チュートリアル その3
「ミッションの状況をまとめたので、こちらの指示に従って欲しい」
「了解」
戦闘の準備は完了した。戦闘強化服とは、肉体を強化する特殊な装備で、実際の運動量の10倍は強化されると言われている。
「これが、今の状況だ」
網膜に、直接投影される事で、さまざまな情報を表示できる技術が確立されている。位置も調整できるので、邪魔にならない様に微調整する。
「指揮所のある場所を、E-5とする。ムラサメのいる場所はD-3」
「了解」
「現時点で、敵はA-1とA-5にいる事が確認できている。その数はそれぞれ10」
「種類は?」
「バイオモンスターで、蟻型と確認」
「ミッションは、これの殲滅?」
「偵察も含まれているから、敵の造園の可能性は高い。そのつもりで」
「了解」
「最初は、自由にやってみて欲しい」
「解った。色々と、試しながらやってみる」
その言葉を合図に、ミッションが始まった。
最初に、長距離の攻撃を試してみる。携帯誘導ミサイルを使用。これは、ある程度の距離を、有線誘導で操作できる小型のミサイルだ。威力は、中々と説明にあった。
A-5の敵に目掛けて誘導する。ミサイルは、上空へと駆け上がる。ギリギリの高度から、集団の中心に着弾する。その一撃で、その集団は消滅した。チュートリアルなので、敵の強さは低いのかもしれない。
「回収、開始!!」
手の消滅を確認すると、スイカがドローンの指示を出す。彼女のドローンは回収に特化している。敵を倒すと、ECを残す。それ以外にも、色々とパーツを残す。回収ドローンは、それらを自動で回収してくれる。
ECは、回収後自動でEPに変換される。それを利用して、補給をするのが基本になっている。
ただ、特殊補給兵は、ECの変換を手動で行う事で、より多くのEPに変換する事が出来る。品質が上がり、副産物でミリオンパスルのパーツを入手できる可能性が高くなる。
変換方法は、色々なパズルになる。今回は、ルービックキューブの様だった。回収されたECは、スイカの手によって、EPになっていく。一つのパズルを、5秒ほどで完成させてしまうのは、驚きの記録だろう。ただ、得意なパズルじゃないから、これくらいだと彼女は後で言っていた。
「ここから、狙い撃つ!」
A-1の敵を、射程距離に捉えた。長距離ライフルを、構える。
空間把握のおかげか、いつもより相手のことがよく解る。
バイオモンスターとは、遺伝子操作によって生み出されたとされる、巨大な怪物。外見は蟻だけど、2メートルほどの巨体だ。速度は、時速40キロぐらいでこちらに向かっている。自分の動きが、強化されているので、動きに気をつけなければいけない。相手の数は10。
「こんなものか・・・」
相手は、一撃で撃破できた。とりあえず、弱点がわからないから、頭を狙った。全弾命中。狙い通りの場所に弾が行くと言うのは、とても助かる。ゲームによっては、アバターの操作に違和感を感じて、狙い通りに撃てないものもある。このゲームは、反応が細かすぎて、逆に怖いくらいだった。
「敵の造園を確認。Cの1と5、A-3。Eの1と5.それぞれ蟻が10」
現在地は、B-3.正直、こちらの火力不足。
「ムラサメは、Cの1を撃破した後、A-3とC-5を頼む」
「残りは?」
「仕方ないから、スイカに頼む」
「大丈夫なのか?」
「恐らく・・・」
「報酬は?」
不機嫌そうな、スイカの声が聞こえた。
「私の分の、パズルの欠片を全部提供しよう」
「仕方なし・・・」
どうやら、それでスイカは納得したみたいだった。しかし、彼女で大丈夫なのだろうか?少し不安なので、俺も早く片付けて、手伝う事にする。
「これも、威力ありすぎだな・・・」
ビームバズーカを使用してみた。中距離で、着弾後爆発を起こす武器だけど、一撃で5匹の蟻を始末できた。あいつらは、突撃しか攻撃手段がないのか、こちらに向かって突っ込んでくる。距離を詰められれると、これは使えないから、反対側の敵に向けて市毛をを放つ。Cの1と5の敵は、これで半分になった。
武器をハンドガンに持ち替えて、敵に接近する。走る事で、体の動かし方を学ぶ。ある程度動く事で、感覚が馴染んでくる。この動きが出来るなら、色々とやれそうな気がする。
「点と点を繋いで殺す!」
イメージとしては、そんな感じ。座標を狙い、そこを撃つ。弾丸は、蟻の頭部に命中する。そして、敵は消える。
ハンドガンと同時に、長距離ライフルを撃つ。点を2箇所意識して、同時に撃つ。戦闘強化服で、身体能力が強化されているので、こんな芸当も可能だった。接近戦をしながら、遠距離戦を行う。
これを見ていた先輩と所長は、俺に対するチート疑惑が消えない理由と痛感していたらしい。
電脳空間は、可能性の場所。意識を上手く伝えれば、これくらいの芸当は出来ると思う。そうでなければ、目の前の光景は説明できない。
Cの1と5の敵を片付け、Aー3の敵を狙撃しつつ移動する。E-3に向かうのだから、敵をおびき寄せながら、確実にしとめる。
目標に付く頃には、受け持ちの敵は全滅。残りの敵をと思ってみた場所には、ある意味地獄が待ち受けていた。
「うりゃりゃりゃーーー!!」
そう叫びながら、ツインブレードと言う特殊な武器を振り回すスイカ。刃を回転させながら、敵を切り刻んでいる。近接300と言う数字は、伊達じゃないらしい。敵の突進を、ギリギリの所で回避して、すれ違いざまに、斬り裂く。俺が付いた時には、最後の一匹が切り刻まれていた。
「凄いな・・・」
思わず呟く。
「あの子、護身術色々教えたら、才能あったみたいで、強くなりすぎたのよね・・・」
所長の呟きが聞こえる。
「仕方ないですよ。実際、誘拐されそうになった事ありますし」
「あの犯人は、自業自得だけど、気の毒ではあるわね」
恐ろしい事を、姉弟が言っている気がする。
「これで、終わり?」
敵を倒したスイカが確認する。
「B-5に、中型の敵を確認」
スイカに気をとられ、エリアに侵入したことを見落としていた。
「後はお願い」
ただ、スイカはその相手をするつもりはないらしい。指揮所に戻り、回収したECを相手にしている。
よほど、パズルがすきなのだろう。
-試練の効果により、難易度が上昇しますー
システムメッセージが流れる。中型の敵は、蠍のような形をしているけど、機械が入り混じった感じなっている。
「追加で、武装を選べますか?」
「EPには余裕があるから、一つなら可能だ」
「なら、お願いします」
一覧から、ある武器を選ぶ。これは、チュートリアルだから、色々と試さないと面白くない。
「さて、やるとしますか!」
12345
A
B
C
D
E
こんな感じで、位置を示しています。
1週間に2話の更新予定です。