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2-9

 マイン達が入都手続き待ちをしていた列の先頭には物々しい雰囲気が漂い、領都側の役人と兵士の一団を相手に、五人組の武装した冒険者らしき一党が食って掛かっている。


「一刻を争うんだ! 通してくれ!」


 冒険者の一党のリーダーらしき男が叫ぶと領都側の役人である女性が首を横に振る。


「通せません。入都チェックを全員行う規則ですし、順番の横入りは認められません。きちんと並んでください」


「並んでたらいつ入れるか分かったもんじゃねぇだろうが!」


 リーダーの男が入都待ちの行列を指さす。

 行列は長く続いており、その末尾にこれから並んだとすれば、日没までに入都できれば御の字なのではないかと思われた。


「仲間が死にかけてるんだ! 頼む!」


 見れば一党の中の一人。

 軽装の革鎧姿の女性が意識を失った状態で、リーダーとは別の男に背負われていた。

 余程深い傷を受けたのか、その左肩から体にかけて粗末な包帯が応急的に巻かれてはいたが、あふれる血を止めることができておらず、包帯自体も血を吸って湿り、赤黒い色を呈している。

 今にも死んでしまいそうな様子と言えば、なるほど確かにと頷いてしまいそうになる光景を見て、それでも役人は引かない。


「これまで大けがを装って領都に入り込もうとした不届き者がいなかったとでも思っているのですか?」


 一歩も引くものかとばかりに役人の女性がリーダーの男を睨みつけると、男の方が気圧されたようにたじろぐ。

 そこへ追い打ちをかけるように、役人の女性が言い放った。


「我々は領都に不審な人物や物を入れないよういにするためにここにいます。そのために例外は認めません!」


「人が死にかけてるんだぞ!」


「そうなることも承知の上で冒険者になられたのではないのですか?」


「それは……」


 冒険者とは危険と隣り合わせの仕事が多く、その過程で命を落とす者が少なくない。

 そんな冒険者が死にかけるたびに、何らかの定められているルールを無視していたのでは、ルールを決めている意味がなくなる。

 それによくない目的をもって領都へ入り込もうとする者ならば、チェックをすり抜けるために仲間に瀕死の重傷を負わせるくらいのことは平気でやりかねない。


「とにかく、例外は認められません! さがりなさい!」


 役人の女性の一喝に、リーダーの男は返す言葉もなく怯んだが、その目は追い詰められた獣の雰囲気を醸し出し始めている。

 命を失うことも承知の上で冒険者になったとしても、既に死んでいるならば諦めもつくのであろうが、まだその仲間は生きているのだ。

 助からない者を諦めるのとはわけが違い、助けられそうな者を諦めるというのは非常に難しい。

 役人や兵士に逆らってでも、この場を強行突破するべきか、それとも仲間の一人を諦めて残りの仲間の安全を確保するべきなのか。


「おかしなことは考えない方が身のためですよ。一人失うのと全滅するのとでは話が全く違いますでしょう?」


 リーダーの男の不穏な気配を感じ取ったのか、役人の女がわずかに後退し、代わりに兵士達が身構える。

 これは周囲にいる自分達も危ないのではないかと、列に順番待ちをしていた者達も逃げ出すかこの場に留まるかを迷い始めた時、張りつめた空気を弛緩させるようなゆるい感じに、誰かが手を叩く音が響き渡った。

 誰がそんなことをとその場に居合わせた者達が音の出所へと目を向ければ、ゆったりとしたローブ風の姿をした若い男が革鎧に身を包んだ赤毛の少女と共に立っている。


「なんだお前……」


「ケガ人がいるなら看てやるから。馬鹿なことは考えるな。今日中に都に入りたいのに、野宿なんかになったらたまらん」


「なんだとてめ……え? 看てくれんのか? あんたヒーラーか?」


「なんでもかんでもヒール一発で解決できると信じてる阿呆でも、神頼みしていれば世界はなんとかなると思っている馬鹿でもないよ。少しばかり多芸な魔術師だ」


「魔術師って……」


 リーダーの男の顔が曇った。

 神官なり回復系統の魔術に長けた者を総称してヒーラーと呼ぶことがある。

 彼らは主にケガなりなんなりを術を用いて癒やすのだが、その力に傾倒し過ぎていて回復術こそが至高で、これさえあればなんでもできると思い込んでいる術者が少数ではあるが存在していた。

 これには過去の偉人の逸話などが関係しているのだが、今は無関係である。

 回復術自体は魔術にもあるので、魔術師であれば大なり小なり使えるはずなのだが、イメージ的の魔術師というものは治癒とは程遠いと見ている者が、結構いたりするのだ。

 この冒険者一党のリーダーもそう言った類の人間であったらしく、ローブ姿の男を見る目がかなり疑わしい物を見る目であった。

 これは声をかけたのは失敗だったかなと、内心でぼやいているローブ姿の男とはマインのことだ。

 大きそうなトラブルさえなければ領都に入れそうな状況で、その大きなトラブルが起こりかけていればこれを防ごうと考えるのが自然である。

 そんな訳でマインは列に並ぶのをアイに任せて、リドルを連れて騒ぎの元になっていた列の先頭まで移動してきたのだ。

 そこで言い争う者達を目にし、その原因がどうやら死にかけている軽装の女性にあるようだと見たマインは、これが手のつけられないトラブルに発展する前にと声をかけたのであった。


「魔術師で不服なら、錬金術師でも薬師でもいいぞ。一通りの薬は作れる」


「本当か!?」


 市場に流通している薬は薬師という専門職か、錬金術師が作って流している。

 魔術師よりは治癒というイメージに近かったらしく、冒険者達の顔がぱっと明るくなった。


「但し、無料奉仕はしない。治療費はきっちり払ってもらう。それと大人しくこの場から離れることが最低条件だ」


 その言葉は冒険者達だけではなく、領都の役人にも向けられていた。

 この場を騒がせた罪で冒険者に手を出すつもりならば、この場の収拾には手を貸さないと暗に提示しているのだ。

 もしマインが手を引いて、この場で戦闘でも起きようものならば、領都の役人や兵士達とて後で何らかの処罰を受けかねない。


「こちらは順番さえ守ってもらえれば、特に何もしません」


「そ、その条件で頼む」


 損することはないのだから、双方共に条件を飲んでくれるだろう。

 そう思っていたマインの考え通り、役人の女もリーダーの男もその条件で了承したと首を縦に振ったのであった。

パリクールを駆使してゾンビを倒すゲームに興味が。

でもやり始めたら文章書く時間がなくなりそうで手が出せない。

ながらでやれるゲームはやはりソシャゲなのか。


そんな感じで。

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