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結果として、村の人的被害はほぼ無しという望外のものになった。
ケガ人はいくらか出たものの、マイン達の育ての親が速やかに村人達を避難させ、村を襲ったオーク達が対して賢くなかったことから、村人達をあっさりと見失ったからであるらしい。
オーク達は襲うべき相手を見失い、その腹いせからか村を破壊し、火を放ったのではないかと考えられた。
つまり、物的被害の方はとてつもなく酷いことになっている。
一言で形容するのであれば、全損だ。
家財や家自体、畑や家畜等。
およそ財産として価値のありそうな物全てを失ってしまった。
残されたのは着ている物と身に着けている物。
それに命位なものであった。
これからどうすればいいのかと、村人達は頭を抱えることになる。
これをなんとかした、と言うよりおはなんとかできたのはマインだけであった。
「アイ、捨て値でいいから俺の研究室の中の物。引き取ってくれ」
とにかく現金がなければ村の再建などできるわけがないというわけで、マインがその私財を売り払ったのだ。
そしてエタ現金を村長や村人達に、そっくりそのまま渡してやったのである。
「貸しても返すアテなどないだろうからな」
当面の住むところや食料は金でどうにかできるだろうとマインは考えた。
しかし、畑や家畜の方はどうしても時間が必要で、しかもそれらを再建できたからといってこの村から大きな利益が生まれるわけではない。
元々、それ程豊かな村ではなかったのだ。
領主や商人に村を再建するための支援を頼んだとしたら、鼻で笑われるであろう村である。
マインが提供した資金を返すアテなどあるわけがなかった。
「無償支援でもいいんだけどな」
マインからしてみれば十数年ほどのんびりと農村暮らしをしてきた村である。
世話になったのだから、お世話し返してもいいという気にはなっていた。
マイン自身は私財を失うことになるのだが、アイに見つかった以上はこれまでのような生活を送れるとは思っておらず、連れ戻されるくらいならばという位の考えでいる。
ただそうなると、リドルをどうするのかという問題が残る。
詳細不明ではあるのだが、リドルが持つ技能は非常に強力なものだ。
このままただの村娘に戻ることなどできるのだろうかと心配になるくらいに。
これを放置しておくわけにはいかず、どうしたものかと思案して、マインは村長に金を融通する代わりにとある条件を飲ませることにした。
一つ目は少々前倒しになるのだが、リドルの成人を認めてもらうことだ。
成人と未成年との間にはかなり越え難い壁が存在しており、今のままではリドルがリドルの思うように行動するというのは難しい。
それを盾にしてリドルに村の外へ出ることを諦めさせてもよかったのだが、どうせ成人の儀までは大して間がないことに加えて、村の状態から考えるとここに残していくよりは自分が保護した状態で村の外へと出た方がリドルにとっていいだろうとマインは判断した。
二つ目はそれに関連したことで、リドルと自分とが村を離れることを認めてもらうということだ。
何せ人というものは村からしてみれば貴重な労働力で、貴族からすれば税を取り立てる対象なのだ。
そんな対象が好き勝手にうろうろと動いたり、他の地域へ行かれたりすることが用意に認められるわけがない。
しかし今回の場合、村自体に人を養う力がほとんどない状態である。
マインの申し出を受けなければ、村人達の中から餓死者が出てもおかしくないのだ。
通常なら口減らしのために、非人道的或いは法に触れる行為に手を染めなければならないところを、村人二人の出奔を認めるだけで回避できるというのであれば、これを認めないという選択肢は村長にはなかった。
「本当に村を出るのか?」
村を出ていくための手はずは整えた。
後は本人の意思だけと尋ねるマインに、リドルは頷く。
「マインは行くんでしょ?」
農村での農民の暮らしは悪くなかったとマインは思う。
ただ急に魔物の活動が活発になってきたことは気にかかるし、アイに発見されてしまった以上はそちらの方の対応も色々と考えなくてはいけない。
そもそもマインに村に残る気がないことは、研究室に残されていた私財を全て手放して、村の復興にこれを提供した時点で明らかではあった。
「私も村の外に出たい。英雄になりたいって夢はあるけれど……何か私、普通じゃないみたいだし」
騎士物語に感化されたからというだけではないと言うリドルにマインは沈黙を保つ。
確かに何らかの術式により、素人でありながらオークを倒せるほどの力を発揮したリドルが、ただの村娘に戻ることは難しいだろうとマインは考えていた。
今はそうでもないのかもしれないが、リドルがなんとなくでも力を自覚した以上は必ずどこかで、またその力を使うことになり、結果としてこの村に残れば奇異の視線にさらされることになるはずだ。
その点、村の外へと出てしまえばリドルのような者は少ないながらに存在しており、人の目にもそれほど奇異には映らないはずであった。
「私は孤児だったから。もしかすると私の出生に関係することかもしれないし」
「もう十六年も前の話だろ。何か分かる確率は低い」
「それでも私は外に出て、私の目で色々な物を見て、耳で聞いて、知りたい。それじゃ駄目かな?」
「駄目なわけがない。それを駄目だと言える奴などいない。リドルの人生だ。リドルがいいようにすればいい」
「手伝って、くれるよね?」
様子を伺うように上目づかいで聞いてくるリドルに、少し突き放した言い方をしてしまっただろうかと反省しながらマインは頷いた。
「リドルが不要だと思うまではな。俺の方が先達だろうし、それに俺は……」
にやにやと二人のやり取りを少し離れた所で見守っていたアイを視線で黙らせて、咳払いを一つしてからマインは続ける。
「魔術師マインはまじでヒマなんだ。いい暇潰しになるのであればこれを断る道理はない」
「そっか。うん、ありがと」
マインの答えをリドルがどう受け取ったのかはマインには分からない。
ただ嬉しそうに笑うリドルにマインは気にするなと言いつつ、肩を竦めてみせたのであった。
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