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「ちなみにお二方はまた何故このような所へ来られたので?」


 再び移動を開始したマイン達であったが、歩きながらアイがそんな質問を投げかけて来る。

 このような所とやらにメイドがいる方が絶対におかしいに違いないとは思いながらも、リドルがアイに事情を説明した。


「騎士王物語にあこがれて、村の人達に黙ってゴブリン退治ですか」


 声音に呆れの感情をにじませながら、アイはマインをちらりと見る。

 その視線にはこの子は本当に大丈夫なのかと心配するような雰囲気があったが、マインは知ったことかと顔を背けた。


「お暇なのですね、魔術師様」


「その問いに関しては、返答を拒否する」


「お暇なのですね、リドル様」


「こんなとこほっつき歩いてるメイドさんほどじゃない」


「お二人共、お答えが冷たいです」


 そっけない対応をされたアイが涙の一つも見せないままに目じりを押さえる仕草をしてみせたのだが、それを見るマインとリドルには少しも心を動かされた様子はなかった。


「泣き落としは通じませんか」


「そういう台詞はせめて泣いている真似ができるようになってから言うべきだと思う」


「申し訳ありませんリドル様。生憎と涙の方はとある事情から現在、品切れ状態となっておりまして、次回入荷待ちなのです」


「悪い男にでも騙されたの?」


「騙されたというわけではないのですが、確かに男性問題ではありますね」


 世の中に、女性を泣かせる悪い男性というものが存在しているということをリドルは知識としては知っている。

 逆もまた然りではあるのだが、いずれにしても酷い奴がいるものだと思いながら周囲を見回したリドルは、何故かマインがどことなくばつの悪そうな顔をして、視線をどこかに泳がせているのに気がついた。


「マイン、まさか心当たりとかあったりする?」


「いや……まぁどうなんだろうと思ってしまうくらいのことがまるでないわけでもないんだが……」


「どこの誰へなのかは知らないけど、多少なりとも心当たりがあるならちゃんと謝った方がいいよ? 何なら一緒に謝ってあげるから」


 リドルの知るマインという人物は、到底人を泣かせるような真似をするような人物ではなかったが、そのリドルもマインの全てを知っているというわけではない。

 まず、本人の意図していない所で予期せず、そのようなことになっているという可能性まで考えれば、リドルよりも年上のマインに心当たりのようなものがあったとしても、それほど不思議ではないだろうとリドルは考える。

 程度の次第についてはさっぱり分からないリドルだが、謝罪は大切だろうと言えば、マインは迷うような素振りを見せながらも頷いた。


「どこのどなたか存じませんが、許してもらえるといいですね」


「何が言いたい?」


「特に何も。ところで目的地まではまだかかりそうなのでしょうか?」


 マイン達が歩いているのは森の中の道とは呼べそうにない道っぽい何かだ。

 下草や背の低い木々の枝が歩行の邪魔をする状態の悪い場所で、動きやすい格好をしているマインやリドルはともかくとして、エプロンドレスなどというおよそ野外活動には向かない格好をしているアイは、自分達について来るのも大変だろうとリドルは考えていた。

 しかし、その考えを嘲笑うかのよういに、アイの歩みは止まることなくスムーズで、足を下草に取られるようなことも、スカートの裾を木々の枝に引っかけてしまうようなこともまるでない。

 どういう仕掛けになっているのやらと首を傾げるリドルに代わって、マインがアイの質問に答えた。


「そろそろのはずだ。相手に気取られないように注意してくれ」


 マインがそう言い、アイがそれに応じて首を縦に振った瞬間、リドルはアイの身に起こった変化に目を見張った。

 アイの姿はたしかにそこにあり、リドルの目にはそれが見えている。

 だというのにそのアイの姿が幻かなにかであるかのように、そこに人がいるという気配の一切が消え去ったのだ。

 そこの人が見えているというのに、誰もいないとしか思えないといった矛盾に混乱しかけたリドルの肩を、マインが軽く叩く。

 その衝撃とマインの手の感触とで、リドルはギリギリのところで混乱することを免れ、落ち着きを取り戻した。


「マイン、これって……?」


「隠形と呼ばれる技術だな。盗賊や野伏といった連中が得意にしている技術なんだが……このレベルで発現できるこいつのは異常だ」


 呆れかえった口調でマインがそう言うと、気配を殺したままのアイが小首を傾げてみせる。

 確かに目の前で動いているというのに、人を見ているというよりは動く絵画か何かを見せられている気分で、リドルは気味が悪そうにマインへ少し身を寄せた。


「怖がらせてしまいましたでしょうか?」


「怖いというか不気味。声がするのに存在感がない」


「主人の邪魔をせず、その場にあり続ける。これもまたメイドの必須技能です」


「ウソでしょ?」


「嘘だろうな」


「否定されるであろうことは予想してはおりましたが、あまりにも対応が素早すぎやしませんでしょうか?」


 やや恨みがましい芽でアイがそう言うのだが、こんな不気味なメイドが極めて一般的に普及しているとは、マインもリドルも思いたくはなかった。


「とりあえずこの人外メイドらしき存在の真似は到底無理だとしてだな」


「酷い扱いです……」


 よよと泣き崩れて見せるアイなのだが、やはり涙は流れていない。

 涙の確認をするまでもなく、マインもリドルもまともに相手にするつもりはなかった。

 二人共、この程度で泣き崩れるような女性がその状態でも気配を完全に殺し切るような真似ができるわけがないということを分かっていたからだ。


「これは異常としても、これくらいはできるようになっておいた方がいいぞ」


 そう言うや否や、リドルの目の前でマインの姿が存在感を失う。

 それなアイが使った隠形に似てはいたものの、そこまで完全なものではなかった。

 しかし、少しでも目を離そうものならば、そのまま見失ってしまいそうなくらいには気配が希薄なものになっている。


「どうやるのそれ?」


「息を潜めて。足音は足首と膝とで殺してだな」


「気合で心音と呼吸を止めます」


 いちおう説明をしようとし始めたマインを遮って、アイが真顔で言い放つ。

 静かにするように言われている手前、喚くようなことはしなかったリドルなのだが、流石にアイの無茶苦茶な言い分は腹に据えかねたのか、軽くイラついたような表情を見せるとそんな真似ができるかとばかりに、少し飛び上がりながらアイの頭を平手で打ち抜いたのであった。

書き手はみんな思うのでしょうが。

なろうで一発バズりたい。

予約投稿で入れているのでツイッターで告知

できないのですよね。


あ、ツイッターもこの名前です。


というわけで。

ブクマ、評価、感想などお待ちしております。

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