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2-13

 翌日、宿で朝食を摂ったマイン達はその足で冒険者ギルドへ行くことにする。

 宿の朝食は切り込みを入れたパンに野菜と肉を挟んだもので、これは肉の量や野菜の質に差はあるものの、村でも食卓にのぼっていたメニューである。

 これが一人に二個とミルクが一杯ついていたのだが、自分の分を平らげてから物足りなそうな顔をしていたリドルにマインとアイはそれぞれが朝食の半分を融通した。


「なんだろ? 妙にお腹が空く」


 合計四個のパンをもりもりと消費しながら、首を傾げるリドルなのだが今のところはマインから見て、ちょっといつもより多く食べているかなと思う程度のものなので、特に何かしらの異常があるようには思えない。


「私、太るのかも」


「大丈夫だとは思うが、心配ならアイに相談するといい。ちょっとその手の話は俺では手に負えないかもしれない」


 頼めるだろうかとマインがアイに尋ねると、アイは無言で頷く。

 リドルはマインからすれば異性であり、その体に就いての知識はあれども何かしらのアドバイスができる程に詳しいわけではない。

 その点アイは同性であり、マインよりは的確なアドバイスができるのではないかと考えたのだが、ふと、アイはホムンクルスであってそもそも種族からして違うのではないかということに思い当たる。


「えぇっと……」


「大丈夫ですマスター。基本的には同じ造りになっております」


 確認せねばと思ったものの、どう聞いていいやら分からずに言葉に詰まったマインに、何故あなたがそこを疑問に思うのかという気持ちを言外にたっぷり込めながらアイが答える。


「ご主人様の体調、栄養管理については私にお任せを」


「そうか。じゃあ頼んだ」


 丸投げではあるのだが、マインよりは確実にアイの方がこの件に関しては専門家だ。

 もしアイの手にも負えなくなった場合は栄養学やダイエットなんかを専門にしている子をアイに呼んでもらう必要があるなとマインは心の片隅に留めておく。


「冒険者ギルドってどんなとこなの?」


 宿を出て、朝の領都を歩きながらリドルはマインに尋ねた。

 小説の中で出てくる冒険者ギルドは読んで知っているリドルなのだが、実際のものは見たことがないし、何も知らないに等しい。


「支部によるな、それは」


 マインはリドルが理解し易いよういに考えながら答える。


「一般的なイメージとしては、ガラの悪いおっさんが始終たむろしているような場所、みたいな感じなんだが」


「おっさんがたむろ……」


「リドルのイメージだと美男美女の少年少女がいっぱいいて、美人の受付嬢がカウンターに座ってる、ような感じか?」


 マインが言ったのは娯楽小説などに出てくる冒険者ギルドだ。

 リドルが感化された騎士王物語という娯楽小説でも、主人公が冒険者ギルドへやってきて、肌も露な女性冒険者や姉の様に振舞うギルド受付嬢に照れて赤面し、幼馴染に嫉妬されるといったシーンがあるのだが、現実の冒険者ギルドはそんなほのぼのとした雰囲気とは程遠い場所である。


「ただ……今時期は小説で書かれているような雰囲気に近いかもしれないな」


 少しがっかりしたような雰囲気を漂わせたリドルだったのだが、マインが付け加えた情報にやや表情を明るくした。


「そうなの?」


「あまりいい話じゃないんだが、まず受付嬢は通年で実は美人が多い」


「何故?」


「採用基準が顔、という噂もあるんだが、実際にはエルフやハーフエルフが多いからだ」


 エルフとは主に森に住んでいる細身の亜人であり、ハーフエルフとはそのエルフと人族との間に生まれた子供のことを言う。

 いずれも人よりかなり長命で、見た目が美しいことで知られているが、これとギルドの受付嬢との関連がリドルには分からない。


「受付嬢が美人だと、冒険者の行動がおとなしめになるといった話がある」


「そうなの?」


「冒険者の男女比は七対三だそうだ」


 答えなのかそうでないのか。

 よくわからないマインの言葉にリドルは眉根を寄せたのだが、マインはそれ以上の説明をしようとはせずに別の理由について話し出す。


「エルフやハーフエルフは寿命が長い。大体エルフで数百年。ハーフエルフはその半分くらいだと言われているな」


「長寿のメリットって?」


「単純に人員入れ替え回数の減少。それと経年による経験の蓄積。特に冒険者への助言に必要な知識と経験を積むといった点では人より圧倒的に有利だな」


 自分が経験したにせよ、誰かから聞いた話にせよ、とにかく蓄積といった点に関してエルフの右に出るものはほぼいない。

 マインのような存在は例外中の例外であり、普通は考慮されないのだ。

 故に個人として長くギルドの所属していられるという点ではエルフが最も優れているとされている。


「ドワーフじゃ駄目なの?」


 寿命という点では、ハーフエルフに並ぶくらいの種族である。

 エルフが選ばれてドワーフが選ばれない理由とはなんなのか。

 尋ねたリドルにマインはちょっと困った表情を見せたのだが、すぐに答えを返した。


「見た目と性格だな」


 ドワーフは背丈が低く、全体的にずんぐりとしており、顔は年齢的に若くとも人で言う中年男性、中年女性くらいに見られる顔をしている。

 それはそれで味があると思う者もいるのかもしれないが、一般的に人族からの受けはエルフに比べると格段に劣ってしまう。


「おまけにあまり社交的じゃなく、性格は頑固で扱いづらい」


「職人としては一級品なのでしょうが、メイドにも向かないですね」


 アイに言われてリドルはドワーフのメイド姿というものを想像してみたのだが、途中で何か恐ろしい物を想像してしまいそうな気がして慌てて中止する。


「受付嬢さんの件は分かったけど、ギルドの雰囲気の方は?」


「この時期、冒険者ギルドの平均年齢がぐんと下がるんだ」


 その理由はこの時期、春先に行われる年に一度の成人の儀のためであった。

 あちこちの村や町で成人になった者の内、家を継ぐことができない貴族や商家の次男次女以降の者。

 あるいは一攫千金を狙う農村部の子供らなどが冒険者という職に雪崩れ込むのである。


「大半が一年ももたないんだが……まぁこの時期に冒険者ギルドが華やいで、質が落ちるのは風物詩というやつだな」


「嫌な風物詩だねそれ」


 そうは言ったものの、自分もその中の一人なのだと悟ったリドルは、げんなりとした表情で首を竦めるのであった。

200p手前で増えたり減ったりするのが辛い。

PVもなかなか一万に届かない。

もっとボクにアイをください。


そんな感じで。

ブクマ、評価、感想、いいねなどお待ちしております。

あと誤字指摘も随時募集中です。

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