2-17
受付で所定の金額を支払えば、手続きはそれで終了である。
用事が終わったらさっさと帰れ、というようなギルドの職員に見送られつつマインは、リドル達が待つ場所へと戻っていった。
いつまでも立っているのも疲れるとでも思ったのか、リドル達はギルドの待合場所のようなところで、いくつかあるテーブルの内の一つを占拠しており、マインが戻ってくるのを見てこっちこっちと手を振る。
「待たせたか?」
「早かったよね?」
確認するようにリドルがアイへ言うと、アイは一つ頷いた。
待たせてしまったかもしれないとは思ったものの、考えてみれば受付はそれほど並んではおらず、時間としてはそれほど経っていない。
意外と列が短かったかなと思いながらマインは空いている席に座る。
「ところでマイン。ギルドのルールってそれに載ってるの?」
リドルが指さしたのはマインが受付でもらってきた冊子だ。
読めと言われて手渡された物なのだが、随分と手抜きだなと思う反面、登録者が来るたびにいちいち説明していたのでは受付もやっていられないのだろうな、という所まで考えたマインはふと、登録受付にいたのが男性職員だったことを思い出す。
冒険者ギルドの受付は、ほとんどの場合女性で、さらにエルフとハーフエルフが大半を占めているというのが現実である。
そんな中で、男性職員が受付をやっているというのはあまりないことのはずで、そのないことのはずに遭遇してしまったというのは、運がいいのか悪いのか、どちらなのだろうかと考えてしまう。
「どうしたの?」
「なんでもない。えぇっと……そうだな。この冊子になるべく守って欲しいらしいギルドの規約というのが書いてある」
「冒険者って、頭いいの?」
そう言われてみるととマインは冊子を開きながら考える。
こんな冊子があるのは、渡された側に文字を読むことができる能力があることを前提としている。
そうでなければ冊子に何が書いてあっても理解できるわけがない。
この対応が冒険者ギルドの普通なのであれば、冒険者は大概文字を読むことができるということになるのだが、文字が読める程度の教育を受けているのであれば、冒険者よりもマシな職業というものがありそうだとマインは思う。
「一党に魔術師がいることが前提なのかもしれないな」
単独で活動する冒険者という存在は少ないだろうとマインは思う。
何せ危険がつきまとう職業で、一つ間違えば大ケガを負ったり、死ぬこととて珍しくない職業なのだ。
そうなると仲間を集めて一党を作るということになるのだが、この一党というのは大体の場合、前衛三人後衛二人もしくは前衛二人の後衛三人という五人組で作るのが一般的であった。
後衛というのはマインのような魔術師や法術を扱う神官。
弓矢を得意とする野伏や盗賊といった職業になるのだが魔術師か神官のどちらかを一人入れておくというのは、一党を組む時の絶対条件のようなものである。
「なんで?」
「全員が物理的な攻撃しか持っていない一党は、それが効かない敵が現れた時に全滅するか逃げ出すかしか選択肢がなくなるからだな」
狩場なり仕事なりを選べばなんとかなるような話ではあるのだが、物理的な攻撃が効かない敵の代表格である、亡霊系の魔物というのは意外と遭遇率が高い。
それだけ無念を抱えたまま死に至り、アンデッド化してしまう者が多いということの表れでもあるのだが、そんな相手に出会ってしまって逃げられるならば問題はないが、逃げられない場合や逃げる前に仲間がやられてしまった場合などは、手詰まりになってしまう。
法術が使えれば直接亡霊などを天へと帰す<ターンアンデッド>の法術が使えるし、魔術師がいればただの剣などを亡霊系にも通用するようにする<エンチャット>の魔術によって対抗することが可能になるのだ。
そしてこういった魔術師や神官は、大概の場合は文字が読める。
魔術師は文字が読めなければ魔術師にはなれないし、神官は文字が読めずとも法術を授かることはできるのだが、神に祈るための聖書を読むにはやはり文字が読めなければ話にならない。
マイン達の一党はマインはもちろんのことリドルもマインから文字を習っているので読み書きに関しては問題なくできる。
「アイも問題ないな?」
「メイドとして普通のことです」
「文字の読めないメイドって、普通にいるぞ?」
「うちが派遣しているメイドは、全員読み書きができます」
そうじゃないと契約書とか主人からの命令書に対応できませんと胸を張るアイに、随分とちゃんとした組織を作り上げたのだなと内心で感心しつつ、マインはもらった冊子をぱらぱらとめくる。
「どんな感じなの?」
「大したことは書いてない。メンバー同士の殺し合いは止めましょうとか。もし起きてしまった場合は殺し得、殺され損でギルドは不干渉だが大概国の法律で捕まるとか」
「そりゃそうだよね」
「あとはなるべくギルドの貢献して、メンバー同士助け合いなるべく助け合いましょうくらいか。その他は冒険者のランクについての説明があるくらいだな」
マイン達が登録した黄銅級というのがランクとしては一番下である。
そこから黒鉄、白銀、黄金、白金、魔銀、緋金と上がっていくらしい。
一番上の緋金になると、現状では五人しか存在しておらず、その五人が一党を組んでいるので一党としての緋金はわずか一組しか存在していないということになる。
「会いたくないな」
「うん同意。ものすごく面倒そうだし、騎士王物語の主人公も確か、白銀級で止まってたはずだし」
「そうだったか? そこからどうやって建国まで持って行ったんだ?」
下から数えた方が速い階級で、よく国を作る所まで持って行ったものだと思うマインに、リドルは何か言いかけて、面倒くさくなったらしく首を振る。
「色々。ギルドの話が出なくなってからも長いんだもん。ギルドの階級に関しては作者が途中で忘れたんじゃないかって村のみんなが言ってたけど、私もそう思う」
「初期に色々考えてもどうせ後で使わなくなるという創作者あるあるだな」
「そうなんだ」
創作に携わる者が聞いたらきっと速攻で否定するであろう話をにこやかに行っているマインとリドルの姿を見つつ、アイはこの場に騎士王物語の他のファンやら、創作関係に携わっているような誰かがいないことを祈りながら、この話題がさっさと終わってくれるように願うのであった。
突如、Pvが10000を超えました。
ありがたやありがたや。
次は20000をお願いします(強欲
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