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2-26

 フロートキャッスルとは何か。

 そう尋ねられれば、マインは数ある拠点の一つだと答え、アイは盛大な無駄遣いの結晶の一つだと答える。

 とある海沿いの国から、かなり昔に買いあげた小さな無人島。

 そこへ城を建て、島内を整備し、拠点化したマインはそこから何を考えたのか、島を地盤から切り離し、空に浮かべてしまったのである。

 作った本人曰く、島を丸ごと浮かべられそうな魔術を開発したので、実地試験を兼ねてやってみたら格好良かったので永続化させてみた、という代物。

 馬鹿の思いつきにそれを実行出来るだけの能力が備わってしまっていたが故の悲劇であるとアイは思っていた。

 ただ、発想は馬鹿の一言で片付けられてしまうようなものなのだが、その機能は確かなものがある。

 何せマインが自ら、拠点とするべく整備した島なのだ。


「通信できなくなったのはいつ頃からだ?」


 マインがアイ達の前から姿を消した二十年程前までは、きちんと島とは連絡が取れていたことをマインは覚えている。

 しかし、その直後から連絡ができないようになっていたのだとすれば、フロートキャッスルにある設備は二十年以上前の設備ということになってしまう。

 当時は最先端の設備であったはずだが、現在の物と比べるとどうなのかは見て見ないことには分からず、アイの返答如何によってはフロートキャッスルはこの件に関しては使えない代物と判断せざるを得なかった。


「はい。最後に通信があったのはおよそ五年前。定時連絡を最後に連絡が取れなくなっております」


 連絡が取れなくなった理由はこの際、考えるのは後回しでいいだろうとマインは考える。

 通信の術式に問題が発生したのか、飛行の術式が上手に働かずに墜落してしまったのか、あるいはもっと別な理由が存在しているのか。

 いずれにしても直近の問題であるリドルの件について、フロートキャッスルが役に立たないということは確かなようであり、いずれ解決しなければならない問題ではあるのだろうが優先度はかなり下がる。


「ということは、王都しかないな」


 確認するべきことはし終えたので、マインは手を振ってアイを呼ぶまで座っていた席へと下がらせると、いつの間にやらテーブルの上に並べられていた料理と、その料理にパクついているリドルへと目を向けた。


「ごめん、先に頂いてるね」


「まぁ、冷めたら不味くなるからな」


 魔術師ギルドで誰かが施設を先に使ってしまわないようにと、なるべく早くに手続きをするためにマイン達は朝食を抜いていた。

 そこから昼食の時間に近いところまで時間が進んでいる上に、目の前へ温かい料理が並べられてしまっては、育ち盛りのリドルを待たせておくことは難しい。

 事前にそれを禁じていないのであれば尚のことだ。

 少々行儀が悪いかとは思うものの、それは後で注意しておけばいいかと考えて、マインはアイを促して自分達も料理へ手をつける。


「リドル、食べながらでいい。リドルの術式を調べる件だが、アイと相談した結果、この近隣で詳細を調べるのは無理だろうと判断した」


 パンを小さくちぎりながら、マインは旺盛な食欲を見せるリドルに話し出す。


「ついてはこれからの計画の話になるんだが、まずは路銀を稼ぎたい」


 魔術師ギルドへと持ち込んだ魔石は、マインの期待以上の値段がついたものの、その売却額だけでは三人分の様々な目的への費用と考えるとまるで足りない。


「路銀って、どこに行くの?」


「王都だ。王都の……何と言ったか……」


 辺境の農村に暮らして長いマインにとって、王国の名前とか王都の名前とかは比較的どうでもいい情報としてすっかり忘れ去られてしまっていた。

 何せ、リドルが村を出たいと言い出したり、そのリドルに何やら謎の術式がくっついていたりしない限りは足を向ける気が全くない場所だったからである。

 言い淀むマインにすかさずアイが助け舟を出す。


「インダストロール王国、王都エイアンになります。マスター」


「そうそこを目指したい」


 アイからのフォローに乗っかる形でマインがそう言うと、アイは軽く肩をコケさせて、どうせまたすぐに忘れるのだろうなと溜息を吐く。


「王都なら、私のその術式っていうのを調べられるの?」


「領都よりは可能性が高い」


 領都で駄目だったものが、王都でならばなんとかなるものなのかと懐疑的になり、あまり気乗りしなそうな反応をリドルは示した。

 この見方にはマインがすぐに修正を施す。


「王都というものは大体、国中から物や人、情報が集まる場所だ。領都よりずっと進んでいるし、規模が大きい」


 都市が大きく、その開発が進んでいればそこにあるギルドも比例して大きなものになる。

 ギルドが大きくなれば、そこにある設備もまた他のギルドより良い物が揃えられているものなのだ。

 マインとしてはまずそれで、リドルの術式を調べてみるしかないだろうと考えている。


「そこで駄目なら?」


 リドルが少しばかり悲観的な物言いをした。

 リドルからしてみれば、村とは比べ物にならない領都まで来て、そこでロクに分からなかったという結果から、他に行っても同じことになるのではないかと言う悲観的な見方をしてしまっているようだった。

 これはよろしくない傾向だとマインは、努めて何でもないことを説明するかのように軽い感じで答える。


「その次はこの国より魔術水準の進んだ国を探して、そこの領都へ行ってみて、そこで駄目ならそこの王都。最終的には魔術師ギルドの本部まで辿ってみるさ」


 それでも分からなければ、言葉にする気はないがマインはリドルを誘拐してでもいくつかある自分の拠点のどれかに年単位で引きこもることを覚悟していた。

 そこでまでしてでも、リドルの持つ術式に関しては詳細な解析を行うつもりだったのである。


「とりあえずその過程としてまずは王都エイアンに行きたい。行きたいのだが……路銀が心もとない」


 領都トゥゼットから王都エイアンまではマインが記憶している地図の情報だと、徒歩で十日程度。

 かなりの出費を覚悟して仕立て馬車を走らせると三日程かかる距離がある。

 いずれにしてもこの道程を移動するには、現状ではあまりにも懐具合に余裕がなさすぎるというのがマインの見立てであった。


「それなら迷宮でまたお金稼ぎだね」


「力を使うなと言った矢先ではあるんだがな」


 マインとアイだけでも金を稼ぐことは可能なのだが、リドルが仲間外れになるようなマイン達の行動を許容してくれるとは思えない。

 だが、迷宮で魔物と戦う場合はどうしても、リドルは詳細の分からない術式の力を無意識下で使ってしまうに違いなかった。

 マインとしてはどうしても気が進まない。

 しかしリドルは大丈夫だからとばかりに軽く笑って見せるのであった。

ブクマが剥がれると心が痛い。

仕方ないのよね、これもまた現実。


現在、毎日更新継続中。

ブクマ、評価、感想、いいねなどお待ちしております。

あと誤字指摘も随時募集中です。

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