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試練と祝福

 あっという間に、一月が過ぎていた。

 季節は春となり、新しい生活が始まる人の多い時期。俺は高校3年生となり、そろそろ進路を考える時期になっていた。

「推薦入学か・・・」

 まだ先のことだと思っていたけど、先日一通のメールが届いた。差出人は、脳研究所。電脳関係では、世界一と言われている企業だった。

 そこから、脳研が運営する大学への推薦権を、俺にくれるという物だった。

 条件として、空いた時間を、新作ゲーム火星大乱に参加して欲しいという物だった。電脳ギフト持ちの参加を、脳研は求めているらしい。ネットで調べた結果、同じような話を見かける事ができた。

 断る必要は無いので、この話は受けることにした。

 そしてこれから、火星大乱へとログインをする。


「ようこそ、榎本村雨様。火星大乱の世界へ」


 電脳空間にログインすると、声をかけてきた存在があった。

「貴方は?」

「私は、脳研の所長。所長と呼んで欲しい」

 目の前には、TVで見た事のある美少女がいた。年齢不明の脳研の女社長。本名は表に出ていない。みんなに所長と呼ばせている存在。電脳空間の、アバターと言う説が濃厚である。

「何で、所長がここに?」

「本来なら、初期設定はAIの仕事だけど、私が暇だったから、君の初期設定は私がやる事にした」

 その動作は、若干子供っぽい。この人、実在する人なのだろうか?

「所長さんそっくりなAIという可能性は?」

「それは、法律で禁止されているよ」

 電脳世界の法律は色々と厳しい。初期の段階で、色々と事件があったので、厳しい法律が色々とできてしまった。個人情報の保護や、著作権に関しては、さまざまな法律が出来ている。

「ゲームの開発者が、1人のプレーヤーと接触してもいいのですか?」

「それは、問題なし」

 にっこりと、笑う所長。そこには、逆らえない何かを感じてしまった。

「解りました。お願いします」

 物凄く有名人なので、実はかなり緊張する。

「アバターの製作から始まる?」

「アバターは、いつものを」

「了解」

 電脳空間での体を、アバターと呼ぶ。これは、ある程度現実のデータを反映して作成する必要がある。

 性別の変換は基本的に許可されない。ただ、一部の特殊な事情がある人は、検査を受けて証明書を発行の後、使用可能となる。初期の頃、性別を変えて電脳空間に入り込んだ結果、色々と問題が起きたので、法律で法なっている、

 俺の場合は、性別を変える必要は無い。体も、標準的な体型だと思う。身長170センチで体重は55キロ。

 電脳空間での動きは、現実の動きと連動していると言われていたから、体を鍛えた時期もあった。

 現在は、どれだけ上手にアバターを動かせば良いのか、現実の動きとは違う部分での操作を心がけている。その結果は、いまひとつだけど、そのうち出ると信じている。

 顔に関しては、平凡だと思う。美形に作り変えるというのも、正直意味が無い。電脳空間での個人情報の保護は大切で、現実世界での結びつきは厳しく規制されている。

 電脳空間での出来事で、現実での犯罪へと走った場合、電脳空間への接続を永久的に処断される可能性もある。電脳空間と、現実世界の生活が、必要不可欠となっている現代、この処置は死刑宣告に近い。

 それでも、犯罪は起こるけど、頻度は減っているし、警察の対応の早さから、酷い事件は減少している。

 電脳空間は、比較的安全な世界と言ってもいいだろう。


「まず最初に、私がここに来た本当の役目を果たすとしよう」

 アバターの設定が終ると、所長がまじめな顔をして、正面に立つ。

「君は、戦国大乱で優勝したね?」

「はい」

「他にも、狙撃大乱に参加していたよね?」

「あれは、途中で止めました」

「知っている。あの件に関しては、こちらに不備があった。申し訳ない」

 そう言って、所長は頭を下げる。脳研は、この一年、色々な”大乱”シリーズを運営していた。

 その全てが集まって、火星大乱になっていみたいだった。その一つ、狙撃大乱と言うものに、参加していた。

 ルールは単純、色々な狙撃を競うゲームだった。電脳空間で、色々な場所で色々な的を撃つ。銃に関しては、指定された物を使い、完全にプレイヤースキルが勝負を左右する物だった。

 その世界で、俺は命中率100%を記録していた。俺は、空間把握と言うギフトがあり、電脳空間で座標を認識できる。その能力を使えば、狙撃に関してかなりの命中率を生み出す事ができた。

 そのせいで、不正ツールの使用疑惑に巻き込まれた。電脳ギフトの存在は、一応認識されているが、都市伝説の扱いも受けている。公にしてもいいものではないので、俺もギフト持ちとは言っていない。だから、疑惑が長引いた。

 脳研の調査で、不正はないと証明されても、粘着してくる連中がいた。それに嫌気がして、そのゲームを俺は止めた。戦国大乱の方が面白く、そっちに没頭したと言うのもある。

「君の最後の記録は、結局破られていない。色々と揉めたけど、賞金は本来君のだった」

「戦国大乱で、優勝できたから、もったいないとは思いますが、そっちの賞金は諦めます」

「割り切れと言うのには、中々難しいと思う。だから、私から別の贈り物をしよう」

「贈り物?」

「この火星大乱には、試練と加護と言うシステムがある」

「そうみたいですね」

「私から、君への試練と加護を、直接与えよう」


・試練 狙い撃ち 

 ロックオンシステムを使用せず、マニュアル狙撃でミッションをクリアした時、命中率が90%以上のときは、ステータスが追加で上昇する。100%の場合は、その数値が倍になる。


・加護 空間認識

 電脳空間で、認識力が高まる。


 この二つが、俺に与えられた試練と加護の様だ。

「詳しい説明は、戦闘訓練と一緒にしよう。こっちへ」

 そう言いながら、所長は謎の扉を作り出し、その中へと消えていく。

 一瞬、悩んだが他に道がないので、その扉の中へと入っていくのだった。




 2話連続投降。

 今後は1週間に2回を目標に投降する予定です。

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