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そんな会話をしながら、マイン達は領都の冒険者ギルドに到着する。
建物はかなり大きく立派なもので、それを目にしたリドルは感嘆の声を上げつつそれを見上げた。
「大きいね」
「冒険者は数が多い。その多い冒険者の上前をはんてる組織だからな」
冒険者ギルドは非常に金持ちである。
これはギルドに仕事を持ち込む依頼人から手数料を出させ、依頼を受けた冒険者からも手数料を差し引くからだ。
さらにギルドのメンバーから年会費も徴収しており、その件数が膨大な数になるとくれば、冒険者ギルドが資金的にどのくらい潤った組織なのかはすぐに分かりそうなものである。
そうやって集められた資金は惜しみなくギルド設備の整備に使われ、マイン達が訪れた冒険者ギルドも入り口の扉を開けて中へ入ると、きれいに整備され、かつ天井も高い広々とした空間が広がっていた。
その広くて清潔な空間には真新しい装備に身を包んだ若い男女の姿や、エルフやドワーフといった亜人達の姿。
そしてそんな彼らに大して丁寧に対応する制服姿のギルド職員達がいる。
その光景と雰囲気は、リドルがそれを読むことで感化され、ゴブリン退治や旅に出ることを決めた騎士王物語という小説に書かれていた、まさにそのものであった。
ついにここから、自分の冒険者としての人生が始まるのだと思うと身の引き締まる思いがするリドルなのだが、希望やら未来やらに思いをはせて顔を輝かせるリドルとは違い、マインとアイはどこか沈痛な面持ちでギルドの中を眺めている。
「なんて顔しているの二人共」
マイン達の様子に気が付いたリドルが呆れたという顔と口調で効くと、マインがどんよりとした顔のままそれに答えた。
「およそ一割だそうだ」
「一割って?」
「この時期の新人冒険者が一年後も活動している割合」
「え?」
「ちなみに最初の一ヶ月でおよそ三割が脱落すると言う記録がある」
「脱落者の七割は死亡。二割が体の欠損等による引退。残りは生死不明のままの行方不明ですとか、通常の引退。変わり種ですと寿引退なんていうのもあるそうです」
「寿引退って?」
冒険者ギルドに来た理由は、リドルに冒険者としての登録を受けさせるためであり、マイン達は会話しつつ適当な列へと並ぶ。
「寿引退っていうのほあ、冒険中に誰かに見初められてそのまま結婚に到達して冒険者を辞めることだな」
「一部の女性冒険者の理想だそうです」
「そうなの?」
「私からは何とも。受け取り方や感じ方は人それぞれでしょうから」
アイにはぐらかされた形となったリドルは視線をマインへと向けたのだが、マインは無言で首を横に振る。
魔術師として、実は伝説のと称されるようなマインであり、実に数百年という年月を生きてきている存在なんどあが、これまでに結婚というものをしたことは一度もなかった。
つまり、リドルの質問の答えはマインの知らないものであり、答えようがなかったのである。
「とりあえず、登録する前から引退の話をしていても仕方ないな」
効くともなしにマイン達の会話を聞いていたらしい周囲の冒険者達から、かなりどんよりとした雰囲気が漂い始めているのに気づいて、マインは話を切り上げる。
アイはすました顔で頷き、リドルは居心地悪そうに体を縮こませた。
マイン達が黙りこんでからしばらくして、並んでいた列は順調に消化されていき、やがてマイン達の順番が回ってくる。
「お待たせ致しました。本日はどのようなご用件でしょうか?」
礼儀正しく愛想よく、笑顔と優しい声音で話しかけてきた受付嬢は長い金髪と青い瞳をした線の細い美女であった。
日焼けなど全く見られない白い肌と、短剣の刃の様に尖って長い耳が見えている。
耳の長さと体の細さからして、この受付嬢はエルフだろうなとマインは推測した。
これがハーフエルフだと耳が少し丸みを帯び、体の肉付きが人族寄りかそれ以上のものになる。
とても不思議なことに、エルフは男女総じてスレンダーであるというのに、ハーフエルフは中くらいから巨を越え超とか爆なものを持っていたりするのだ。
マインはこれを他種族の因子が入り込んだことによるバグなのではないかと考えていたが、調べたこともこれから調べるつもりもない。
そんなことを考えていたマインは受付嬢が不思議そうな顔をしているのを見て我に返る。
何かと思えば傍らに立っていたリドルが緊張からなのか、完全に固まってしまっており、受付に来た要件を切り出せずにいたのだ。
「この子の冒険者登録と、一党の申請に来たんだ」
これは自分が話を進めるしかなさそうだと、マインは半歩ほど前へ出て、リドルを半歩下がらせる。
「なるほど、ご登録ありがとうございます。こちらに記入の上、一番の窓口へ提出をお願いいたします」
受付嬢はマインの前に二枚の紙を差し出し、記入するための机がある場所と提出するための窓口がある場所とを手で指し示した。
それに礼を言って、マインはまだ動きの固いリドルとアイを連れ得t列を離れ、記入する机へと向かう。
「ご主人様は文字の方は?」
「か、書けるよ。マインに習ったんだ」
少し緊張が解けたらしいリドルがアイと話しているのを聞きながら、マインは渡された紙を眺める。
一枚はリドルの冒険者への登録申請で、名前や年齢、職業を書く欄があった。
もう一枚は一党の結成申請で、マインは自分の名前と二十一という年齢、それに魔術師という職業を所定の欄へ書き込んでいく。
「アイはどうする?」
「仲間外れにされるおつもりでしょうか?」
「そんなつもりはないが。職とかどうするんだ?」
「当然メイド、と記入致します。他の職にしますと対応するギルドで登録しなおさなければならなくなりますので」
マインやアイの身分を保証しているのは魔術師ギルドやメイド派遣協会といった組織であり、そこに登録されている情報と違うものを名乗るには、改めて別の組織に登録しなおすか、元の組織にその情報を認めてもらうしかない。
アイの場合、メイド派遣協会という組織になるので、メイド以外の登録を認めてくれるわけがないことはなんとなくにでも分かる。
しかし、冒険者一党の登録に、職業メイドと記して果たして認可が通るのだろかとマインは不安になるのであった。
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