表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
39/146

1-39

「それは確かか?」


「ほぼ確かかと。正確にはあの地点から最も近い農村があります」


 言い直したアイからの情報にマインは顔を顰める。

 自分のいた村周辺の地理は、マインもしっかりと覚えていた。

 そしてその知識をたどれば、ゴブリンの集落があった地点から最も近い村は、マイン達が住んでいた村で間違いない。

 アイからの情報が間違っているとは、露程にも考えていなかった。

 何せアイはマインの手による創造物なのだ。

 その能力を疑うことは、状況にもよるだろうが自分の技術を疑うようなものである。


「しかし何故? あんなに急いでいるのでしょう?」


 リドルの移動はマイン達の目から見るといささか異常なものに見えていた。

 回避できないわけじゃないはずだと言うのに、少々の障害物であればこれをよける素振りすら見せることなく直進し、破壊してしまっているのだ。

 痕跡が大きく残っているので追跡するには楽で助かるのだが、荒らされまくった地面というものはとても進みにくい。

 アイはその荒れた道をマインを抱えたまま、なんでもないかのようにひょいひょいと進み、リドルから一定の距離を保ったまま追跡しているが、マインだけだったのならば何らかの魔術を行使しない限りは追跡は非常に困難なことになっていただろうと思われた。


「帰巣本能でしょうか?」


 大地を巻き上げ、行く手にある物をなぎ倒して、かなりの速度で驀進するリドルを、軽い身のこなしとそれにそぐわぬ速度でもって追走しながらアイが言う。


「人間にないものだろそれ」


「人間は木立や大地を一緒くたに抉りながら暴走はしないかと」


 人間離れしていると言われれば、これを否定することができない。

 おそらくはリドルが無意識下に持っている術式が全ての原因だろうとは思われたのだが、その術式が正確にリドルにどのような影響を及ぼしているのかが判断できずにいる。


「そもそもあれ。何の術式を使用しているのですか? マスターを抱えているとはいえ、私が追いつけないなんて余程の術式ですよ」


 アイの言葉にマインは自分が勘違いをしていたことに気が付く。

 マインはてっきりリドルとの距離が縮まらないのはアイが一定の距離を維持しているからなのだと思っていた。

 しかし、どうやらアイは最初からリドルに追いつこうとして走っているらしい。

 アイは肉体労働よりは頭脳労働を期待されているメイドであるので、マインが知る戦闘を主体としたメイド達と比べればそちらの能力は幾分劣る。

 それでも大人一人を抱えて全力で走っても全く平気なくらいの筋力、持久力はあるのだ。

 そのアイが置いていかれないようにするのがやっとだと言うのだから驚かされる。


「いっそ、攻撃して足を止めますか?」


「それは止めてくれ」


 アイの提案をマインは即座に却下した。

 確かにリドルの足辺りをアイに攻撃させれば、リドルの足を止めるか、或いは敵だと認識させて反撃を誘うことができるかもしれない。

 だがそれはリドルを傷つける行為であり、そんなことをマインが許可できるわけがなかった。


「能動的足止めは不可。それですと次は受動的。つまりは相手の体力か魔力切れを狙うことになりますが」


 術式によって暴走しているのであれば、リドルが保有している魔力や法力が枯渇すれば現在施されている強化が切れ、リドルは再び意識を失うはずだ。


「投薬は五粒。あれ一粒で大体一般的な魔術師一人分になるんだが」


「魔術師五人分の保有魔力に……自身の回復力も加わるとなると、魔力が枯渇するまでにはかなり時間がかかりそうです」


 リドルへの強化具合を見る限り、力の消費量は相当大きそうではある。

 しかし魔術師五人分の魔力を保有しているとなれば、アイが言う通りにリドルが力尽きるまでの道のりはかなり流そうであった。


「これだけ速度が出ていれば、そう遠くなく止まることにはなると思うがな」


 ペース配分を考えていないと、下手をすれば自分の方が先にばてて、置いていかれてしまうのではないかと危ぶみ始めたアイに、マインがアイの見立てとは違う意見を述べる。


「何故です?」


「目的地に着けば、嫌でも止まるだろ?」


 リドルの行き先にはマイン達の村がある。

 いかにリドルが暴走していたとしても自分の村を破壊し、これを通り過ぎていくとはマインには思えなかった。

 さらにマインには気になっていたことがある。

 それはリドルが走り出す前に口にした言葉だ。


「悲鳴が聞こえる、と言っていた」


「はい?」


「冗談で俺の悲鳴かと尋ねたが、まさか強化された耳が心の声など捉えるわけがないだろう?」


「マスターって冗談のセンスは皆無ですよね」


「ほっとけ」


「それでマスターはご主人様が村で誰かが助けを求めていて、それを聞きつけて村へ急行しているとお考えなので?」


「心の声が聞こえるよりはずっと現実的だろう」


「非現実的すぎます。マスター達の村からあそこまで、どれだけ離れていると思っているんですか?」


「<リモート・ヒアリング>の魔術なら届くぞ?」


「さらっと人外なことを言うの。止めてもらってもいいでしょうか?」


 マインが言ったのは遠くの音を拾う魔術だ。

 その魔術に就いてはアイも知っているし、当然使うこともできる。

 しかしその魔術が効果を発揮する範囲は、アイが使ったとしても視界が届く範囲がやっとというくらいであった。

 とてもではないが歩いて何時間もかかるような距離をまたいで音を拾えるような術ではない。


「アイにできなくとも俺にはできる。俺にできるならリドルにできたとしても、おかしくはないだろ」


「十分おかしいです」


「アイより速く走れる状態のリドルだぞ? アイにできないことができたとしても不思議じゃない」


 理屈としては間違っていないように聞こえる。

 だが納得することはできないアイは、何かしら胸にわだかまるもやもやを吐き出そうとして、日が落ちかかった夕暮れの空の自分達の進行方向に立ち上る不吉な黒煙を目にした。


「マスター、あれは……」


「アイ、急げ。リドルが速度を上げた」


 言われて前方を見れば、追いかけていたリドルの背中が少しずつ小さくなっていくのが見える。

 ここで見失ってしまっては追いかけて来た意味が何もなくなるとばかりに、アイは自分に魔術の強化を施しつつ、人間離れした速度をさらに上げながらリドルの後を追うのであった。

これを更新している時点で累計PVが5000超えました。

ありがたいことです。

ところで、どこぞのTVでラノベ作家の年収は平気8000万円という

情報が流れたそうです。

うらやましい話ですね、ボクもラノベ作家になりたいです(棒


というわけで。

ブクマ、評価、感想などお待ちしております。

割と切実に。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] >ラノベ作家の年収は平均8000万円 多分ジンバブエドルの間違いじゃないかと
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ