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2-19

 迷宮と一言でいってもそのタイプは色々とある。

 大きく分けるのであれば、分類は二つ。

 一つは遺跡型というものだ。

 これはかなり昔に世界で栄えていたとされる巨大な帝国が各地に作っていた都市や施設の名残。

 所謂廃墟だ。

 廃墟と言われてしまうと金目の物など何も残っていない、潜るだけ損をするような場所のように聞こえるかもしれないが、この巨大帝国は現在からでは想像もできないような高い技術を有しており、廃墟と言えどもそこに残されている物には高い値段がつくことがある。

 これと対を成すのが生体型と呼ばれる型の迷宮だ。

 こちらの迷宮は、迷宮自体が生きているとされている。

 この生きた迷宮は自分の体内に生物を誘い込むことで、その生物が垂れ流している生命力や魔力といったものを吸収し、成長していく。

 これだけ聞くと生体型の迷宮にはいい所がないように聞こえるのだが、生体型迷宮の最大の利点は、迷宮内にいる魔物から魔石と呼ばれる結晶を採取することができるということだ。

 様々な用途に用いられるこの魔石という青く透明な石は、世界全体で常に高い需要があり、さらに消耗品であることも相まって採れば採れた分だけ売れる。


「都市の近くに迷宮がある場合、大体がこの生体型だな」


 冒険者ギルドを出て領都を抜け、防壁の外へと出るとすぐ近くに、交易所のような場所が設けられており、そこをさらに抜けた先にある小さな丘に領都トゥゼットの迷宮はあった。

 ぽっかりと地下へ向かってやや傾斜のついた通路が伸びているそこは、三人位ならば横並びになって歩いたとしても十分問題ないくらいの幅と、何か武器を振り回してみたとしても天井に当たる心配がないくらいの高さがある。

 まばらにではあるのだが、そこへ入って行ったり、そこから出てきたりしている数人の一党の姿がいくつかあり、その武装した姿からして彼らもまた迷宮を漁りに来た冒険者なのだろうと思われた。


「生きている迷宮の中に入るって、それって食べられるってことじゃないの?」


 そこに来るまでにマインからの説明を受けていたリドルが気味悪そうに言う。


「まさしくその通りだな」


 否定しないマインに、リドルの顔がさらに嫌そうに歪んだ。


「別に迷宮が俺達を噛み砕いたりするわけじゃないんだが」


 気分の問題なのかなと思いつつ、マインはリドルと並んで迷宮の入り口へと向かう。

 背後にアイがついてきているのを肩越しに確認しながら、マインは続けた。


「迷宮が食うのは人が常時垂れ流しにしている生命力だとか魔力とかだ。それと戦闘時にケガをしたりした場合、流れた血なんかも吸収されるな」


 迷宮の入り口を抜けると、中はつるりとした石に見える壁と床とで構成されており、生物の体内にいるような雰囲気は全くない。

 リドルを驚かせたのは、迷宮内部は外よりはやや暗いとはいえ、十分に視界を確保できるくらいには明るかったということだ。

 てっきり中は真っ暗なのだとばかり思っていたリドルは、マインが明かりの類を用意していないのは魔術でなんとかするつもりなのだろうと思っていたのだが、まさか迷宮に入るのに明かりが不要だとは思っていなかった。


「生き物に入ってきて欲しいなら、生き物が入りやすい状態にしておく必要があるだろう?」


 誰が好んで真っ暗な穴に入りたがるかと言われれば、確かにリドルとしても先の見えない穴の中へ足を踏み入れたいとは全く思わない。

 誰も中に入ってこないようでは、迷宮は餓死してしまう。

 それでは困るとなれば、人が入ってきやすいように中を明るくしておくくらいのことはしなければならない。


「まぁ親切なとこばかりじゃないんだがな。魔物はいるし、罠は仕掛けられているし」


 迷宮は人の体から発散されている生命力や魔力を吸収して命を維持していると考えられているが、生物の死体なんかも取り込んで餌にしてしまう。

 つまり迷宮内で死亡した場合、死体は残らないのだ。

 また犠牲者が持っていた荷物や装備なども全て迷宮に回収される。

 回収された物品は財宝として、迷宮が誰かを誘い込むための餌に再利用されるのだ。

 ただ、迷宮最大の産出物は魔石である。

 例外はあるが、迷宮へ入る冒険者達の目的にして最大の収入源がこの魔石なのだ。


「魔石ってどうやって採取するの? また解体とか?」


 迷宮の中で解体作業などしたくはないリドルではあるが、収入のためとあれば仕方がない。

 そう考えて覚悟を決めるリドルに、マインはあっさりと言い放った。


「迷宮内の魔物を倒すと、ドロップする」


「どろっぷ?」


 訝し気な表情をするリドルに、さて何と言って説明したものかと考えたマインは自分達が進んでいる通路の先を見て、何かの兆候を捉えてそれを指さす。


「リドル、あそこだ。迷宮の魔物がポップする」


「え?」


 訳が分からないままに、マインが指さした方向を見たリドルは何もない空間に黒いもやのような何かが生じると、そこからずるりとばかりに小剣を持ったゴブリンが一匹出て来たのを見て目を丸くする。


「迷宮は魔物を生む。これをポップすると言うんだが、迷宮産の魔物は外の魔物と似ているようで実は違う」


 ゴブリンは出現してすぐにマイン達を見つけ、これを敵だと認識したのか小剣を振り上げ、奇声を上げながら突進してくる。

 これに反応したのはマインでもアイでもなく、リドルであった。

 腰の剣を抜き放ちつつ前へと出ると、剣を大上段に振りかぶり、気合の声と共に一気に振り下ろす。

 これを小剣をかざして受け止めようとしたゴブリンだったのだが、剣と小剣とが打ち合った瞬間、小剣の方が折れた。

 リドルが放った一撃はゴブリンが持つ小剣を叩き折り、そのままの勢いでゴブリンの頭部を強打。

 ゴブリンの頭は砕かれ、色々名状したくない物が飛び散ったかと思うと、その全てが光の粒となって飛散し、床に親指の爪程の大きさの青い透明な石が落ちた。


「何これ?」


 剣を振りぬいた姿勢のまま、茫然と呟くリドルにマインが言う。


「これが迷宮産の魔物だ。外のと似ているが、実態のある幻みたいなもので、倒すと魔石と何かをドロップして消える。今回は魔石だけだったからゴブリンの中でもハズレの奴だな」


 何が起きたのか分からないままに衝撃だけ受けたようなリドルに、マインはそう説明してやるのであった。

現在、毎日更新継続中。

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