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「それで、この後はどうされるのですか?」


 アイの復活は早かった。

 肩を落としてからいくらもしない内に顔を上げ、意識を失ったままのリドルを介抱しているマインへ尋ねてくる。


「この後?」


「騎士王物語に感化されてしまっているその娘の希望になんとなくつきあって、冒険の真似事をさせた後はどうするおつもりなのですかとお尋ねしております」


「さて、どうしたもんかね」


 考えていなかったということを臆面もなく言ってのけるマインに、アイは再び肩を落としかけたのだが、今度は落とし切る前に持ち直してきっと顔を上げた。


「タフだね……」


「おかげさまで」


 アイが精神的にとても頑丈なのは、マインがそのように設定したホムンクルスとしての能力、というわけではない。

 単に長い間、マインと付き合い続けてきて、精神的にもろい部分が削り落とされてしまっただけのことである。


「とりあえずはリドルの意識が戻るのを待つしかないと思うんだが」


 敷物の上に寝かされたリドルが意識を取り戻しそうな気配は今のところ全くない。


「大丈夫なんですかそれ?」


 アイが見る限り、リドルが意識を失うような要素はないはずだった。

 特にショックを受けるようなことは起きていないし、外傷を受けた形跡というものもない。

 何もないというのに意識を失うというのは、アイの知識に照らし合わせるとよくないことの兆候。

 つまりは病気か何かではないか、ということになる。


「大丈夫だとは思うんだがな」


 そう答えながらマインはリドルの手を取り、掌や甲をしげしげと眺める。

 マインの知る限りではリドルの体に病巣の類はない。

 伊達に村の子供達を集めて、勉強を教えているわけではないのだ。

 こっそりとではあったが、魔術やこれまでに得て来た経験や知識を動員して、村の子供らの健康状態は把握済みなのである。

 それによれば、多少は栄養不足のための発育不良が見られはするものの、総じて村の子供らは健康であると断じて間違いないとマインは見ていた。

 だからこそに何故という思いが強い。


「<フィジカル・アナライズ>」


 現状、マインの行動を見ているものはアイしかおらず、アイには自分がどういう魔術師なのか最初からバレている。

 ならば自重する意味はない、とマインは手加減なしに魔術を行使した。

 対象の生物の状態について、その対象自身ですら知らないような情報まで開示してしまう高位の魔術。

 通常は動く魔力が大きすぎて、魔術を使えないような者にまで何かおかしな感じがすると疑われるため、これまで使用して来なかった魔術をマインはリドルに行使する。


「ん-?」


「どうかされましたか?」


 魔術を行使してすぐに、唸り声を上げたマインにアイが尋ねたが、マインは答えることなく別の魔術を行使し始めた。


「<ディテクト・ウィークポイント>、<シースルー>、<ライフ・マネージメント>……」


「ちょ!? ちょっとマスター!?」


 立て続けに行使されたのは、階位を問わずに手当たり次第に選ばれた、対象の状態を調べるための魔術の数々だ。

 並みの魔術師であればあっさりと魔力切れを起こしそうな数の魔術を、平然と行使し続けたマインは行使した魔術の効果全てを終了させると細く長く息を吐く。


「何かわかりましたかマスター?」


「聞いて驚け。ほとんど何も分からなかった」


 マインの答えにアイが息を呑む。

 その辺の魔術師がマインと同じ答えを口にしたのであれば、アイはそれほど驚くことはなかっただろう。

 しかし、それを口にしたのがマインであるとなれば話は変わってくる。

 魔術師の間で正体不明ながらに伝説的な魔術師として評され、かつアイ自身の創造主である人物が、周囲の目を気にすることなく加減なしで魔術を行使して、ほとんど成果を上げられなかったというのだ。

 驚くなと言われても無理な話で、マインに言われるまでもなくただ驚くことしかできないアイであった。


「いったい何が……?」


「さて分からん。行使した魔術が弾かれるんだが……余程強力な守りだぞこれ」


 害意のある魔術を弾く守りならば、マインもいくつか知っていた。

 精霊と呼ばれる存在による加護であるとか、神から与えられた加護であるとか、魔術や法術による防御結界なんかがそれにあたる。

 中でも強力なものはもちろん、神による加護というものになるのだが、マインが今回行使した魔術はただ調べるだけの効果を持つもので、リドルの体を害するような効果を持つ魔術は使っていない。

 害がなくとも魔術を弾くということは、つまりはリドルの体に何か調べられては困る要素が存在し、それを知る誰かが仕掛けたということになるのだが、マインが行使する魔術を弾く事が出来る程強力な守りをかけられる存在となると、アイには想像がつかなかった。


「お手上げですか?」


 魔術が弾かれてしまったのであれば、ロクな情報も得られなかったのだろうと考えるアイに、マインが応じた。


「そうでもない。意識を失った原因と思われる要素は見つかった」


「おぉ、流石はマスター」


 最低限の結果は出せたというマインを称賛したアイなのだが、褒められた形となったマインはどこか浮かない顔をしている。


「まだ何か問題が?」


「分かったことで分からなくなったことが出て来た。リドルが意識を失った原因は魔力欠乏症だ」


 魔力には二種類あって、体内魔力と体外魔力と分けられる。

 マインの言う魔力欠乏症とはこの内、体内魔力が欠乏することによって引き起こされる意識障害のことで、体内魔力の管理が下手な駆け出し魔術師がよく陥る状態だ。

 つまり後先考えずに魔力を消費するとそうなってしまうのだが、リドルの場合はおそらく天然の意識下にある構成の使用によるものだろうとマインは考える。

 しかし、自分の能力を多少強化する程度の術式で、そう簡単に魔力が尽きるものだろうかとマインは首を傾げた。


「消費が異常な欠陥術式? 或いはもっと別の理由か」


 リドルが保有している力が極端に少ないという可能性もあるのだが、いずれにしてもリドルの意識を取り戻すのが先だろうなと、マインは何か使える物がないかと自分の荷物の中身を思い起こすのであった。

平日が一日一更新になったら。

力尽きたのだなと思ってやってください。


というわけで。

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