる自信がなかった。


「調査するには何かしらの目安がないとな。そういうわけで俺達は地下十五層から地上までの最短経路周辺を重点的に調べることにする」


 他にもこの調査依頼を引き受けた一党というものはいるのだろうから、マイン達が広範囲に渡って調べる必要はないはずである。

 ただ、似たようなことを考えている一党はいくつかありそうだなと、リドルは調査範囲がどこかの一党と重複したりしないことを祈るのであった。

現在、毎日更新継続中。

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