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エテメンアンキ  作者: まりえ
日常の変化
7/8

出会ウ少女たち

「上村、さん?」


 最初に反応したのは私。

 次いで水香が顔を向ける。

 そこにいたのは、今日転校してきたその女子。


「この人が、くだんの転校生?」

「あ、うん……。」


 声に気付き、こちらを向く転校生。

 きょとんとした顔をしてこちらを見ている。


「あの、何だか叫び声が聞こえたから……」


 あぁ、さっきの絶叫か。

 くだらない話の中で不意にあげた水香の声が漏れたのだ。

 この少女はいちいち反応が大きいので、必然声も大きくなる。


「お邪魔だったかしら?」

「そーでもありませーん!」


 なんであんたが反応する。

 ジト目で水香を見るが、当の本人は全く気付いていない。


 一連の我々を見て、薄く上村さんは笑う。


「なんだかデコボコしたコンビね。」


 ……自覚はある。

 クラスの中でも高身長の私と、中学生にしか見えない水香。

 暗めの私と、快活な水香。

 インドアタイプな風貌の私と、活発なイメージの水香。

 全く別のタイプだ。


「……でも、上村さん、だっけ?」

「なぁに?」

「あなたは何だか似てるね。かすみんと。」


 何を言い出すのだろうか、この娘は。

 この人と私、どこかが似ているのだろうか。

 そう疑問に思った矢先に彼女はズバズバと言葉を口にする。


「長い黒髪、高身長、モデル体型。

 どこか陰のある表情。というか何だか顔まで似てない?」

「それは光栄ね。」


 何が光栄だか私にはわからない。

 私なんかと比べられて、むしろ頭に来ないのだろうか。


 きーんこーんかーんこーん。


 そんな風に突然の来客と会話をしていたらチャイムが響く。

 あぁ、もうそんな時間か。


「いつもここで二人いるの?」

「昨日からね。」

「ふふ。」


 口元に手を当て、軽く楽しそうに上村さんは笑う。

 所作の一つ一つが絵になる人だ。

 そして思いも寄らない言葉を口にした。


「もしよければ、私も混ぜてくれないかしら?

 私ね、転校したてで友達いないのよ。」

「もちろん!」


 即答だ。

 私に伺いを立てないのだろうか、水香は。

 いや、そこがいいところなのか。

 遅れて私もうなづく。


「それとね。友達になるからには名前で呼んで欲しいわ。

 上村さんじゃなくて、かなたでいいわ。」

「オッケー。わかったよ、かなた。

 あたしは水香。こっちはかすみん。」

「よろしくね、かすみん。」

「……かすみ。」

「……かすみ、ね。」


 上村さ……いや、かなたはプッと吹き出したのであった。




 夜。


 かさかさと音がする。

 ぼりぼりと音がする。


 硬い音は咀嚼音。異形が肉塊をむさぼる音。

 巨大ともいえる蜘蛛の体に、さかさまについた人の頭。


 その場にたたずむ少女は、その怪異はなんだったかと思考をめぐらす。


 自分の知りうるもので一番近しいのはウブあたりか。

 佐渡島に伝わる怪異。死霊の頭がついた蜘蛛の怪異である。

 だがそれは報われない赤子の魂が変異した姿だったが?


 まぁいい、と。

 少女は頭を軽くかき、思考をシャットダウンする。

 怪異は怪異。全く同じものが存在するとは限らない。


 少女は一歩前に出る。

 カツン、と。床は高い音を奏でる。


 ギョロリ、と。

 教室の中にいる不気味な蜘蛛たちは、一斉に廊下にいる少女を見る。


 闇で少女の上半身は隠れている。

 表情こそ読めないが、怯えた様子は無い。


 少女は見るからに普通の女子といった感じだった。

 小柄で華奢で、吹けば飛んで行きそうな、どこにでもいるような風貌。

 一つ、違う点を上げるとするならば。


 彼女は帯刀していた。


 蜘蛛が襲い掛かるのと同時に、少女は蜘蛛たちに向かい駆ける。

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