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作者が力尽きたが故の長々と会話文が続くシーンがありますが、下に行けばちゃんと地の文があるので頑張ってください……ゴメンナサイ……!
「ここに何故いるのか二人とも分からない……」
「俺とお前は、お互い言葉が通じなかった……」
「この辺りには人が居ない……」
「やはり状況把握には情報が、情報を得るには人が要るよな? 取り敢えず人が居そうな方に行ってみるか?」
「……コーガに任せる。私はよく分からない、し」
「そうだよな、子供に色々と責任負わせるとか終わってるよな。よし! ここから外に行こう、空!」
「……一歩踏み出した瞬間顔が曇ったな」
「……あー、外の空気不味い……すっごく不味い。きぼちわるいー。嫌いだー。でも外に出るって言った手前、大人だから前進します」
「頑張って、コーガ」
「どうだ? 木から落ちるなよ?」
「そうだなあ……向こうの方角に人のものらしき明かりが見えま……見える。よっと」
「うわ、その高さから飛び降りちゃうんだ」
「今の速さでは到底着けない、今日はここで寝ま……寝よう! 小枝を集めてきます」
「え、あ、うん」
「所でコーガ」
「何だ空?」
「今私たち二人は言葉を交わせているよね。私は今までと同じ言葉を喋っているのに、しっかりと伝わっている」
「あ、不気味?」
「いえ、これはつまり……例えば誰にも聞かれたくない独り言があったとして。私の言葉で呟いても他人に理解されてしまうのか?」
「おおー、鋭い! ちっちゃいのに! しっかりしてるねえホント。その疑問は最もです!」
「……説明を求める」
「うん。そうだなあ、頭の中に三冊の辞書とそれを覚えている人を思い描いてくれ」
「はい」
「一つはお前の言葉の辞書、一つは俺の言葉の辞書、最後の一冊は今俺達が話している言葉。最後の人は、俺の言葉を三冊目の言葉に訳しては、お前の言葉に訳す。逆もまた同じく! ……三冊目の言葉を、俺達は精霊語って呼んでたな」
「……精霊語」
「最後の人は精霊だと考えてくれ。その精霊は凄まじく高次元の存在だ。人間の作った沢山の言語全てを理解し、噛み砕き、それぞれの言語の人間にも分かりやすく訳を授ける! そんなのなんか、欠伸しながらできちまうんだよ! これは凄い!」
「……」
「冷たい顔するなよ……そんな訳でだ。今のお前は自覚してないかもしれないが、確かに精霊語を喋ってるんだ。便利なものを頭が勝手にセレクトしてる。元の言語を喋りたい時はイメージだ、お前の言葉の辞書を開く」
「……」
「喋ってみろ?」
「××× ××××××?」
「ハハ、そうそう。××××× ××××××! 今のは俺の言葉ね?」
「成る程……勉強になった。……あの、予想なのだけど。私達の会話も他の人が聞けば……?」
「その人にしっくりくる表現、音になってるぞ?」
「……凄い」
「やる事自体は一つの言語を精霊語に変換して、その精霊語をもう一つの言語に変換するだけだからな。どっかの国には、そんな感じの神話があったって聞くけど……」
「お、おお! 本当に一杯人が居るな!」
「まさか信じてなかった……?」
「いや、そうじゃないけど。……おお、おおおー! 見たことないぞ、あんな立派な壁とか! 寝てる間に色々と変わり過ぎだろ! 凄いな、すごーい!!」
「……」
「お前も子供なら子供らしくはしゃいで見せろって! せーの、すごーい!」
「スゴーイ」
─────
「とまあ、そんな訳でこの街に来た訳だけども」
「はい」
異様な人の波から逃げようと、適当な細い路地に飛び込んだ巧牙と空。
人々の会話の断片から得られた情報を、一先ず共有する事にする。
「ボウケンシャになるには、ぎるど? とか言う人に挨拶しなきゃいけないらしいんだな。で、色々と登録する感じの。名が売れれば街の外でも身分証みたいに出来るらしいってよ。本当かね?」
「さあ? 事の始まりは、火災で戸籍集が全て消失した際の、苦肉の策から始まったと私は聞いたけど……本当なんですかね」
「さあ?」
ふざけて首を傾げ合う二人。
数日の仲とはいえ、彼らは最初の謎の美しい空間での奇妙な邂逅から始まり、霧惑いの森と呼ばれているらしい森を普通に抜け、関門での事態を切り抜けている。
つまり。それなりにいい感じの友情が芽生えているのだ。
巧牙の側には、「空は子供だからな、大人になった俺が引っ張ってやらないと」という年上故の思考も混ざっている。しっかりと引っ張れているかというと激しく疑問ではあるが……。
似たように空の側にも、「コーガは見てて色々と危なっかしいから、私がちゃんと見ていないとな」という考えがあるなんて事は……。
巧牙にとって、知らぬが仏なのだろう。
「取り敢えずはギルドさんに挨拶に行けばいいんだよな」
「恐らくは。問題はそれがどこかという……」
人に聞こうにも、今日は祭りでもあるのかという賑わいよう。
声を掛けても平気そうな、いかにも暇な顔をしている存在は見当たらない。
「関所の所で冒険者について話してる人がいればな、あの緑のじいさんに場所とか聞いたんだけどな」
「今から戻るのは不可能」
「だよなあ……」
もう一度あの流れに飛び込む勇気が持てない。目的地もわからないとなれば尚更だ。
「ギルドに行きたいんですー?」
ほわん、しゃらん。
唐突に響いたその声を、擬音で形容するならそんな感じだろうか。
「旅人さん? 身元不明? 歓迎ですよー、ギルドはいつだって新しい人を待ってます!」
「……」
ニコニコと無邪気な顔で、ほわんしゃらんな女性……いや、少女だろうか? どちらとも取れない彼女が、にこやかに二人に手を差し伸べた。
一日置きに投稿して、平気そうなら毎日投稿に移行したい今日この頃。