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1-41

 リドルとアイによるオーク達の駆逐は上手くいっているように見えた。

 オーク達は力は強いがその動きは鈍い。

 その鈍い動きではアイの素早い動きにはついて来れず、次々に飛来したナイフを急所に受けて、オーク達は倒れていく。

 また唯一といっていいその力も、原因不明ながらも強化されているリドルと比べるとかなり劣る。

 その為、リドルと戦ったオーク達は単純な力負けによって、次々に頭や腹を切られて物言わぬ骸へと変わっていく。

 これなら特にすることはないなと思っていたマインだったのだが、状況が変わったのはリドルの動きに鈍さがみられるようになってからだった。

 明らかにオークと力が拮抗することが多くなり、それまでのように一方的にオークを押し切ることができなくなっていったのである。


「魔力切れか」


 戦闘中、リドルの持つ術式がどのような効果を持っているのか、じっと観察していたマインだったのだが、結局詳細の方は見極めきれなかった。

 ただ、とてつもなく高い倍率で元々持っている全ての能力を強化するような効果があるところまでは突き止めており、さらにその強化はリドル本人のみならず、リドルが持っている装備にまで及ぶというところまで理解できている。

 それだけの術式ならば、消費される力も並大抵のものではなく、マインはむしろリドルがたった五人分の魔術師が持つ魔力でもってこの術式をそれなりの時間、起動し続けていることに驚きを感じていた。

 しかしそれでも、いずれは終わりがやってくる。


「アイ。リドルを引かせろ」


 <レビテーション>で浮いていた状態から地面へと戻りつつ、マインが出した指示にアイが牽制の為に大量のナイフをオークへ投げつけ、オーク達が怯んだ隙をついてリドルの体を抱いてオーク達から距離を取る。


「投薬しますか?」


 腕の中でくたりとしているリドルを見ながらアイが問いかけたが、マインは首を横に振る。

 回復役の在庫はまだ幾分残っていたが、投薬したくない理由がマインにはあった。


「止めとけ。連続使用は体に良くない。それでなくとも結構な負担になってるはずだ。残りはこちらに任せて、休ませておけ」


 マインはオーク達とリドル達との間に割り込むように移動しながら、アイへ指示する。

 アイが頷くのを横目で見ながら、マインは残っているオーク達へ掌を突き出した。


「<グラビティ>」


 マインが掌を突き出した先の地面が広い範囲で陥没した。

 その範囲の中にいたオーク達は、抵抗も逃亡も許されることなく凹んだ大地の上で瞬時に縦に潰れて地面へ赤黒い水たまりを作る。

 身もふたもないほどに一瞬の出来事であった。

 マインが使ったのは一定範囲に強い圧力をかけるという魔術であったが、注ぎ込んだ力とマインの魔術師としての力量とが合わさった結果。

 タフで力持ちであるはずのオーク達が、その身に着けた装備諸共押しつぶされてしまったのである。


「これでお終い……というわけでもないな?」


 マインとしては残っているオーク達を魔術の効果範囲に全て捉えたつもりであり、事実オーク達は残らず魔術の効果範囲の中にいた。

 しかし、確かに大半のオークは圧力に負けて肉塊として押しつぶされていたのだが、その中で一匹だけが魔術の効果を受けつつも、それに耐えて原形をとどめていたのである。


「上位種? オークリーダーか?」


 他のオーク達に比べて立派な武具を身にまとい、体格も一回り程大きいそのオークは、魔術の効果のせいでその場に足止めされつつも、他のオーク達のように潰されることはなく、ゆっくりと足を引きずるようにしてマインの方へと進んでいたのだ。

 ただ、その歩みは遅々として進まない。

 それだけの圧力がそのオークの全身を襲っていた。

 オークには上位個体としてリーダーやジェネラル、ロードやキングといった個体が存在しており、これらはただのオークと比べると隔絶した能力を持っている。


「指揮官といったところか? できればどこから誰の命令でやってきたのか聞きたいところだが……オークの言葉って分からないだよな……」


 他の上位種らしき個体が見えないところから、マインはそのオークが指揮官として他のオーク達を引きつれていた、と考えた。

 ついでに村を襲ったゴブリンや、そのゴブリンの集落近くにいたコボルトなども、オークがよく使役する魔物であるところから、無関係ではないのだろうとも考える。

 ただ拠点を作っていたゴブリンや、そのゴブリンの集落付近を群れで徘徊していたコボルト。

 そしてゴブリンの襲撃の後にやってきたオークの群と、どうも妙に組織的な動きをしているようにも感じるところから、偶然にそれだけ大量の魔物が動いた、とは考えにくい。

 何か大元で糸を引いている何かがいるような気がするマインとしては、オークから情報を得られれば良かったのだろうが、オークは独自の言語を持っているようだというところまでは分かっているのだが、その言語がどのようなものなのかについては分かっておらず、マインとしてもオークと意思の疎通をする方法の持ち合わせがなかった。


「研究対象としては興味はあるんだが……いかんせん、人を見たら殺して食うくらいしか考えてない相手に、お前らが使っている言語を教えろとも言えないしな」


 じりじりと近づいてくるオークリーダーらしき個体を見やりながら、マインは首を竦める。

 魔術の効果が切れた瞬間、襲い掛かってくるであろうオークリーダーを前にしていても、マインの顔に緊張感のようなものが見えることはなかった。


「こいつ、それなりに知識があるのかもな」


 マインへとにじり寄るオークリーダーの顔には、苦しそうではありながらも笑みのようなものが浮かんでいた。

 それはおそらく、マインが行使している魔術を耐え切ったことでその魔術では自分が殺されることがないということ。

 そしてその魔術さえ切れてしまえば、瞬時に間合いを詰めることにより、通常は肉体的に貧弱である魔術師など即座に殺してしまえる。

 そんなことが分かっているように見えた。


「もっともそれは、魔術の並列行使ができない魔術師の場合にしか通用しないんだけどな。ということで<ファイアー・ピラー>」


 ゆっくりとしか前に勧めないオークリーダーの足元から突如として激しい炎が吹き上がり、オークリーダーは何が起きたのかも分からないままに紅蓮の炎の柱に包み込まれる。

 炎はオークリーダーの皮膚と、呼吸によって吸い込まれることによって喉を焼き潰し、オークリーダーは悲鳴を上げることすらできないまま、ただ灰となって朽ちていったのであった。

ストックが尽きまして、どうにか一日一更新。


書き手であるボクに鞭を入れる意味でも。

ブクマ、評価、感想などお待ちしております。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 初めから平穏で淡々とした章が長く続き 山なし落ちなしなんじゃないかと思ってしまうので 冒頭に1-40を持ってきてから1-1に繋げる等の 期待感を持たせるテクを使うと 読者が付いて来てく…
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