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「話を元へ戻しましょう」
マインとリドルの会話に割り込むような雰囲気でアイが話の流れを変える。
元とは言っても現在どちらに向かって進んでいるのかという話の流れそのままではなかったのかと不思議がるリドルに、アイは指を突き付けて言う。
「問題は領都で何をするのか、ということです」
それは考えていなかった、とリドルはマインへ目を向ける。
意見を求められているのだろうなと考えたマインは、予め考えていたこれからの方針について話し出した。
「まずはリドルを冒険者ギルドに登録するべきだろうな」
「それはそうだね」
リドルとしては物語の主人公よろしく、冒険者から英雄へと至る道というものを歩きたいという思いからの同意だったのだが、マインの考えは違っていた。
「自由民のままでも構わない気はするんだが……やはりちょっとな」
「自由民って、駄目なの?」
「駄目という訳じゃないんだが、自由民というのはどこにも所属していないということだからな。有事の際には色々と弱い」
リドルの言う自由民という身分は、よく言えば全く何のしがらみもない自由な存在だと言えなくもないのだが、逆に言うと誰もどこからも守ってくれない存在ということでもあった。
これが領民であれば色々と問題や差異はあるものの、基本的には領主が守らなければならない存在として扱われる。
その為に民は領主に税を支払うわけなのだが、リドルはそういった社会の枠の外にいることになっているのだ。
同じ自由民の枠ではあるものの、マインは魔術師ギルドに所属していることによって魔術師ギルドという組織に守られる存在であるし、アイはメイド派遣協会から守られる資格を持っている。
では、リドルをどこかそういった組織に所属させようと考えた場合。
選択肢は二つしかない。
一つは教会だ。
どこの宗派に属するのかという違いはあるものの、基本的に教会とは神に仕える者達の集まりであり、その門戸を叩く者を拒否することはない。
ただ、教会関連のしがらみは領民やら何やらのしがらみに比べるとはるかに強いものであるので、所属した者の行動にはかなりの制限が課される。
しかも一度所属してしまったら最後。
そこから抜けるということがほぼできない。
教会から抜けるということは、基本的には破門扱いになり、これは自由民よりさらに酷いことになりかねない社会的な烙印となるのだ。
軽はずみな気持ちで所属できない組織であるし、リドルの場合はその身に帯びている力についてまだまだ分からないことだらけであるので、マインはこの教会という選択肢は真っ先に外している。
二つ目がマインが選択した冒険者ギルドだ。
こちらは凄まじく敷居が低い。
基本的に加入を希望すれば、誰でも加入できる。
犯罪歴を調べられはするものの、犯罪者でなければ所属を断られることはまずないと考えて間違いない。
冒険者、などと名乗って入るものの、血沸き肉踊るような冒険の日々が所属した者達に待っているというわけではなく、その仕事のほとんどは人がやりたがらないような雑用や、危険な魔物の討伐依頼といったものが大半だ。
実はマインはかなり昔に、冒険者などと名乗っていても冒険をしているわけではないのだから、なんでも屋辺りに改名したらどうなのかという提案を冒険者ギルドにしたことがあるのだが、これに関しては猛反発され検討もされなかった。
何がどうなって彼らが冒険者などと名乗るようになったのか。
それは未だに謎であり、マインも知らないし調べる気もない。
そんな冒険者ギルドなのだが、来る者は拒まず去る者は追わずというスタイルから、加入している人数だけは非常に多く、組織としての力はそれなりにあった。
いつまでそこに所属し続けているかは分からないとしても、リドルが所属するには実に手頃な規模と条件の組織であるとマインは思う。
ちなみに、その他にも色々と互助組織であるギルドというものは存在してはいるのだが、リドルを所属させることを考えると、やや難しいのではないかと思わざるを得ない所ばかりでマインも選ぶことができなかった。
例を上げればマインが所属している魔術師ギルドなのだが、ここは魔術師同士の互助組織であり、当然所属している者は魔術師かそれに準ずる者しかいない。
ここへリドルを所属させようとすると、リドル自身が魔術を多少なりとも扱えなければ話にならないのである。
仮にマインがリドルを弟子扱いにして、魔術師に準ずる者として推薦してみたとしても、リドルに魔術の技能が全く備わっていない状態では許可など下りるはずがなかった。
同じ理由で他のギルドも、大体はそのギルドに所属するための専門的な技能というものが必要であって、現状特に何も技能を持っていないリドルを所属させるのは、かなり難しいだろうとマインは結論付けている。
「ただリドルを冒険者ギルドに登録するのにも、問題があってなぁ」
「それは私が弱すぎるからとか?」
つい最近までただの村娘であったリドルには戦う技術がない。
冒険者と言えば魔物やら野盗の類と戦うイメージが強く、自分では力不足だと判断されるのだろうかと項垂れるリドルなのだが、そこに関してはマインもアイも全く心配していなかった。
何せこれまでにゴブリンやらコボルトやらオークと戦い、少なからずこれらを倒してきているのだ。
これで冒険者として認められませんと判断されたのならば、冒険者ギルドに入ってくる新米冒険者の半分くらいがふるい落とされなければいけないだろうとマインは思う。
では何が問題なのか。
「登録料がな。確か金貨十枚だったか」
来る者は拒まずではあるのだが、誰でも構わず所属させていたのでは組織は肥大するかもしれないがすぐに破綻しかねない。
そういう建前から冒険者ギルドは初回登録時に登録料を徴収していた。
べらぼうに高いという金額ではないものの、右から左にさらりと出せるようなものでもないその金額は、マインの懐にはない金額である。
「領都に入るのにも入門料が必要になるし……とかく金欠というわけだ」
「気前よく村に置いて来なければよかったね?」
「かもしれないが、世話になった村だからなぁ」
仕方ないだろうとマインが溜息と共に吐き出すと、リドルはそうだねと答えながらも笑顔を見せたのであった。
日間ランキングに載ってみたいとか舐めたこと抜かして
すいませんでしたーっ!(なんか減ったらしい
そんな感じで
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