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邂逅
風が奔り花びらが舞う。
月夜にうつるそれは、まるで幻想のようで。
抱き合う二人を祝福しているかのようで。
世界から切り離されたとしても。
彼女たちは背徳の幸せの中にいるのだろう。
もはや二人を引き裂くものは何も無い。
錆びた鉄の匂いが漂い、赤い液体が地を染める。
それを見つめるのも、また少女。
唇を噛み紅い雫がゆっくりたれる。
彼女に襲い掛かるのは悔恨の念。
終わったことだ。罪悪感に駆られるのは無意味とわかっていても、それでもやるせない。
少女はきびすを返し、その場を後にする。
二度と忘れまいと二人の姿を記憶に焼き付けながら。
追憶の罰をその身に受けながら。
「姉さん。」
「なぁに?」
「私のこと、愛してる?」
姉さんと呼ばれた黒髪の女性はくすりと、小さく笑みを浮かべた。
「えぇ、もちろんよ。」
天は黒く、地は赤く。
ある女子高生を主役とした舞台はひっそりと幕を閉じる。