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2-7

 マインは自分が持つ一般常識系統の知識がいささか古い物であることを知っている。

 それ故、自分の知識だけでなく自分達よりも世界というものを知っていそうなアイにも尋ねて情報の摺合わせを行っていた。

 それらの情報によれば、街道上や森、平野といった場所で今回マイン達が発見したような事後の現場というものに出くわした場合、一般的な対応は何かと問われれば驚いたことに取れそうな物を取って放置する、というものであるらしい。


「そうなの?」


 リドルもそれを聞かされて驚いたのだが、当然これには訳がある。

 まず現場から近くの街までの距離だ。

 マイン達の移動速度では領都まで一日半かかるということは、すぐに通報して折り返してきたところで、現場に戻ってくるのはほぼ三日後ということになる。

 馬やら何やらを使えばもっと早く戻ってくることができるのかもしれないが、その間放置された現場がどのような惨状になるのかは少しばかり考えれば想像することは容易だ。

 生き残りがいるのであればそいつを尋問して事の次第というものを調べ、必要ならば罪を償わせてもいいが、全滅している場合は罪も真実も持って行く先がない。

 遺族がいれば事の真相というものを知りたがるかもしれないが、一人も生き残っていないのではその真相の情報というものを入手することができないのだ。


「放置ってこのまま?」


「一応埋葬することが推奨はされている。だが、できない場合が多いんだろうな」


 たとえば今回の件だと、マイン達は三人で十数人分の墓穴を掘り、馬車を処分してやらなければいけなくなるのだが、それがどれだけ大変な仕事になるのかは誰でも分かりそうなものだ。

 だからこその強制ではなく推奨というわけで、手間賃として死者の荷物に手をつけることが許されていたらしいのだが、実際は手間賃だけとって埋葬はしないという者が多いらしい。


「それじゃあっちこっちを歩き回るアンデッドが減らないわけだな」


 死体を放置すると、一定の確率でこれがアンデッド化し、多くの場合はゾンビが生まれる。

 この一定確率というものは場所や死者が残した思念などで上下するのだが、きちんと葬られた死体はアンデッド化することが少ない。


「マインはどうするの?」


「もちろん。手間賃をもらった上で死体はきちんと埋葬する。何せ俺達は金欠で、死者は金を使わない。墓穴はアイに掘ってもらおうか」


「マスター!?」


「冗談だ。魔術師らしく魔術で何とかする」


 ぎょっとして目を大きく見開いたアイにぱたぱたと適当な感じで手を振ってから、マインは転がっている死体を調べ始めた。

 これはリドルにやらせるには少々刺激の強すぎる作業であるので、マインは自分一人でやることにしてリドルやアイをそこから遠ざけておく。

 金目の物の筆頭は、死体の各自が持っている財布だ。

 中には額面の大小はあるものの、金が入っている。

 ただこれに関しては、マインはほとんど期待していなかった。

 これから危険な所を移動するというときに、わざわざ大金を持って移動するという者は普通いない。

 大金を移動させることが目的であるならば、現金は財布ではなく金庫に入れておくものである。

 雇われている側の財布は、雇っている側の財布よりも期待値が低い。

 もし雇われている側の財布が金で潤っていたのならば、おそらく死体となっている彼らはこんなところで仲違いなり裏切りなりで全滅するようなことはしなかったことであろう。

 金持ちはケンカをしないものだ。

 実際、マインが集めた財布の中身は銅貨と銀貨ばかりであり、全て集めてみても総額で金貨三十枚程度のものであった。

 続いて武装している者達の装備なのだが、かなり激しく戦ったのか防具や服については全員がぼろぼろで、とても再利用できるようには見えない。

 死者の服を剥ぐというのも気が引ける行為であるので、そちらには手を付けないこととして武器の方を集める。

 質は様々ながら剣が合計八本。

 あとは弓と杖がそれぞれ一つずつあったのだが、そちらは使い道がなさそうだったので死体と一緒に埋めることにする。

 装飾品の類は、唯一馬車の中で死んでいた少女がいくつか身に着けていたのだが、リドルがもの言いたげな目でじっとマインのことを見ていたので、マインはこれに手をつけないことにした。

 埋めたところで、とは思うもののリドルの心情も察することができるものであり、マインとしては仕方がないかと諦めるところである。

 その他の荷物は食料やテント、灯りや雑貨の類であったのだが、こちらは持って行ったとしても大した金額にはならず、死者の使っていた物を食べたり飲んだりするというのも何となく嫌な感じがしたために、全て死者と共に埋めて処理することにした。


「マスター、馬車はどうします?」


「埋める。使い道はあるかもしれないが、持ち運ぶのが大変だ」


 逃げられないようにするためだったのか、馬車に繋がれていた馬達は全て殺されてしまっていた。

 これでは馬車はただの車輪が付いた箱であり、これを移動させるのは一苦労である。

 結局、金貨三十枚程度の現金と剣が八本という成果に、マインは期待外れだと渋い顔をしたものの、全くないよりは助かるかと自分を慰めてから魔術を行使する。


「<コントロール・アース>」


 それは地形を操作する第五位階の魔術。

 地面が生き物のようにうねり、あっと言う間に死者と同じ数の墓穴を作る。


「並行起動。<クリエイトゴーレム>」


 もう二度と動くことがないはずの死体が次々に、ゆっくりとした動作で立ち上がる。

 まさかもうアンデッド化したのかと見守っていたリドルが身構えるが、大丈夫だとばかりにアイがリドルの肩を押さえた。


「問題ありませんご主人様。あれはゾンビではなくフレッシュゴーレムですので」


 様々な素材を用いて魔術によって作られる人形であるゴーレムの内、死肉などを使って作られるのがフレッシュゴーレムだ。

 次々にゴーレムとなって操られた死体は自分の足で歩き、自らできたばかりの墓穴へその身を横たえていく。

 あとはその上へ魔術で操作された土砂が覆いかぶさり、死者の埋葬はあっという間に終わった。

 残った馬車や馬の死体は地面が触手のように持ち上がり、それら全てを巻き込むと、肉の潰れる音や馬車が砕かれる音などを立てながら全て抱えて土の中へと戻っていく。

 後に残ったのは平らな地面だけだ。

 ここに死体や馬車が転がる惨状が広がっていたとは、とても思えない。


「こんなものか。後は祈りの言葉の一つでも唱えてやれば終わりだな」


「司祭様とかいないんだけど……」


「問題ない。真似事になるが俺がやろう」


 マインは魔術師であるが、教会の書物もかなりの数を読み込んでおり、中には死者に手向ける祈りの本もある。

 それはマインが持て余していた暇が成した結果の一つであった。

何か面白いゲームがしたいけれど、ゲームをしてたら

原稿が書けない。

しかし、ゲームをしないとファンタジー成分の補給が……


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