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 近場にあるとはいっても、マインが目をつけた森の中の場所までは徒歩で半日前後はかかる場所である。

 妙な時間に村を出発すれば、森の近くで一晩を過ごさなければならなくなり、そういった事態はあまり歓迎したくないマインであった。

 スムーズに物事が運ぶと仮定して、野宿をしなくとも行って帰って来れるような行程を組もうとすると、村を出発するのは日の出よりもっと前ということになる。

 気の進まない行程ではあるのだが、これをリドルが嫌がれば、それはそのまま今回の騒動への関与を諦めさせることができるかもしれないと、マインはリドルへ現地へと行ってから調査し、帰るまでの日帰りコースを提案すると、そこそこの強行軍となるにも関わらず、リドルはあっさりとこれを承諾した。


「繁忙期のうちの仕事に比べたら大したことないよ」


 まさか、何故嫌がらないのかとストレートな質問をするわけにもいかず、早起きは辛くないのかといったぼんやりとした質問で探ってみたマインに、リドルは軽くそう応じた。


「しばらく畑仕事から遠ざかってて、忘れちゃったのかな?」


 離れているわけではなく、マインも自分の畑というものを持ち、そこで少量ではあるが作物を育てている。

 ただ、専業として農家をやっているわけではないので、仕事をそれ程抱えてはおらず、無理に早起きをしてまで済ませておく仕事というものがなかった。

 ただマインは、育ての親の所にいた時も日が昇る前から早起きをして農作業をするといった経験をした覚えがなく、教育方針が変わったのだろうかと首を傾げる。


「お父さん、マインは働き者だったって言ってたけど?」


「そうだった、かな?」


 そういうことにしておいたのかなと思うマインであるが、実際どうなのかは確認する術がない。

 否定して、嘘を吐いたということにするのも悪いだろうと思いつつ、身に覚えのない評価を受け入れることに多少の罪悪感を覚えながら言葉を濁す。

 明らかに不審な反応だったのだが、意識のほとんどがゴブリン退治の方に向いているリドルは全く気が付かず、翌日の朝早くにマインを迎えに来るからと言い放って一旦帰宅。

 装備や荷物をそのまま持って行ってしまったので、家の方で大騒ぎになるのではないかとマインは心配したのだが、厳しく叱られてリドルが思いなおすのであれば、それでもいいかと放置する。

 そして翌日、日も昇らない暗い夜明け前の時間。

 念のためにと早起きし、眠い目をこすりながら弁当を作り始めていたマインの家を勢いよく叩く者がいた。


「迎えに来たよ!」


「リドル……元気だな」


 昨日渡した装備を身にまとい、背中にパックバックを背負ったリドルの姿が、マインが開いた玄関の外にあった。

 勢いよく扉を叩き、大きな音を周囲に響かせるという行為は非常に迷惑なものではないかと考えるマインだったが、周辺の家々にはもう灯りが点いている家が少なくなく、農作業の道具をもって自分の畑へと移動を開始している村人の姿もちらほらと見受けられる。

 自分が知らないだけで、みんな早起きなのだなと感心しているマインにリドルは待ちきれないと言った調子で話しかけてくる。


「準備は? すぐ出れる?」


「問題ない」


 作った弁当やら何やらをバックパックに詰めて、飾り気のない杖を手にすればマインの方の準備は終わる。

 太陽が出てくるまでは必要だろうからと松明に火を灯し、リドルの急き立てられるかのように戸締りをしたマインは、松明の灯りを頼りにリドルを連れて村の外へと歩き出した。


「家では何も言われなかったのか?」


 革鎧やら剣やらは村娘が自宅に持ち帰る品物としては少々物騒過ぎる。

 驚かれるなり事情の説明を求められるなり、説教されるなりと何らかの反応がなかったのかと問いかけるマインに、リドルは平然とした顔で答えた。


「マインからもらったって言ったら、あぁそうかってだけ」


「信頼されてるな、俺」


 喜ぶべきだろうかと考えてしまうマインだったが、状況からするとそこまで信頼されていなかった方が話が面倒になり、リドルを諦めさせることができたかもしれない。

 そう考えてしまうと信頼されるのも良し悪しだなとマインは思う。


「まぁいい。荷物やら装備やらに問題は生じてないな?」


 身に着けるだけならばともかく、その状態で動くとなればただ立っていた時には気が付かなかった不都合に気が付くことがあったとしても不思議ではない。

 すぐにそれと分かれば、修正することも可能であるし、なんならそれを理由に出発を遅らせることまで考えられる。

 そう考えて問いかけたマインは、リドルが不満そうな顔を見せたのに首を傾げた。


「何かあったか?」


「逆。何もないのが不満」


 何も問題がないのであれば、それはとても良いことなのではないかとマインは思うのだが、リドルにとっては違ったらしい。

 リドルからしてみれば、騎士王物語なる創作物の中で語られている装備の窮屈さであるとか、荷物の重さで肩に食い込む荷物袋の紐であるとか、そういった物を実感しつつ移動したかったのだ。

 しかし、マインから供与された装備はリドルの体に合うような寸法で作られていて、重さの方も羽根の様に軽いとまではいかないものの、少々重たいかなと思う程度におさえられていて、リドルに体には全くと言っていいほどに負担をかけることがなかったのである。


「リドルに被虐趣味があるとは、露程にも知らなかったな」


「そういうわけじゃないけれど」


「重量軽減の魔術は便利だからな。魔術師で使える奴はすぐ使うぞ」


「なんか思ってたのと違う」


「楽できる所は楽するべきだと思うが」


 本で読んだのと違うと憤慨するリドルなのだが、目的地に着いたはいいが疲れて動けませんでは話にならないだろうとマインが言うと、それもそうかとリドルが黙る。

 一方マインは実は重量軽減などせずに疲れさせて、帰らせた方が安全だったかもしれないと考え、余計なことをしてしまったかもしれないと内心で頭を抱えるのであった。

三連休は一日一回更新。

予約投稿で入れているので、現状どんなもんなのか。


というわけで。

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